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第36話 未成年淫行はやばい
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重い空気から逃げるようにして、自転車にまたがって帰ってきた。舞依さんはまだ外にいる。陽葵さんと話しながら帰ると言っていたけど、あの状態から楽しい会話が出来るのだろうか。
疑問は残るけど深くは考えない。なかったことにしよう。
それよりもメーベルさんだ。
今も炎上は止まっていない。批判の声がSNS上で拡散され続けている。より具体的な内容も出ていて、ホテルに行く約束をした上でオフで会い、ご飯をおごったらったら逃げ帰ったという内容だ。お金を取られたという表現から大分印象が変わっている。
ネット上の声は賛否に分かれていた。
『おごったんだから約束は守れ。逃げるのはおかしい』
『逃げるほど顔がやばかったんだろ。当然の対応だ』
『選んだ店が問題だったんじゃない? ファミレスだったら帰るもわかる』
『指定されたのは飯をおごるだけなら、店なんてなんでもいいだろ』
『そんなこと言うからモテないんだよ』
男女入り交じって燃え上がっている。きっと本人たちにも相当数のクレームは来ているはずだ。
メンタルを崩してないか心配だ。余計なお節介かもしれないけど、落ち込んでいるようなら励ましてあげたい。
SNSのDMは見落とされてしまいそうなので、個別で繋がっているチャットで連絡をしてみよう。
『気晴らしに通話する?』
大丈夫じゃないのは明白なので確認ではなく決めつけてみた。ハズレだったら何こいつとか思われそうだけど、別にそうなってもかまわない。
今は俺の気持ちやプライドなんてどうでもよく、純粋な気持ちでメーベルさんには元気になって欲しいと思っていた。
『内容は? コラボ中止したいとか?』
心が荒んでそうな返信がきた。
想像したとおり精神的にまいっていそうだ。
『中止なんてしないよ!』
『だったら何なの』
『大変そうだったので文字通り気晴らしの通話をしませんかと思ってたんだけど……』
『ふーん』
会話が止まってしまった。警戒されているのかな。
地声を馬鹿にされたときクラスメイト全員が敵だって思っていたときがあるから、気持ちはなんとなくだけどわかる。今はどんな言葉をかけても悪い意味で取られてしまうだろう。
時間が解決するのを待つしかない。
三回目のコラボは中止しないとは伝わっているし、気持ちが落ち着いたら連絡は来るはずだ。
少なくとも今日の所は放置しようとスマホをベッドに放り投げようとして着信音が鳴った。
チャットを見るとメーベルさんから追加のテキストが来ていた。
『いいよ。話そうか』
『通話はいつが良い?』
『いつでも』
『それじゃ今からかけるね』
通話ボタンをタップするとすぐに出てくれた。
「もしもーし」
スマホ越しからメーベルさんのやや高めなカワイイ声が聞こえる。
配信と同じだけど、どこか暗い感情を孕んでいるようにも思えた。
「こんばんは」
「おー。聖夜くんだ。元気してた?」
「はい。メーベルさんはどうかな」
「見ての通りだよ」
乾いた笑い声が聞こえた。
チャットの時と違って明るい言葉を使っているけど、けっこう辛そうだ。
「炎上の件だよね。やっぱり色々とDMきてる感じ?」
「きてるよ。例えば……」
スピーカーモードに切り替わったようで音質が少し変わる。
「あー。あった。飯をおごってヤれるならスパチャ返せ、俺にもヤらせろ、とかそういうのが多いかな。あとはチン凸。知ってる?」
「なんですか、それ」
「男性器の写真を送りつける行為のことだよ」
同じ日本語を使っているのに意味がわからなかった。どうして女性に、そんな写真を送りつけるんだ。何の意味があるんだ。恥ずかしくないのか。
色んな考えと感情がめぐって口が止まる。
「もしかして驚いているの?」
「当たり前だよ! 写真を送った人たちは何を考えて生きているんだ!」
「あははは! そんな驚くこと? よくあることなんだけど、もしかして聖夜くんって意外と若い?」
「高校一年だから若いと思うよ」
「…………ガチ?」
「うん。言ってなかった?」
「なかった! 若すぎるって! てっきり二十代前半だと思っていたよ。聖夜くんに手を出したら私がヤバイ! 法的に殺される!」
笑いながら驚くという器用なことをしていた。
配信で学校の話題も取り扱っていたから、年齢ぐらいは想像がついていると思っていたけど違っていたみたい。まさか大学生ぐらいだと勘違いされているとは。
「もっとヤバいことやろうとしてたなんてね。なーんか。炎上の件、どうでもよくなっちゃった」
俺の年齢を知っただけで気持ちが切り替わって複雑だ。女心ってどうしてこう、意味不明なんだろう。
経験が少ないので理解が追いつかない。
「ヤバいことって?」
「秘密~。それよりさー。ついでにちょっと聞いてよ。って、断っても勝手に喋るけど」
一方的に今回の炎上について語り出した。
男性VTuberとはお互いに顔を見てフィーリングがあえばヤっても良いよと言っていたみたいで、ネットで出回っているような確約まではしていなかったらしい。
とはいえタダで美味しいご飯を食べたかったらしく、勘違いさせるような言動はしていたとのこと。例えばボディタッチを増やして気があるよと合図を送り、手を握るとか。これならフィーリングがあったと思っても不思議じゃない。
