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ストーカー女のストーカー
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屋上という場所は学校によっては事故、非行、自殺防止という観点から立ち入り禁止になっていて、生徒が立ち入れられないようになっている。
俺の通う学校も屋上に繋がるドアの鍵がしまっていて、普通なら入れないようになっているのだが、俺はそのドアの鍵を持っていたりした。
なんで一生徒である俺が屋上のドアの鍵を持っているかというと、それは隣人の『ゴミ女』御五智姶良に関係がある。
俺が姶良を学校に連れてくるように先生に頼まれ、それを了承した時、「他の生徒や先生にバレないよう気をつけるように」と注意されて、渡されたのだ。
その時は屋上に一人で行くことなんてあるのだろうかと思ったが、意外にも足を運ぶ機会は多かった。授業や掃除をサボったり、体育祭や文化祭などのイベントの時に暇を潰したり、伸び伸びと昼寝をしに来たり、そして――
「呼ばれて飛び出てパンパカパーン。学校一の美少女こと空乃ひとみちゃん、参上でーす」
――人目を忍んで密談、密会を行なったり。
先生には他の生徒や先生にバレないようにと注意されたが、別にバラしてはいけないとは言われてないし、俺が他の生徒に屋上に行けることを教えても、教えたことを先生にバレなければいいだろう。
それに俺はだれかれ構わずにこのことを教えたりしていなければ、何の理由もなしにここに人を呼び出したり連れて来たりはしない。
人を呼び出すときも、連れて来るときも、ちゃんと口の硬い奴を選べば、しっかりとした理由も存在する。
特にひとみと学校で会う場合、屋上という場所は実に重宝する。
先ほどひとみは自分のことを学校一の美少女とか言っていたが、別に自称でもギャグでもなんでもない。ちなみに真実でもない。
ひとみは学校の中で一番の美少女なのではないかと、大勢の生徒から言われているだけだ。他にも候補のような奴らはいるらしいが、それはどうでもいい。
ひとみがそれだけ目立つ所為で、学校内ではこの人目のつかない屋上でしか、俺たちは会話をしない。
挨拶や必要な事柄ならば最低限の会話はするが、二人で長時間話したりはしない。
しつこいストーカー気質のひとみが、なぜ学校ではあまり近寄ってこないのか、前にそれとなく聞いたのだが、「えっ、もしかしてキリヤくん、私に構ってもらえなくて寂しいの? ……きゃー、ツンデレきたー」と意味不明なことを言ってきたのでマジで後悔した。
その後に、近寄ってこない理由は教えてくれたが、「だってキリヤくんに嫌われたくないんだもん」とか戯れ言を吠えていた。
心配するなひとみ。俺はとっくに十分、お前のことを嫌っている。
まあ、その戯れ言のお陰で、俺は学校ではこいつに付き纏われずにすんでいる。なので、俺とひとみの異常な関係は学校内で誰にも知られていないし、気付かれていない。
このまま、学校の奴らに気付かれないためにも学校でひとみに会う時は、俺はこの場所を使うしかないのだ。
閑話休題。
俺は目の前の自称学校一の美少女に、ポケットから取り出したぐしゃぐしゃの紙を投げつける。
それをひとみは難なくキャッチし、「何これ?」と言った感じに紙を広げ始めた。
その中身を見たひとみは一瞬だけ目を細める。
「……」
そして、おもむろにそれを破き始めた。
最初は半分に、それをまた半分に、そしてまた半分に、そうやって細かくなった紙切れをひとみは風に流してしまった。
風に流され飛んでいく紙切れ。
ちゃんとゴミ箱に捨てろよ。
流されていく紙切れを見ながら、俺は姶良がこれを見たらどう思うのかと、そんな的外れなことを考えていた。
「ごめんなさい」
手を合わせて頭を下げるひとみ。
この謝罪がいきなり渡した紙を破り捨てたことに対してでないことは、流石にわかる。
やはり今回の件はひとみが一枚噛んでいるのだと、俺は謝る姿を見て確信した。
もしひとみがこの件で何も関わっていないのであれば、こいつは頭を下げて謝るなどはしないだろう。いつものひとみなら、もっと茶化した感じに謝ってくるはずだ、頭も下げずに。
ひとみは頭を上げた後に、昨日のことについての説明を始めた。
「…………要約すると鬱陶しいストーカーをどうにかしたいから、俺に彼氏役みたいなことを勝手にをさせてたってわけだな」
