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幽霊女と駄菓子屋ばあちゃん
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しばらくして、騒がしかった倉庫の中が静かになると中からユウノが出てきた。お礼参りは終わったようだ。
「もういいのか?」
俺の言葉にユウノは頷いて応える。そして、「ねぇ、おにいさん」と俺を呼んだ。
「なんだ?」
「ばあちゃんに、このこと伝えに行きたい……」
「……じゃあ、駄菓子屋に行くか」
「うん……」
俺はユウノを連れて駄菓子屋に向かった。
駄菓子屋は前に来た時と同じで、店のドアが開いたままにして開店している。駄菓子屋の婆さんも前と変わらずに、同じ場所で腰を下ろしていた。
俺とユウノが来たことに嬉しそうな顔をした婆さんだが、ユウノの顔を見て何かを察したのか「ここにお座り」と言って隣をポンポンと軽く叩く。言われた通りに、俺とユウノは婆さんと並ぶように座った。ちなみに俺と婆さんがユウノを挟むようにしてだ。
「さぁて聞かせておくれ。一体何があったんだい?」
婆さんがユウノを見て聞く。
ユウノはゆっくりと、マーブルを殺したヤンキー共のことを、自分がそのヤンキー共にしたことを話し始めた。
婆さんは何も言わずに、黙ってユウノの話を聞く。
ユウノは事のあらましを話し終えると、下を向いて婆さんの言葉を待つ。その姿はまるで、悪いことをした子供が怒られるのを待つような感じだ。ユウノ自身、自らが行った行為があまり褒められるものではないということを知っているからだろう。
婆さんが「ユウノちゃん」と呼びかけると、ビクリと肩を震わせて反応する。そして、叱られると思ってか膝の上に置いているユウノの手に力がこもる。
しかし、婆さんの次の言葉はユウノの予想に反したものだった。
「ありがとう」
「……怒らない、の?」
「なにを怒るんだい? ユウノちゃんは私とマーブルのためにしてくれたことなんだろう。だったら、私が怒ることはなにもないさ。マーブルもきっと感謝してると思うよ」
「そうかな?」
「そうだよ。現に私もユウノちゃんのさっきの話しで少し心が晴れたからねぇ。だから本当にありがとう、ユウノちゃん」
「……うん!」
婆さんの感謝の言葉に、嬉しいそうな笑顔を見せる。そして、婆さんは次に俺を見て「あんたもありがとうね」と言ってきた。
その感謝の言葉に「……俺は特に何もしてない」と素っ気なく返すと、「そんなことないよ!」とユウノが声を出す。
「おにいさんがいなかったら、マーブルに酷いことをしたあいつらを見つけられなかったし、仇も取れなかったもん。私がここでばあちゃんとお話しできてるのもおにいさんのお陰だし、来週に三影おねえさんと遊園地に行けるようになったのもお陰だもん。――私からもありがとうね、おにいさん!」
「……ああ」
俺はそれだけ言って、その言葉を受け入れることにする。ここで変に突っぱねても益のないこと思ったから。
その後、婆さんはユウノの遊園地に行くと言う話と一緒に行くという相手は誰なのかという話に反応して、盛り上がっていた。
俺は隣で黙ってそれを聞いていると、話が終わった後に婆さんが急に顔を暗くする。その様子に気付いて怪訝な顔を見せるユウノは、「どうしたの? ばあちゃん」と聞く。
「……いやね、マーブルが不良達にやられたことについて、少し疑問を持ったことがあってねぇ」
「疑問? それってなぁに?」
「……マーブルは、どうして不良達から逃げなかったんだろうと思ってね。あの子は頭がいいし、そんな危なそうな子達が来たら、自分から離れていくことぐらいしそうなんだけど」
「……ごめんなさい。私あいつらに仕返したいと思うばかりで、そういうこと全然聞かないで終われせちゃった」
「ユウノちゃんが謝ることないよ。それにユウノちゃんは幽霊なんだから、聞こうと思っても聞けないだろう。ユウノちゃんはユウノちゃんにできることをしてくれたんだから、気にすることないよ」
「……うん。でも、ばあちゃんの言葉で私も気になってきた。どうしてマーブルは逃げなかったんだろう……。どうしてだと思う? おにいさん」
「……単に逃げられなかったからじゃないのか? 囲まれて逃げ道を防がれたとか」
「マーブルだったら囲まれる前に逃げるぐらいできるよ」
「でもマーブルって年老いた犬だったんだろう?」
「そうだけど、マーブルならあのヤンキー達が公園に入って来た時点で逃げると思う。マーブルって人を見る目があるから、そういう危ない雰囲気を持った人をすぐ見抜くんだよね。前にもいたずら好きな子供が近づいて来たときにすぐ逃げ出したし」
「……お前は逃げられたことないのか?」
「え、うん、ないけど……」
「だったら、マーブルの人を見る目がありっていうのは気の所為じゃないか?」
「なんで?」
「お前を見て逃げないから」
「………………それって、私がいたずらっ子ってこと!?」
「そうだろ」
「そうでした!」
てへ、と言った感じに笑うユウノ。俺はその頭に軽いゲンコツを入れると、「あいたっ」という声が聞こえてくる。
――茶番だな。
「まぁ、マーブルに人を見る目があったとして。だったら、何か理由があって逃げられなかったんじゃないのか」
「その理由っていうのは?」
「さぁな」
流石にそこまで分からん。分かるのは当事者のヤンキー共ぐらいだろう。