だからメーベルさんも完全に無罪というわけではなく、悪女的な振る舞いはしていたのだ。
疑問は残るけど深くは考えない。なかったことにしよう。
それよりもメーベルさんだ。
今も炎上は止まっていない。批判の声がSNS上で拡散され続けている。より具体的な内容も出ていて、ホテルに行く約束をした上でオフで会い、ご飯をおごったらったら逃げ帰ったという内容だ。お金を取られたという表現から大分印象が変わっている。
ネット上の声は賛否に分かれていた。
『おごったんだから約束は守れ。逃げるのはおかしい』
『逃げるほど顔がやばかったんだろ。当然の対応だ』
『選んだ店が問題だったんじゃない? ファミレスだったら帰るもわかる』
『指定されたのは飯をおごるだけなら、店なんてなんでもいいだろ』
『そんなこと言うからモテないんだよ』
男女入り交じって燃え上がっている。きっと本人たちにも相当数のクレームは来ているはずだ。
メンタルを崩してないか心配だ。余計なお節介かもしれないけど、落ち込んでいるようなら励ましてあげたい。
SNSのDMは見落とされてしまいそうなので、個別で繋がっているチャットで連絡をしてみよう。
『気晴らしに通話する?』
大丈夫じゃないのは明白なので確認ではなく決めつけてみた。ハズレだったら何こいつとか思われそうだけど、別にそうなってもかまわない。
今は俺の気持ちやプライドなんてどうでもよく、純粋な気持ちでメーベルさんには元気になって欲しいと思っていた。
『内容は? コラボ中止したいとか?』
心が荒んでそうな返信がきた。
想像したとおり精神的にまいっていそうだ。
『中止なんてしないよ!』
『だったら何なの』
『大変そうだったので文字通り気晴らしの通話をしませんかと思ってたんだけど……』
『ふーん』
会話が止まってしまった。警戒されているのかな。
地声を馬鹿にされたときクラスメイト全員が敵だって思っていたときがあるから、気持ちはなんとなくだけどわかる。今はどんな言葉をかけても悪い意味で取られてしまうだろう。
時間が解決するのを待つしかない。
三回目のコラボは中止しないとは伝わっているし、気持ちが落ち着いたら連絡は来るはずだ。
少なくとも今日の所は放置しようとスマホをベッドに放り投げようとして着信音が鳴った。
チャットを見るとメーベルさんから追加のテキストが来ていた。
『いいよ。話そうか』
『通話はいつが良い?』
『いつでも』
『それじゃ今からかけるね』
通話ボタンをタップするとすぐに出てくれた。
「もしもーし」
スマホ越しからメーベルさんのやや高めなカワイイ声が聞こえる。
配信と同じだけど、どこか暗い感情を孕んでいるようにも思えた。
「こんばんは」
「おー。聖夜くんだ。元気してた?」
「はい。メーベルさんはどうかな」
「見ての通りだよ」
乾いた笑い声が聞こえた。
チャットの時と違って明るい言葉を使っているけど、けっこう辛そうだ。
「炎上の件だよね。やっぱり色々とDMきてる感じ?」
「きてるよ。例えば……」
スピーカーモードに切り替わったようで音質が少し変わる。
「あー。あった。飯をおごってヤれるならスパチャ返せ、俺にもヤらせろ、とかそういうのが多いかな。あとはチン凸。知ってる?」
「なんですか、それ」
「男性器の写真を送りつける行為のことだよ」
同じ日本語を使っているのに意味がわからなかった。どうして女性に、そんな写真を送りつけるんだ。何の意味があるんだ。恥ずかしくないのか。
色んな考えと感情がめぐって口が止まる。
「もしかして驚いているの?」
「当たり前だよ! 写真を送った人たちは何を考えて生きているんだ!」
「あははは! そんな驚くこと? よくあることなんだけど、もしかして聖夜くんって意外と若い?」
「高校一年だから若いと思うよ」
「…………ガチ?」
「うん。言ってなかった?」
「なかった! 若すぎるって! てっきり二十代前半だと思っていたよ。聖夜くんに手を出したら私がヤバイ! 法的に殺される!」
笑いながら驚くという器用なことをしていた。
配信で学校の話題も取り扱っていたから、年齢ぐらいは想像がついていると思っていたけど違っていたみたい。まさか大学生ぐらいだと勘違いされているとは。
「もっとヤバいことやろうとしてたなんてね。なーんか。炎上の件、どうでもよくなっちゃった」
俺の年齢を知っただけで気持ちが切り替わって複雑だ。女心ってどうしてこう、意味不明なんだろう。
経験が少ないので理解が追いつかない。
「ヤバいことって?」
「秘密~。それよりさー。ついでにちょっと聞いてよ。って、断っても勝手に喋るけど」
一方的に今回の炎上について語り出した。
男性VTuberとはお互いに顔を見てフィーリングがあえばヤっても良いよと言っていたみたいで、ネットで出回っているような確約まではしていなかったらしい。
とはいえタダで美味しいご飯を食べたかったらしく、勘違いさせるような言動はしていたとのこと。例えばボディタッチを増やして気があるよと合図を送り、手を握るとか。これならフィーリングがあったと思っても不思議じゃない。
だからメーベルさんも完全に無罪というわけではなく、悪女的な振る舞いはしていたのだ。
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