「うん、そう。ほら、最近言う『うそカレ』みたいな」
知るか。
何故か嬉しそうに返事をするひとみ。
悪気があるんなら、そこはしおらしく返事するところだと思うのだが。
さっきの誠意のこもった謝罪はどこいった。
それはいいとして、ひとみは自分に彼氏がいると分かれば、そのストーカーも諦めてくれるだろうと踏んで、俺に目的も話さず一日付き合って欲しいと頼み込んできたというわけだ。
「とばっちり、ふざけろ。……てことは、あのカフェ店にそのストーカーがいたってことだよな。俺は彼氏じゃないって否定したはずだが」
「いたよー。私たちから四つぐらい先のテーブルに座ってたから、聞こえなかったんじゃないのかな。というか、キリヤくんも気付いてたよね。あれだけ露骨に視線送ってきてたんだし」
「……」
確かに気付いていた。
ひとみと会話している時に誰からの視線かまでは分かっていなかったが、誰かに見られていると確かに感じていた。だが、あの時は誰が視線を送ってきているのか、気付かないようにして、見ないようにしていた。
気付かず、見向きもせず、波風立てない、どうせ俺には関係ない。
そう決め込んでいたのだが、カフェ店を出ようとした時に、俺は最後にいなくなったユウノを探し店内を見回し、見つけてしまった。俺のことを睨みつける男を。目は合わせないようにしたが、目の端ではっきりと捉えていた。
「あのメガネをかけた男か」
「そうそう、あの冴えないメガネ」
「……で」
「?」
「お前の所為でこんなことになったんだろ、どうしてくれるんだ。ったく」
俺が恨むような目で見て、ひとみに文句を言う。
「それは本当にごめん」
「誤ってすまんせんじゃねぇーぞ」
「だいじょーぶ、ちゃんとけじめはつけるから」
ひとみが楽観的な声音でそう言い終わると、授業終わりを知らせる終鈴の音が聞こえてきた。
「授業サボっちゃったね。……ねぇねぇ、このまま全部サボっちゃって、今日一日屋上で過ごしちゃおっか」
「止めんないけど、俺は教室に戻るぞ」
「えぇー、もちろん一緒にだよ」
「無・理」
ひとみは俺の答えが分かっていたように、「だよねぇー」と言って屋上のドアに歩いて行く。
そしてドアの前で立ち止まり、「キリヤくんは今回の件、もう気にしなくていいからね」とだけ言い残して、ひとみは屋上を出て行った。
俺の通う学校も屋上に繋がるドアの鍵がしまっていて、普通なら入れないようになっているのだが、俺はそのドアの鍵を持っていたりした。
なんで一生徒である俺が屋上のドアの鍵を持っているかというと、それは隣人の『ゴミ女』御五智姶良に関係がある。
俺が姶良を学校に連れてくるように先生に頼まれ、それを了承した時、「他の生徒や先生にバレないよう気をつけるように」と注意されて、渡されたのだ。
その時は屋上に一人で行くことなんてあるのだろうかと思ったが、意外にも足を運ぶ機会は多かった。授業や掃除をサボったり、体育祭や文化祭などのイベントの時に暇を潰したり、伸び伸びと昼寝をしに来たり、そして――
「呼ばれて飛び出てパンパカパーン。学校一の美少女こと空乃ひとみちゃん、参上でーす」
――人目を忍んで密談、密会を行なったり。
先生には他の生徒や先生にバレないようにと注意されたが、別にバラしてはいけないとは言われてないし、俺が他の生徒に屋上に行けることを教えても、教えたことを先生にバレなければいいだろう。
それに俺はだれかれ構わずにこのことを教えたりしていなければ、何の理由もなしにここに人を呼び出したり連れて来たりはしない。
人を呼び出すときも、連れて来るときも、ちゃんと口の硬い奴を選べば、しっかりとした理由も存在する。
特にひとみと学校で会う場合、屋上という場所は実に重宝する。
先ほどひとみは自分のことを学校一の美少女とか言っていたが、別に自称でもギャグでもなんでもない。ちなみに真実でもない。
ひとみは学校の中で一番の美少女なのではないかと、大勢の生徒から言われているだけだ。他にも候補のような奴らはいるらしいが、それはどうでもいい。
ひとみがそれだけ目立つ所為で、学校内ではこの人目のつかない屋上でしか、俺たちは会話をしない。
挨拶や必要な事柄ならば最低限の会話はするが、二人で長時間話したりはしない。