マーブルという頭の良い(らしい)犬が何故逃げなかったのか。ユウノと婆さんは、そのことについて真剣に悩んでいるようだが、俺にとってはどうでもいい。
さっさと諦めないかな、そう俺が思っていると駄菓子屋の中に誰かが入ってきた。
「もういいのか?」
俺の言葉にユウノは頷いて応える。そして、「ねぇ、おにいさん」と俺を呼んだ。
「なんだ?」
「ばあちゃんに、このこと伝えに行きたい……」
「……じゃあ、駄菓子屋に行くか」
「うん……」
俺はユウノを連れて駄菓子屋に向かった。
駄菓子屋は前に来た時と同じで、店のドアが開いたままにして開店している。駄菓子屋の婆さんも前と変わらずに、同じ場所で腰を下ろしていた。
俺とユウノが来たことに嬉しそうな顔をした婆さんだが、ユウノの顔を見て何かを察したのか「ここにお座り」と言って隣をポンポンと軽く叩く。言われた通りに、俺とユウノは婆さんと並ぶように座った。ちなみに俺と婆さんがユウノを挟むようにしてだ。
「さぁて聞かせておくれ。一体何があったんだい?」
婆さんがユウノを見て聞く。
ユウノはゆっくりと、マーブルを殺したヤンキー共のことを、自分がそのヤンキー共にしたことを話し始めた。
婆さんは何も言わずに、黙ってユウノの話を聞く。
ユウノは事のあらましを話し終えると、下を向いて婆さんの言葉を待つ。その姿はまるで、悪いことをした子供が怒られるのを待つような感じだ。ユウノ自身、自らが行った行為があまり褒められるものではないということを知っているからだろう。
婆さんが「ユウノちゃん」と呼びかけると、ビクリと肩を震わせて反応する。そして、叱られると思ってか膝の上に置いているユウノの手に力がこもる。
しかし、婆さんの次の言葉はユウノの予想に反したものだった。
「ありがとう」
「……怒らない、の?」
「なにを怒るんだい? ユウノちゃんは私とマーブルのためにしてくれたことなんだろう。だったら、私が怒ることはなにもないさ。マーブルもきっと感謝してると思うよ」
「そうかな?」
「そうだよ。現に私もユウノちゃんのさっきの話しで少し心が晴れたからねぇ。だから本当にありがとう、ユウノちゃん」
「……うん!」
婆さんの感謝の言葉に、嬉しいそうな笑顔を見せる。そして、婆さんは次に俺を見て「あんたもありがとうね」と言ってきた。
その感謝の言葉に「……俺は特に何もしてない」と素っ気なく返すと、「そんなことないよ!」とユウノが声を出す。
「おにいさんがいなかったら、マーブルに酷いことをしたあいつらを見つけられなかったし、仇も取れなかったもん。私がここでばあちゃんとお話しできてるのもおにいさんのお陰だし、来週に三影おねえさんと遊園地に行けるようになったのもお陰だもん。――私からもありがとうね、おにいさん!」
「……ああ」
俺はそれだけ言って、その言葉を受け入れることにする。ここで変に突っぱねても益のないこと思ったから。
その後、婆さんはユウノの遊園地に行くと言う話と一緒に行くという相手は誰なのかという話に反応して、盛り上がっていた。
俺は隣で黙ってそれを聞いていると、話が終わった後に婆さんが急に顔を暗くする。その様子に気付いて怪訝な顔を見せるユウノは、「どうしたの? ばあちゃん」と聞く。
「……いやね、マーブルが不良達にやられたことについて、少し疑問を持ったことがあってねぇ」
「疑問? それってなぁに?」
「……マーブルは、どうして不良達から逃げなかったんだろうと思ってね。あの子は頭がいいし、そんな危なそうな子達が来たら、自分から離れていくことぐらいしそうなんだけど」
「……ごめんなさい。私あいつらに仕返したいと思うばかりで、そういうこと全然聞かないで終われせちゃった」
「ユウノちゃんが謝ることないよ。それにユウノちゃんは幽霊なんだから、聞こうと思っても聞けないだろう。ユウノちゃんはユウノちゃんにできることをしてくれたんだから、気にすることないよ」
「……うん。でも、ばあちゃんの言葉で私も気になってきた。どうしてマーブルは逃げなかったんだろう……。どうしてだと思う? おにいさん」
「……単に逃げられなかったからじゃないのか? 囲まれて逃げ道を防がれたとか」
「マーブルだったら囲まれる前に逃げるぐらいできるよ」
「でもマーブルって年老いた犬だったんだろう?」
「そうだけど、マーブルならあのヤンキー達が公園に入って来た時点で逃げると思う。マーブルって人を見る目があるから、そういう危ない雰囲気を持った人をすぐ見抜くんだよね。前にもいたずら好きな子供が近づいて来たときにすぐ逃げ出したし」
「……お前は逃げられたことないのか?」
「え、うん、ないけど……」
「だったら、マーブルの人を見る目がありっていうのは気の所為じゃないか?」
「なんで?」
「お前を見て逃げないから」
「………………それって、私がいたずらっ子ってこと!?」
「そうだろ」
「そうでした!」
てへ、と言った感じに笑うユウノ。俺はその頭に軽いゲンコツを入れると、「あいたっ」という声が聞こえてくる。
――茶番だな。
「まぁ、マーブルに人を見る目があったとして。だったら、何か理由があって逃げられなかったんじゃないのか」
「その理由っていうのは?」
「さぁな」
流石にそこまで分からん。分かるのは当事者のヤンキー共ぐらいだろう。
マーブルという頭の良い(らしい)犬が何故逃げなかったのか。ユウノと婆さんは、そのことについて真剣に悩んでいるようだが、俺にとってはどうでもいい。
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