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陰女の秘密のご趣味
3-19
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待ちに待った日曜日。
私は先輩との約束通り、水族館に行くことになった。大きくて有名な水族館は近場になく行こうにも少し遠かったため、近場の小さな水族館に行くことにした。小さな水族館だが休日ということもあってか、人はそれなりに存在している。
私と先輩はいつもと変わらないような雑談を交わしながら、水族館を回って行った。
「先輩はやり直したいことってありますか?」
アクアリウムの中で、ふわふわと浮くように泳ぐクラゲ達を見ながら、私は先輩に問うた。
先輩は、なんだいきなり、といった感じに私のことを見てくるが、私は構わず話を続ける。
「ちょっと最近思うところがあって。もっと色々努力してたら、違った自分になれてたのかなと思ってしまって……。先輩はありませんか? そういうこと?」
先輩なら「そんなこと考えても仕方ないだろ」とか言って、適当に返してくると私は思っていた。だけど、私の予想した答えたとは裏腹に先輩は、「ある」と答えた。
私はそれがどんなことなのか聞こうとするが、その前に先輩は次の水槽に向けて歩き出してしまう。先輩は今どんな顔をしているのか気になり、私は小走りで先輩に追いつき隣に並び歩く。そして先輩の顔をこっそりと覗き見るが、その顔はいつもと変わらない無表情のものだった。
先輩のやり直したいこととはなんなのか、私はそれが気になり、だけど聞いていいかわからず、その後、聞こうか、聞かないか、どうしようか、と少し悶々しながら魚達を鑑賞をすることになった。
休憩がてらに私と先輩はベンチに座りながら、自販機で買った飲み物を飲む。
ちなみに、私が飲んでいるのは緑茶であり、先輩は炭酸入りのレモンジュースであった。
「なに悩んでんのお前?」
「え?」
先輩のいきなりな問いに、私は目を丸くして先輩を見る。顔に出てたかな?
「さっきの話か?」
「えーと、はい。先輩がやり直したいことっていうのがちょっと気になって。あと、先輩にもそういうことってあるんだなぁと思って」
私は誤魔化さずに正直に話すことにする。悩んでるのは本当だから。
「そら、やり直したいことなんていくらでもあるだろ。今住んでる家を選び直したいとか、今の友人関係を見直したいとか」
「先輩は今の自分に不満を持っているのですか?」
「俺じゃなくて周りな。まあ、考えても仕方ないけど」
先の予想していた答えが今帰ってきたことに、やっぱり、と私は内心で思う。
「じゃあ、前にもっと色々努力してたらよかったなと思うことはありますか?」
「ある、けどそれも考えても仕方ないな。やり直しができたとしても、俺は何もしないだろうし」
「なんで何もしないんですか?」
「結果が変わらんのなら、する意味がなかろ」
「なんで変わらないって分かるんですか?」
さっきから質問してばっかりだな私。
先輩には悪いと思いつつ、返答を待つ。
「……逆に聞くけど、三影がやり直したいことは、何かをしたら結果が変わると思うのか?」
「それは……」
私は昔のことを思い出し、考える。あの時、私が子供の頃にもっと自分から声をかけていれば、諦めずに一緒に遊んでいれば、絶望せずに希望を追っていれば……
結果は変わっていたのだろうか?
私は変えることができたのだろうか?
私は今とは違う自分になれたのだろうか?
