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傭兵が死んだ! おわりだ!
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村の中心に老人――村長を殴る男がいた。
近くには助けようとする息子を地面に押さえつけている男が二人もいる。先ほど殺した男と同じ装備をしているので、ハラディンはクノハ傭兵団と認識した。
離れた場所から様子を見守る村人の姿もあるが、関わろうとはしない。
敵は総勢で三名。武器は片手剣だが鞘に収まっているため、すぐに戦闘は出来ないだろう。数秒、遅ければ十秒は必要だ。
瞬時に状況を判断したハラディンは、刀を腰にぶら下げながらゆっくりと歩く。
「止めてくれ! 上納金は三日前に払ったばかりだろう! 次は一ヶ月後という約束だったじゃないか!」
村長は顔から血を流しながらも懇願するように叫んでいた。
「約束? そんなもん守るわけないだろ。頭が必要だと言ったんだから、さっさと出せ。嫌なら奴隷として息子を売り飛ばすぞッ!」
「働き手がいなくなったら村は終わる! 勘弁してくれ! 頼む!!」
若い男は貴重な労働力だ。
一人でも減ってしまえば村への影響は大きい。
クノハ傭兵の男たちの要求はどれも無理難題ではあるが、だからといって断ってしまうと村中が荒らされる。
武力を持たない村人たちは、怒りを収めてもらうよう、懇願するしか生き残る道はなかった。
そんな絶望的な状況の中、ハラディンはクノハ傭兵団に声をかける。
「お前たちが村を襲う悪者か?」
遠慮なんて一切ない直接的な言葉だ。
傭兵たちは一斉に発言者を見ると、顔が赤くなった。血管は浮き出るほどの怒りを覚えている。
非道なことをしている自覚があるからこその反応だ。
「だったらどうする? こいつの代わりに金を出すのか?」
村長を殴っていた男が片手剣を抜いて構えた。残りの二人も同じように武器を手に取る。
一方のハラディンは刀に手を置いたまま動いていない。
敵が殺気立っているというのに涼しい顔をしていた。
「見ての通り金はない」
「なら俺たちに殺されにでも来たか?」
「逆だ。クノハ傭兵団を殲滅しに来た」
「ふざけるなぁぁあああ!!」
浮浪者にしか見えない男から馬鹿にされたと激怒し、クノハ傭兵たちは動き出そうとする。
ハラディンの右手が刀の柄を軽く握った。
周囲が視認できたのはここまである。
傭兵の男どもは細切れの肉体になり、真っ赤な血をまき散らす。殴られていた村長、押さえつけられていた息子は呆然とした顔をしながら、まともに浴びてしまった。
惨劇が発生して数秒たってから何が起こったのか理解する。
「うぁぁあああ!! 傭兵が死んだ! おわりだ!」
厄介者を殺した礼ではなく、自らの安全を心配する叫び声がした。
「なんてことをしてくれたんだ! この村が滅びるかもしれないんだぞ!」
返り血を浴びて全身が赤くなっている村長が、ハラディンに掴みかかった。
傭兵はプライドにこだわる。ヤられたら必ずヤり返してくるので、彼は報復を心配しているのだ。
死の恐怖が近づいていると感じ、老化によって細くなった体がガタガタと震えている。
「だからなんだ? 俺は契約を守るために動いただけだ」
軽く霊力を放つと、ハラディンにすがりついていた村長は、よろよろと後ろに下がって地面に座り込んだ。周囲も似たようなもので完全に怯えている。
村人たちは、抗う気力はなく完全に牙を抜かれいる。
あまりにも哀れな姿にハラディンは何かを言う気すら起きなかった。
現場を立ち去ると門番の男の家に戻る。
荒れていた部屋は片付けられていて、死体は外に出されている。床に血の跡は残っているがテーブルは汚れていない。干し肉と少量だが紫色の果実があった。
「無事に帰ってきたか。傭兵どもは倒してくれたんだな?」
「この村にいるヤツは全員殺した」
「だったら勝利の祝いをしないと! 遠慮無く食べてくれ!」
空腹が続いていたハラディンは遠慮しない。
椅子に座ると、まずは果実を口に入れて噛む。
ほんのりと甘い液体が広がり、シャリシャリとした食感が久々に食事をできていると喜びを感じさせてくれる。飲み込めば胃が歓迎するように消化を始めた。
ゆっくりと果実を食べた後は干し肉だ。
薄くスライスされているので食べやすくなっている。門番の男の気づかいに感謝しながら口を開く。食べようとして、ハラディンは手を止めた。
「そういえば依頼主なのに自己紹介をしてなかったな。俺はハラディンだ。知っての通り戦いだけは自信がある」
「俺はポンデル。一応、門番として働いている」
自給自足をしている小さな村であるため、警備を任されているのは彼だけだ。
獣や魔物の類いと戦う仕事をまかされているのだが、就任してすぐクノハ傭兵団に襲われてしまい、村が荒らされているのに何もできず無力感を覚えていた。
「それと俺の雇い主だ」
「確かに」
お互いに軽く笑い自己紹介が終わると、ハラディンは薄い干し肉を食べ始める。
二枚、三枚と順調に胃へ収めていくと外が騒がしくなっていく。
気配はポンデルの家に向かっており、しばらくして勢いよくドアが開かれる。
「余所の者を入れたのはお前か!?」
先ほど傭兵に殴られていた村長だ。着替えたようで返り血はなくなり、頭に包帯が巻かれている。
