××男と異常女共

シイタ

文字の大きさ
88 / 111
幽霊女と駄菓子屋ばあちゃん

5-17

しおりを挟む
 しばらくして、騒がしかった倉庫の中が静かになると中からユウノが出てきた。お礼参りは終わったようだ。
 
「もういいのか?」

 俺の言葉にユウノは頷いて応える。そして、「ねぇ、おにいさん」と俺を呼んだ。

「なんだ?」

「ばあちゃんに、このこと伝えに行きたい……」
 
「……じゃあ、駄菓子屋に行くか」

「うん……」

 俺はユウノを連れて駄菓子屋に向かった。
 駄菓子屋は前に来た時と同じで、店のドアが開いたままにして開店している。駄菓子屋の婆さんも前と変わらずに、同じ場所で腰を下ろしていた。
 俺とユウノが来たことに嬉しそうな顔をした婆さんだが、ユウノの顔を見て何かを察したのか「ここにお座り」と言って隣をポンポンと軽く叩く。言われた通りに、俺とユウノは婆さんと並ぶように座った。ちなみに俺と婆さんがユウノを挟むようにしてだ。

「さぁて聞かせておくれ。一体何があったんだい?」

 婆さんがユウノを見て聞く。
 ユウノはゆっくりと、マーブルを殺したヤンキー共のことを、自分がそのヤンキー共にしたことを話し始めた。
 婆さんは何も言わずに、黙ってユウノの話を聞く。
 ユウノは事のあらましを話し終えると、下を向いて婆さんの言葉を待つ。その姿はまるで、悪いことをした子供が怒られるのを待つような感じだ。ユウノ自身、自らが行った行為があまり褒められるものではないということを知っているからだろう。
 婆さんが「ユウノちゃん」と呼びかけると、ビクリと肩を震わせて反応する。そして、叱られると思ってか膝の上に置いているユウノの手に力がこもる。
 しかし、婆さんの次の言葉はユウノの予想に反したものだった。

「ありがとう」

「……怒らない、の?」

「なにを怒るんだい? ユウノちゃんは私とマーブルのためにしてくれたことなんだろう。だったら、私が怒ることはなにもないさ。マーブルもきっと感謝してると思うよ」

「そうかな?」

「そうだよ。現に私もユウノちゃんのさっきの話しで少し心が晴れたからねぇ。だから本当にありがとう、ユウノちゃん」

「……うん!」

 婆さんの感謝の言葉に、嬉しいそうな笑顔を見せる。そして、婆さんは次に俺を見て「あんたもありがとうね」と言ってきた。
 その感謝の言葉に「……俺は特に何もしてない」と素っ気なく返すと、「そんなことないよ!」とユウノが声を出す。

「おにいさんがいなかったら、マーブルに酷いことをしたあいつらを見つけられなかったし、仇も取れなかったもん。私がここでばあちゃんとお話しできてるのもおにいさんのお陰だし、来週に三影おねえさんと遊園地に行けるようになったのもお陰だもん。――私からもありがとうね、おにいさん!」

「……ああ」

 俺はそれだけ言って、その言葉を受け入れることにする。ここで変に突っぱねても益のないこと思ったから。
 その後、婆さんはユウノの遊園地に行くと言う話と一緒に行くという相手は誰なのかという話に反応して、盛り上がっていた。
 俺は隣で黙ってそれを聞いていると、話が終わった後に婆さんが急に顔を暗くする。その様子に気付いて怪訝な顔を見せるユウノは、「どうしたの? ばあちゃん」と聞く。

「……いやね、マーブルが不良達にやられたことについて、少し疑問を持ったことがあってねぇ」

「疑問? それってなぁに?」

「……マーブルは、どうして不良達から逃げなかったんだろうと思ってね。あの子は頭がいいし、そんな危なそうな子達が来たら、自分から離れていくことぐらいしそうなんだけど」

「……ごめんなさい。私あいつらに仕返したいと思うばかりで、そういうこと全然聞かないで終われせちゃった」

「ユウノちゃんが謝ることないよ。それにユウノちゃんは幽霊なんだから、聞こうと思っても聞けないだろう。ユウノちゃんはユウノちゃんにできることをしてくれたんだから、気にすることないよ」

「……うん。でも、ばあちゃんの言葉で私も気になってきた。どうしてマーブルは逃げなかったんだろう……。どうしてだと思う? おにいさん」

「……単に逃げられなかったからじゃないのか? 囲まれて逃げ道を防がれたとか」

「マーブルだったら囲まれる前に逃げるぐらいできるよ」

「でもマーブルって年老いた犬だったんだろう?」

「そうだけど、マーブルならあのヤンキー達が公園に入って来た時点で逃げると思う。マーブルって人を見る目があるから、そういう危ない雰囲気を持った人をすぐ見抜くんだよね。前にもいたずら好きな子供が近づいて来たときにすぐ逃げ出したし」

「……お前は逃げられたことないのか?」

「え、うん、ないけど……」

「だったら、マーブルの人を見る目がありっていうのは気の所為じゃないか?」

「なんで?」

「お前を見て逃げないから」

「………………それって、私がいたずらっ子ってこと!?」

「そうだろ」

「そうでした!」

 てへ、と言った感じに笑うユウノ。俺はその頭に軽いゲンコツを入れると、「あいたっ」という声が聞こえてくる。

 ――茶番だな。

「まぁ、マーブルに人を見る目があったとして。だったら、何か理由があって逃げられなかったんじゃないのか」

「その理由っていうのは?」

「さぁな」

 流石にそこまで分からん。分かるのは当事者のヤンキー共ぐらいだろう。
 マーブルという頭の良い(らしい)犬が何故逃げなかったのか。ユウノと婆さんは、そのことについて真剣に悩んでいるようだが、俺にとってはどうでもいい。
 さっさと諦めないかな、そう俺が思っていると駄菓子屋の中に誰かが入ってきた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...