××男と異常女共

シイタ

文字の大きさ
43 / 111
陰女の秘密のご趣味

3-19

しおりを挟む
 待ちに待った日曜日。
 私は先輩との約束通り、水族館に行くことになった。大きくて有名な水族館は近場になく行こうにも少し遠かったため、近場の小さな水族館に行くことにした。小さな水族館だが休日ということもあってか、人はそれなりに存在している。
 私と先輩はいつもと変わらないような雑談を交わしながら、水族館を回って行った。

「先輩はやり直したいことってありますか?」

 アクアリウムの中で、ふわふわと浮くように泳ぐクラゲ達を見ながら、私は先輩に問うた。
 先輩は、なんだいきなり、といった感じに私のことを見てくるが、私は構わず話を続ける。

「ちょっと最近思うところがあって。もっと色々努力してたら、違った自分になれてたのかなと思ってしまって……。先輩はありませんか? そういうこと?」

 先輩なら「そんなこと考えても仕方ないだろ」とか言って、適当に返してくると私は思っていた。だけど、私の予想した答えたとは裏腹に先輩は、「ある」と答えた。
 私はそれがどんなことなのか聞こうとするが、その前に先輩は次の水槽に向けて歩き出してしまう。先輩は今どんな顔をしているのか気になり、私は小走りで先輩に追いつき隣に並び歩く。そして先輩の顔をこっそりと覗き見るが、その顔はいつもと変わらない無表情のものだった。
 先輩のやり直したいこととはなんなのか、私はそれが気になり、だけど聞いていいかわからず、その後、聞こうか、聞かないか、どうしようか、と少し悶々しながら魚達を鑑賞をすることになった。

 休憩がてらに私と先輩はベンチに座りながら、自販機で買った飲み物を飲む。
 ちなみに、私が飲んでいるのは緑茶であり、先輩は炭酸入りのレモンジュースであった。

「なに悩んでんのお前?」

「え?」

 先輩のいきなりな問いに、私は目を丸くして先輩を見る。顔に出てたかな?

「さっきの話か?」

「えーと、はい。先輩がやり直したいことっていうのがちょっと気になって。あと、先輩にもそういうことってあるんだなぁと思って」

 私は誤魔化さずに正直に話すことにする。悩んでるのは本当だから。

「そら、やり直したいことなんていくらでもあるだろ。今住んでる家を選び直したいとか、今の友人関係を見直したいとか」

「先輩は今の自分に不満を持っているのですか?」

「俺じゃなくて周りな。まあ、考えても仕方ないけど」

 先の予想していた答えが今帰ってきたことに、やっぱり、と私は内心で思う。

「じゃあ、前にもっと色々努力してたらよかったなと思うことはありますか?」

「ある、けどそれも考えても仕方ないな。やり直しができたとしても、俺は何もしないだろうし」

「なんで何もしないんですか?」

「結果が変わらんのなら、する意味がなかろ」

「なんで変わらないって分かるんですか?」

 さっきから質問してばっかりだな私。

 先輩には悪いと思いつつ、返答を待つ。

「……逆に聞くけど、三影がやり直したいことは、何かをしたら結果が変わると思うのか?」

「それは……」

 私は昔のことを思い出し、考える。あの時、私が子供の頃にもっと自分から声をかけていれば、諦めずに一緒に遊んでいれば、絶望せずに希望を追っていれば……

 結果は変わっていたのだろうか?
 私は変えることができたのだろうか?
 私は今とは違う自分になれたのだろうか?

 あの時のことを、絶望に打ちひしがれたあの日のことを、忘れていた思い出したくもない瞬間を、鮮明に思い出してみる。

「…………変わらない、と思います」

 どんなことをしても、どんなに頑張っても、どんなに我慢しても、あの時の結果は変わらない。
 変わるのは、過程だけ。結果が分かるまでの時間が変わるだけ、頑張った分だけ落胆が大きくなるだけ、我慢した分の絶望を思い知らされるだけ。
 あの時以上の悲しみを背負うのを、私は拒否した。

 私は手に持つペットボトル緑茶に視線を向けて、答えを出した。そのペットボトルを、私は無意識に強く握ってしまい、軋む音が聞こえてくる。
 先輩は私の答えを聞いて、「だろ」と相槌を打ってきた。まるで、私の出す答えが分かっていたように。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...