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第2章――1 『 輪舞祭/吸血鬼と変わらぬ日常 』
第72話 思い出の場所で
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「おー。ほんとに朝っぱらから鍛錬してんのか」
「あれ? アイゼンさん?」
明朝。朝霧と清涼な空気が独特の静謐さを醸す広場で木剣を振るっていると、この時間帯で姿を見るのは珍しい男性と遭遇した。
「珍しいですね。こんな朝早くから出歩いてるの」
「まぁ、ちょっとな」
「?」
後頭部をがしがしと乱雑に掻きながら近づいて来るアイゼンさん。ふと彼の手元を見ると、僕と同じ木剣を構えていて。
「カルラが前に話してたのを思い出してな。お前が今でもここに剣を振りに来てるって」
「あー」
どこか決まずげに話すアイゼンさんに、僕は手に握る木剣に視線を落として答えた。
「べつに、もうここで剣を振るう理由はないんですけどね。リリスに修業つけてもらってるし。けど……」
剣を振るう場所なんて、すこしの空場があればどこでだってできる。マルダンさんにお願いすればお店の裏も快く承諾してくれるはず。
それでも、僕が未だにこの広場で剣を振り続ける理由は、
「どうしても、ここで剣を振りたいって思うんです。ここは、ベルクトさんと僕が剣を交わした思い出の場所だから」
シエルレントを殺人鬼として脅かし続けた魔人の正体。それこれそがベルクトさんだった。彼は故郷を滅ぼされた復讐の果てに魔剣を手に取り、そして最期は魔剣に精神を乗っ取られた。
彼と過ごした時間は短く、交わした言葉も少ない。彼ともっとたくさんのことを話して、色々なことを教えて欲しかった。 もっと、たくさん剣を交えたかった。
彼が魔剣を手にしなければそんな未来があったのかもしれない。けれど、そうなれば彼はこの地に訪れていなかったかもしれないと思うと皮肉に感じて。
結局、それも含めて『運命』ってやつなんだろうかと、そんなことを考えていた僕の背中を、不意に吹きすさんだ風が肯定するように押した気がした。
まさか、と僕は思わずくすっと笑みをこぼして、
「ところで、アイゼンさんはなんで広場に?」
「あー、その……なんだ……つまりあれだよ。お前が一人で寂しくしてんじゃねえかと思ってよ。だから、そのぉ……」
「……もしかして、稽古に付き合ってくれるんですか?」
ごにょごにょと、なんだか照れくさそうなアイゼンさんの態度に、僕がそう言うと彼は顔を背けたまま短くこくり、と頷いた。
そんなアイゼンさんに僕は思わず「ぷっ」と拭いてしまって。
「毎朝は無理だから、たまに、朝早く起きたら付き合ってやる」
「――ありがとうございます。とっても嬉しいです」
「……おう」
人は出会いと別れを繰り返す。出会いは嬉しく、別れは悲しい。けれど思い出は胸に刻まれたまま、また新しい思い出を創っていく。
きっと僕にとって、この町の人たちがその象徴になるのだろうと、眼前で頬を朱に染める青年を見てそう確信した。
「……そういえばふと疑問なんだけど、センリは双剣に替えたんだよな? でも今持ってるのは片手剣なのはなんで?」
「あぁ。一人で練習する時はこっち使ってるんです。リリスと修業する時は双剣のもの使ってますけど」
「……お前ってなんかすげーわ」
「? よく分かんないけど、ありがとうございます?」
感心したような目を向けて来るアイゼンさんに、僕は小首を傾げるのだった。
「あれ? アイゼンさん?」
明朝。朝霧と清涼な空気が独特の静謐さを醸す広場で木剣を振るっていると、この時間帯で姿を見るのは珍しい男性と遭遇した。
「珍しいですね。こんな朝早くから出歩いてるの」
「まぁ、ちょっとな」
「?」
後頭部をがしがしと乱雑に掻きながら近づいて来るアイゼンさん。ふと彼の手元を見ると、僕と同じ木剣を構えていて。
「カルラが前に話してたのを思い出してな。お前が今でもここに剣を振りに来てるって」
「あー」
どこか決まずげに話すアイゼンさんに、僕は手に握る木剣に視線を落として答えた。
「べつに、もうここで剣を振るう理由はないんですけどね。リリスに修業つけてもらってるし。けど……」
剣を振るう場所なんて、すこしの空場があればどこでだってできる。マルダンさんにお願いすればお店の裏も快く承諾してくれるはず。
それでも、僕が未だにこの広場で剣を振り続ける理由は、
「どうしても、ここで剣を振りたいって思うんです。ここは、ベルクトさんと僕が剣を交わした思い出の場所だから」
シエルレントを殺人鬼として脅かし続けた魔人の正体。それこれそがベルクトさんだった。彼は故郷を滅ぼされた復讐の果てに魔剣を手に取り、そして最期は魔剣に精神を乗っ取られた。
彼と過ごした時間は短く、交わした言葉も少ない。彼ともっとたくさんのことを話して、色々なことを教えて欲しかった。 もっと、たくさん剣を交えたかった。
彼が魔剣を手にしなければそんな未来があったのかもしれない。けれど、そうなれば彼はこの地に訪れていなかったかもしれないと思うと皮肉に感じて。
結局、それも含めて『運命』ってやつなんだろうかと、そんなことを考えていた僕の背中を、不意に吹きすさんだ風が肯定するように押した気がした。
まさか、と僕は思わずくすっと笑みをこぼして、
「ところで、アイゼンさんはなんで広場に?」
「あー、その……なんだ……つまりあれだよ。お前が一人で寂しくしてんじゃねえかと思ってよ。だから、そのぉ……」
「……もしかして、稽古に付き合ってくれるんですか?」
ごにょごにょと、なんだか照れくさそうなアイゼンさんの態度に、僕がそう言うと彼は顔を背けたまま短くこくり、と頷いた。
そんなアイゼンさんに僕は思わず「ぷっ」と拭いてしまって。
「毎朝は無理だから、たまに、朝早く起きたら付き合ってやる」
「――ありがとうございます。とっても嬉しいです」
「……おう」
人は出会いと別れを繰り返す。出会いは嬉しく、別れは悲しい。けれど思い出は胸に刻まれたまま、また新しい思い出を創っていく。
きっと僕にとって、この町の人たちがその象徴になるのだろうと、眼前で頬を朱に染める青年を見てそう確信した。
「……そういえばふと疑問なんだけど、センリは双剣に替えたんだよな? でも今持ってるのは片手剣なのはなんで?」
「あぁ。一人で練習する時はこっち使ってるんです。リリスと修業する時は双剣のもの使ってますけど」
「……お前ってなんかすげーわ」
「? よく分かんないけど、ありがとうございます?」
感心したような目を向けて来るアイゼンさんに、僕は小首を傾げるのだった。
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