××男と異常女共

シイタ

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陰女の秘密のご趣味

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 私のことを無視して、相手は言葉を紡ぎ出す。

『確かにあなたが今ここで死に、あなたがいじめられたことが世間に知れ渡れば、あなたをいじめた人達も、周りの人達も、多少は被害を被るだろうね』

 だったら、という言葉が出る前に相手が言葉を発する。

『でも、それだけだよ。時間が経てば、いじめっ子達はあなたのことを忘れてしまうでしょうね。周りの人達もあなたのことを忘れてしまうでしょうね。そうして、みんながあなたのことを忘れて、あなたなんて初めからいなかったみたいに、普通に生活していくでしょうね』

 いつのまにか沸騰してた私の頭は冴え、相手の言葉に耳を傾けている。

『あなたの行いは、あなたの復讐は、いじめっ子達にはほとんど効果のないことだよ。ただのあなたの自己満足で終わるだけ。それでもあなたが、あなたの言う復讐を遂げたいというのなら、私は止めないよ』

 相手は最後に『どうするの?』と私に問うてきた。
 私は呆然と座り込み、力なく柵に寄りかかる。そして、相手の言葉を反すうした。

 私が死んでも意味がないの?
 私が死んでも彼奴らの人生は滅茶苦茶にできないの?
 私が死んでも彼奴らに復讐できないの?
 私の決意は無駄だったの?
 私の死には何の価値もないの?

 私は、自分が死んだ後のことを考え出す。電話越しの相手、『くろ神』が言う話を想像し出した。
 みんな私のことを忘れて、私の席も私の下駄箱も私のロッカーも私のものではなくなり、誰のものでもないただの席に、ただの下駄箱に、ただのロッカーに成り果てる。私がいたという事実が忘れ去られ、私がいた痕跡が消えて無くなる。誰も私のことを覚えていない世界。
 私は、それを想像するだけで凄まじい孤独感に苛まれ、涙が出た。

「……なら、私はどうしたら、……いいのよ。……このまま、彼奴らのいじめに耐えろって、いうの……? 惨めに生きろっていうの……? ……そんなの、嫌だよぉ……。それなら、……死んだ、方が……マシ……だぁ」

『……』

 くろ神は何も応えない。
 私は涙を止められず、泣き続けた。

『……嫌なら』

「……え?」

『嫌なら、立ち向かうしかない』

「でも、どうやって? 私に、できることなんて……」

『あなたにできないなら、できる人に頼ればいいんだよ』

「頼るって言っても、誰に頼れば。……私を助けてくれる人なんて、誰もいないのに」

 落ち着いてきた私は袖で涙を拭いた。しかし、誰も自分を助けてくれない事実に、また涙が出そうになる。

『誰も助けてくれないなら。助けてくれるようにお願いすればいいんだよ』

「でも断られたら……、それに――」

 私のお願いなんて聞いてくれる人なんていない、そう言葉を続けようとしたら、その前に『断れないようにすればいいんだよ』と、くろ神が告げてくる。
 
「そんなの、どうしたら」

『……脅すんだよ』

「え、……脅すって、どうやって?」

『相手の知られたくない秘密を握って、それをネットに晒すぞぉーとか言えばいいんだよ』

「でも秘密なんて、そんな簡単に知れるわけないし、そのためにいじめに耐えて時間かけるなんて、私……」

『大丈夫だよ。秘密なら私が握ってるし、あなたを助けてくれて、いじめっ子に復讐もできるピッタリな人がいるから』

「それって、誰なの?」

『……』

 返答が帰ってこない。
 スマホに耳を澄ませ、しばらく待つとスマホが震えてメッセージの受信を伝えてくる。
 私は通話をそのままにしたまま、メッセージを確かめた。メッセージから送られてきたのは、一枚の写真と一つの動画だった。それを見て私は驚愕し、目を丸くした。

「こ、これって……」

『あとは自分でなんとかしてね』

 最後に『頑張って』と言い残して、くろ神からの通話は切れた。

 私は少しの間通話が切れたスマホを見た後、傍にあった手帳遺書を掴んで立ち上がった。

 少しだけど、生きる気力が湧いてきた。

 今度は死ぬ復讐ではなく、死なない復讐をすることを私は決めた、決めることができた。
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