あの時のことを、絶望に打ちひしがれたあの日のことを、忘れていた思い出したくもない瞬間を、鮮明に思い出してみる。
「…………変わらない、と思います」
どんなことをしても、どんなに頑張っても、どんなに我慢しても、あの時の結果は変わらない。
変わるのは、過程だけ。結果が分かるまでの時間が変わるだけ、頑張った分だけ落胆が大きくなるだけ、我慢した分の絶望を思い知らされるだけ。
あの時以上の悲しみを背負うのを、私は拒否した。
私は手に持つペットボトルに視線を向けて、答えを出した。そのペットボトルを、私は無意識に強く握ってしまい、軋む音が聞こえてくる。
先輩は私の答えを聞いて、「だろ」と相槌を打ってきた。まるで、私の出す答えが分かっていたように。
私は先輩との約束通り、水族館に行くことになった。大きくて有名な水族館は近場になく行こうにも少し遠かったため、近場の小さな水族館に行くことにした。小さな水族館だが休日ということもあってか、人はそれなりに存在している。
私と先輩はいつもと変わらないような雑談を交わしながら、水族館を回って行った。
「先輩はやり直したいことってありますか?」
アクアリウムの中で、ふわふわと浮くように泳ぐクラゲ達を見ながら、私は先輩に問うた。
先輩は、なんだいきなり、といった感じに私のことを見てくるが、私は構わず話を続ける。
「ちょっと最近思うところがあって。もっと色々努力してたら、違った自分になれてたのかなと思ってしまって……。先輩はありませんか? そういうこと?」
先輩なら「そんなこと考えても仕方ないだろ」とか言って、適当に返してくると私は思っていた。だけど、私の予想した答えたとは裏腹に先輩は、「ある」と答えた。
私はそれがどんなことなのか聞こうとするが、その前に先輩は次の水槽に向けて歩き出してしまう。先輩は今どんな顔をしているのか気になり、私は小走りで先輩に追いつき隣に並び歩く。そして先輩の顔をこっそりと覗き見るが、その顔はいつもと変わらない無表情のものだった。
先輩のやり直したいこととはなんなのか、私はそれが気になり、だけど聞いていいかわからず、その後、聞こうか、聞かないか、どうしようか、と少し悶々しながら魚達を鑑賞をすることになった。
休憩がてらに私と先輩はベンチに座りながら、自販機で買った飲み物を飲む。
ちなみに、私が飲んでいるのは緑茶であり、先輩は炭酸入りのレモンジュースであった。
「なに悩んでんのお前?」
「え?」
先輩のいきなりな問いに、私は目を丸くして先輩を見る。顔に出てたかな?
「さっきの話か?」
「えーと、はい。先輩がやり直したいことっていうのがちょっと気になって。あと、先輩にもそういうことってあるんだなぁと思って」
私は誤魔化さずに正直に話すことにする。悩んでるのは本当だから。
「そら、やり直したいことなんていくらでもあるだろ。今住んでる家を選び直したいとか、今の友人関係を見直したいとか」
「先輩は今の自分に不満を持っているのですか?」
「俺じゃなくて周りな。まあ、考えても仕方ないけど」
先の予想していた答えが今帰ってきたことに、やっぱり、と私は内心で思う。
「じゃあ、前にもっと色々努力してたらよかったなと思うことはありますか?」
「ある、けどそれも考えても仕方ないな。やり直しができたとしても、俺は何もしないだろうし」
「なんで何もしないんですか?」
「結果が変わらんのなら、する意味がなかろ」
「なんで変わらないって分かるんですか?」
さっきから質問してばっかりだな私。
先輩には悪いと思いつつ、返答を待つ。
「……逆に聞くけど、三影がやり直したいことは、何かをしたら結果が変わると思うのか?」
「それは……」
私は昔のことを思い出し、考える。あの時、私が子供の頃にもっと自分から声をかけていれば、諦めずに一緒に遊んでいれば、絶望せずに希望を追っていれば……
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「…………変わらない、と思います」
どんなことをしても、どんなに頑張っても、どんなに我慢しても、あの時の結果は変わらない。
変わるのは、過程だけ。結果が分かるまでの時間が変わるだけ、頑張った分だけ落胆が大きくなるだけ、我慢した分の絶望を思い知らされるだけ。
あの時以上の悲しみを背負うのを、私は拒否した。
私は手に持つペットボトルに視線を向けて、答えを出した。そのペットボトルを、私は無意識に強く握ってしまい、軋む音が聞こえてくる。
先輩は私の答えを聞いて、「だろ」と相槌を打ってきた。まるで、私の出す答えが分かっていたように。
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