無遠慮にボンデルの家に入ると食事を続けているハラディンを見た。
騒ぎの元凶は我関せずという顔で干し肉を食べている。
あまりにも激しい怒りを感じてしまい、村長は意識を失いそうになっていた。
近くには助けようとする息子を地面に押さえつけている男が二人もいる。先ほど殺した男と同じ装備をしているので、ハラディンはクノハ傭兵団と認識した。
離れた場所から様子を見守る村人の姿もあるが、関わろうとはしない。
敵は総勢で三名。武器は片手剣だが鞘に収まっているため、すぐに戦闘は出来ないだろう。数秒、遅ければ十秒は必要だ。
瞬時に状況を判断したハラディンは、刀を腰にぶら下げながらゆっくりと歩く。
「止めてくれ! 上納金は三日前に払ったばかりだろう! 次は一ヶ月後という約束だったじゃないか!」
村長は顔から血を流しながらも懇願するように叫んでいた。
「約束? そんなもん守るわけないだろ。頭が必要だと言ったんだから、さっさと出せ。嫌なら奴隷として息子を売り飛ばすぞッ!」
「働き手がいなくなったら村は終わる! 勘弁してくれ! 頼む!!」
若い男は貴重な労働力だ。
一人でも減ってしまえば村への影響は大きい。
クノハ傭兵の男たちの要求はどれも無理難題ではあるが、だからといって断ってしまうと村中が荒らされる。
武力を持たない村人たちは、怒りを収めてもらうよう、懇願するしか生き残る道はなかった。
そんな絶望的な状況の中、ハラディンはクノハ傭兵団に声をかける。
「お前たちが村を襲う悪者か?」
遠慮なんて一切ない直接的な言葉だ。
傭兵たちは一斉に発言者を見ると、顔が赤くなった。血管は浮き出るほどの怒りを覚えている。
非道なことをしている自覚があるからこその反応だ。
「だったらどうする? こいつの代わりに金を出すのか?」
村長を殴っていた男が片手剣を抜いて構えた。残りの二人も同じように武器を手に取る。
一方のハラディンは刀に手を置いたまま動いていない。
敵が殺気立っているというのに涼しい顔をしていた。
「見ての通り金はない」
「なら俺たちに殺されにでも来たか?」
「逆だ。クノハ傭兵団を殲滅しに来た」
「ふざけるなぁぁあああ!!」
浮浪者にしか見えない男から馬鹿にされたと激怒し、クノハ傭兵たちは動き出そうとする。
ハラディンの右手が刀の柄を軽く握った。
周囲が視認できたのはここまである。
傭兵の男どもは細切れの肉体になり、真っ赤な血をまき散らす。殴られていた村長、押さえつけられていた息子は呆然とした顔をしながら、まともに浴びてしまった。
惨劇が発生して数秒たってから何が起こったのか理解する。
「うぁぁあああ!! 傭兵が死んだ! おわりだ!」
厄介者を殺した礼ではなく、自らの安全を心配する叫び声がした。
「なんてことをしてくれたんだ! この村が滅びるかもしれないんだぞ!」
返り血を浴びて全身が赤くなっている村長が、ハラディンに掴みかかった。
傭兵はプライドにこだわる。ヤられたら必ずヤり返してくるので、彼は報復を心配しているのだ。
死の恐怖が近づいていると感じ、老化によって細くなった体がガタガタと震えている。
「だからなんだ? 俺は契約を守るために動いただけだ」
軽く霊力を放つと、ハラディンにすがりついていた村長は、よろよろと後ろに下がって地面に座り込んだ。周囲も似たようなもので完全に怯えている。
村人たちは、抗う気力はなく完全に牙を抜かれいる。
あまりにも哀れな姿にハラディンは何かを言う気すら起きなかった。
現場を立ち去ると門番の男の家に戻る。
荒れていた部屋は片付けられていて、死体は外に出されている。床に血の跡は残っているがテーブルは汚れていない。干し肉と少量だが紫色の果実があった。
「無事に帰ってきたか。傭兵どもは倒してくれたんだな?」
「この村にいるヤツは全員殺した」
「だったら勝利の祝いをしないと! 遠慮無く食べてくれ!」
空腹が続いていたハラディンは遠慮しない。
椅子に座ると、まずは果実を口に入れて噛む。
ほんのりと甘い液体が広がり、シャリシャリとした食感が久々に食事をできていると喜びを感じさせてくれる。飲み込めば胃が歓迎するように消化を始めた。
ゆっくりと果実を食べた後は干し肉だ。
薄くスライスされているので食べやすくなっている。門番の男の気づかいに感謝しながら口を開く。食べようとして、ハラディンは手を止めた。
「そういえば依頼主なのに自己紹介をしてなかったな。俺はハラディンだ。知っての通り戦いだけは自信がある」
「俺はポンデル。一応、門番として働いている」
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獣や魔物の類いと戦う仕事をまかされているのだが、就任してすぐクノハ傭兵団に襲われてしまい、村が荒らされているのに何もできず無力感を覚えていた。
「それと俺の雇い主だ」
「確かに」
お互いに軽く笑い自己紹介が終わると、ハラディンは薄い干し肉を食べ始める。
二枚、三枚と順調に胃へ収めていくと外が騒がしくなっていく。
気配はポンデルの家に向かっており、しばらくして勢いよくドアが開かれる。
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