××男と異常女共

シイタ

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××男の一日

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 学校なんて退屈な場所だ。
 授業を聞いてノートに写し、知り合いから友達と言える奴らと、くだらない話をして時間を潰す。たったそれだけをするための場所。これが俺の学校という名の場所の認識だ。
 そんな時間潰しのための学校もすでに放課後、俺は図書室にある隅の机で、黒髪おさげの女と向かい合って座っていた。
 
「先輩ってやりたいこととかないんですか?」

 向かい側に座る、黒髪おさげの女が問いてくる。

「ない」

「趣味、とかは?」

「ないな」

「じゃあ先輩は何を生きがいにしてるんですか?」

「何かを生きがいにして?生きていかないといけないのか?」

「生きがいがあれば先輩の死人のような目も、辛うじで死ぬ寸前の目になるかもしれませんよ」

「俺は怪我もしていなければ、病も負っていない健康体だ。お前と違って周りから認識されて、いないもの扱いされてないからな」

「皮肉はやめて下さい」

「言い出しっぺはお前だろ」

「先輩は後輩に優しくするものだと聞きました」

「十分優しいだろ。お前みたいな異常な女と、こうやって付き合ってやってるんだからな」

「体質は仕方ないじゃないですか」

「体質だけじゃないけどな」

「あれれ、何やってんのこんなところで?」

 会話に没頭していると、ふとそこに割り込むように横から声がする。
 声がした方を振り向けば、俺と同じクラスである黒髪ロングの若林倫太郎が、こちらに歩いてきていた。

「図書室でやることと言ったら、読書と睡眠しかないだろ」

 俺は自分の手にある本を、ぶらぶらと揺らして見せてやる。

「倫太郎こそ何やってんだよ。図書室とは縁の遠い奴だろ、お前」

「いやー、昨日見た漫画で文学少女もいいなって思って、ちょっと探しに」

「お前巨乳好きじゃなかったけ?」

「もちろん文学少女だよ」

 恥ずかしげもなく言い切る倫太郎。
 その右手のグッドサインと、歯をキラリとさせるのをやめてほしい。

「それで、見つかったのか?」

「残念賞。見つかったのは図書室の隅で寂しく本を読んでる級友だけだった」

 残念で仕方がないという顔で?俺のことを見てくる倫太郎。

「俺は福引きの白玉かよ」

「ポケットティッシュの方が、需要がありそうだ」

「皮肉ですね」

「ん? なんか言った?」

「……なんも」

 倫太郎が一人不思議がっている中、一人はくすくすと遠慮がちに笑っている。
 倫太郎はすぐそこで笑っている黒髪おさげの女、折紙おりがみ三影みかげがいることに気付いていない。
 そして、三影は気付かれていないことに動じていない。気付かれないことが?三影にとって普通で当たり前だから。

 影が薄い、存在感がない、彼岸人。
 そんなこいつを俺はこう呼ぶ、『陰女』と。
 
 逆に気付かれたならば三影は激しく動じるだろう。
 ――あの時の様に。

「んー、まあいいや。んじゃ、文学(巨乳)少女は見つかんなかったし、俺は新たな美少女を探しに行くけど、一緒にどう?」

「興味ねーよ。女のケツを追いかけたいなら一人でやってくれ」

「いつもいつもつれないなー。じゃあまたねー」

 倫太郎が手を振って去っていくのを見送った後、俺は図書室に設置されている時計を見て、時間を確認した。

「そろそろ帰るわ」

「……そうですか。今日は話のがありませんでしたが、また用意しときますから楽しみにしてて下さいね、先輩」

 まるで、次会うときにする話を心待ちにするかのように、嬉しそうに言う三影。
 しかし、三影が楽しみにしていることがそんなことではないと、俺は知っている。

「……俺にはなよ」

「もちろん。先輩には嫌われたくないので」

 そう言って別れる間際に、俺は三影の首から下の部分をチラ見した。

 ……特賞だな。
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