しつこいストーカー気質のひとみが、なぜ学校ではあまり近寄ってこないのか、前にそれとなく聞いたのだが、「えっ、もしかしてキリヤくん、私に構ってもらえなくて寂しいの? ……きゃー、ツンデレきたー」と意味不明なことを言ってきたのでマジで後悔した。
その後に、近寄ってこない理由は教えてくれたが、「だってキリヤくんに嫌われたくないんだもん」とか戯れ言を吠えていた。
心配するなひとみ。俺はとっくに十分、お前のことを嫌っている。
まあ、その戯れ言のお陰で、俺は学校ではこいつに付き纏われずにすんでいる。なので、俺とひとみの異常な関係は学校内で誰にも知られていないし、気付かれていない。
このまま、学校の奴らに気付かれないためにも学校でひとみに会う時は、俺はこの場所を使うしかないのだ。
閑話休題。
俺は目の前の自称学校一の美少女に、ポケットから取り出したぐしゃぐしゃの紙を投げつける。
それをひとみは難なくキャッチし、「何これ?」と言った感じに紙を広げ始めた。
その中身を見たひとみは一瞬だけ目を細める。
「……」
そして、おもむろにそれを破き始めた。
最初は半分に、それをまた半分に、そしてまた半分に、そうやって細かくなった紙切れをひとみは風に流してしまった。
風に流され飛んでいく紙切れ。
ちゃんとゴミ箱に捨てろよ。
流されていく紙切れを見ながら、俺は姶良がこれを見たらどう思うのかと、そんな的外れなことを考えていた。
「ごめんなさい」
手を合わせて頭を下げるひとみ。
この謝罪がいきなり渡した紙を破り捨てたことに対してでないことは、流石にわかる。
やはり今回の件はひとみが一枚噛んでいるのだと、俺は謝る姿を見て確信した。
もしひとみがこの件で何も関わっていないのであれば、こいつは頭を下げて謝るなどはしないだろう。いつものひとみなら、もっと茶化した感じに謝ってくるはずだ、頭も下げずに。
ひとみは頭を上げた後に、昨日のことについての説明を始めた。
「…………要約すると鬱陶しいストーカーをどうにかしたいから、俺に彼氏役みたいなことを勝手にをさせてたってわけだな」
「うん、そう。ほら、最近言う『うそカレ』みたいな」
知るか。
何故か嬉しそうに返事をするひとみ。
悪気があるんなら、そこはしおらしく返事するところだと思うのだが。
さっきの誠意のこもった謝罪はどこいった。
それはいいとして、ひとみは自分に彼氏がいると分かれば、そのストーカーも諦めてくれるだろうと踏んで、俺に目的も話さず一日付き合って欲しいと頼み込んできたというわけだ。
「とばっちり、ふざけろ。……てことは、あのカフェ店にそのストーカーがいたってことだよな。俺は彼氏じゃないって否定したはずだが」
「いたよー。私たちから四つぐらい先のテーブルに座ってたから、聞こえなかったんじゃないのかな。というか、キリヤくんも気付いてたよね。あれだけ露骨に視線送ってきてたんだし」
「……」
確かに気付いていた。
ひとみと会話している時に誰からの視線かまでは分かっていなかったが、誰かに見られていると確かに感じていた。だが、あの時は誰が視線を送ってきているのか、気付かないようにして、見ないようにしていた。
気付かず、見向きもせず、波風立てない、どうせ俺には関係ない。
そう決め込んでいたのだが、カフェ店を出ようとした時に、俺は最後にいなくなったユウノを探し店内を見回し、見つけてしまった。俺のことを睨みつける男を。目は合わせないようにしたが、目の端ではっきりと捉えていた。
「あのメガネをかけた男か」
「そうそう、あの冴えないメガネ」
「……で」
「?」
「お前の所為でこんなことになったんだろ、どうしてくれるんだ。ったく」
俺が恨むような目で見て、ひとみに文句を言う。
「それは本当にごめん」
「誤ってすまんせんじゃねぇーぞ」
「だいじょーぶ、ちゃんとけじめはつけるから」
ひとみが楽観的な声音でそう言い終わると、授業終わりを知らせる終鈴の音が聞こえてきた。
「授業サボっちゃったね。……ねぇねぇ、このまま全部サボっちゃって、今日一日屋上で過ごしちゃおっか」
「止めんないけど、俺は教室に戻るぞ」
「えぇー、もちろん一緒にだよ」
「無・理」
ひとみは俺の答えが分かっていたように、「だよねぇー」と言って屋上のドアに歩いて行く。
そしてドアの前で立ち止まり、「キリヤくんは今回の件、もう気にしなくていいからね」とだけ言い残して、ひとみは屋上を出て行った。
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