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この先です
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しばらくして、床を叩いているペイジから声があがった。
「ありました。ここです!」
喜んで手招きしている。
メーデゥは動かない。ハラディンを見てどうするか指示を待っている。
「もたもたしてたら巡回している騎士たちに見つかってしまう。行くぞ」
「うん」
命令されて嬉しいのか、尻尾をふりながらハラディンの後ろを付いてペイジの近くに立つ。
床のタイルに小さな取っ手が出ていて、引っ張り上げると中に階段があった。薄暗いが照明は取り付けられている。視界は問題なさそうだ。
「隠しドアです。下水路の途中に情報屋がいるので会いに行きましょう」
何度か訪れたことのあるペイジが先頭になって階段を降りていく。二番手はメーデゥ、最後尾はハラディンだ。内側から隠しドアを閉めたので、兵が倉庫に来ても簡単には見つけられない。時間は稼げるだろう。
コツコツコツと、床を叩く靴音が反響する。
しばらくして水の流れる音が聞こえてきた。
メーデゥが鼻をヒクヒクと動かす。糞尿の臭いがして眉間にしわが寄った。
下水に到着すると耐えられないほどになり、振り返るとハラディンに抱きつく。
「動きにくい。離れてくれ」
ここは情報屋の領域だ。襲われる可能性もあるので警戒したいのだが、メーデゥは離れようとしない。聞き分けのない子供みたいに、服に顔を埋めながら首を横に振っている。
「メーデゥ様にとって、糞尿の臭いはきついのかもしれませんね。ここにいる情報屋は急に襲ってくるような方ではないので、抱きかかえても問題ないかと思いますよ」
「……その言葉、信じるぞ」
仕方がないといった感じでハラディンはメーデゥを抱っこし手歩き出した。
下水道は中心に汚水が流れていて、左右に道がある。壁には淡く発行する石が一定の距離で付けられているので、道を踏み外して水に落ちてしまう事態は避けられそうだ。
人を見つけるとネズミや虫はさーっと逃げていき襲ってくるようなことはないが、遠くから監視されている。
臭いといい、居心地はよくない。
「情報屋はこんなところに住んでいるのか?」
「まさか。さすがに下水道に住むほどの変わり者じゃないですよ。店に入るための通路です」
「ならよかった」
少女を抱っこしたまま商談なんてしたくなかったハラディンは安堵した。
下水道をしばらく歩いているとペイジが急に立ち止まる。分岐するような道はないが、何もない壁に手を当てると石のこすれる音がして隠しドアが開いた。
「この先です」
ペイジが進んでいく。ハラディンも後を追っていくと、上り階段があった。背後から隠しドアが自動で閉まる音を聞きつつ登っていく。
一階にたどり着くと木製のドアがあった。年季が入っていて色あせているが頑丈そうだ。
フードを目深にかぶった男が階段に腰掛けいて、三人を見ている。
「子供の預かり所を探しているなら帰れ。うちは違うぞ」
抱っこされているメーデゥを見ての発言だ。声がやや高いのでフードをかぶっている男は若いとわかる。
指摘されて自分が何をしているのか思い出したハラディンは少女を床に下ろした。
「知りたいことがある。情報屋に会わせてくれ」
「金はあるのか?」
「これぐらいは」
勝手に話を進めるハラディンが金貨を数枚出した。
護衛の前金としてもらった残りの金貨である。放浪する日々を続けていたこともあって、貴重品は身につけるクセがあったのだ。宿に置いていたら無一文だっただろう。
「ふーん。ま、それだけあれば一応客として扱ってもいいか。そこのおっさんは、いくら持ってるんだ?」
「それを君に話す必要はあるかね? 早くブレアさんに会わせてくれ」
「マミーの名前を知ってるのか……いいだろう。通れ」
一見客ではないとわかり、フードをかぶった男は立ち上がると端に寄った。
ペイジたちはドアを開けて中に入る。
部屋の中心に小さなテーブルと椅子が二脚ある。奥の方には布で鼻と口を隠した女性が座っていた。黒い長く腰まで伸びている。露出度が高めな紫色のドレスを着ていて、所々に金色の刺繍が施されていて娼婦のようにも見えた。
「ペイジ様、お久しぶりですね」
「ご無沙汰しております」
穏やかに挨拶をしながらペイジは空いている椅子に座った。
天井から人の気配がしているため、ハラディンとメーデゥは立ったまま警戒を続けている。
「随分とよい護衛を雇われているようですね」
「ええ、私にはもったいないほどの優秀な方ですよ」
「ドラゴン族を一人で倒せるほどの実力をお持ちですものね。自慢したくなるのも分かりますわ」
「な……ッ」
パーティー会場でのできごとを目の前にいるブレアが把握していることに驚き、ペイジは言葉が詰まった。
大失態ではあるが、たった数時間前の情報を仕入れているのだから未熟だと責めるのは少し酷だ。
「私への要望は町への脱出手段の提供でしょうか? それとも他にあります?」
口が隠れてわかりにくいが、笑いながらペイジの後ろに立つハラディンを見ていた。
「ありました。ここです!」
喜んで手招きしている。
メーデゥは動かない。ハラディンを見てどうするか指示を待っている。
「もたもたしてたら巡回している騎士たちに見つかってしまう。行くぞ」
「うん」
命令されて嬉しいのか、尻尾をふりながらハラディンの後ろを付いてペイジの近くに立つ。
床のタイルに小さな取っ手が出ていて、引っ張り上げると中に階段があった。薄暗いが照明は取り付けられている。視界は問題なさそうだ。
「隠しドアです。下水路の途中に情報屋がいるので会いに行きましょう」
何度か訪れたことのあるペイジが先頭になって階段を降りていく。二番手はメーデゥ、最後尾はハラディンだ。内側から隠しドアを閉めたので、兵が倉庫に来ても簡単には見つけられない。時間は稼げるだろう。
コツコツコツと、床を叩く靴音が反響する。
しばらくして水の流れる音が聞こえてきた。
メーデゥが鼻をヒクヒクと動かす。糞尿の臭いがして眉間にしわが寄った。
下水に到着すると耐えられないほどになり、振り返るとハラディンに抱きつく。
「動きにくい。離れてくれ」
ここは情報屋の領域だ。襲われる可能性もあるので警戒したいのだが、メーデゥは離れようとしない。聞き分けのない子供みたいに、服に顔を埋めながら首を横に振っている。
「メーデゥ様にとって、糞尿の臭いはきついのかもしれませんね。ここにいる情報屋は急に襲ってくるような方ではないので、抱きかかえても問題ないかと思いますよ」
「……その言葉、信じるぞ」
仕方がないといった感じでハラディンはメーデゥを抱っこし手歩き出した。
下水道は中心に汚水が流れていて、左右に道がある。壁には淡く発行する石が一定の距離で付けられているので、道を踏み外して水に落ちてしまう事態は避けられそうだ。
人を見つけるとネズミや虫はさーっと逃げていき襲ってくるようなことはないが、遠くから監視されている。
臭いといい、居心地はよくない。
「情報屋はこんなところに住んでいるのか?」
「まさか。さすがに下水道に住むほどの変わり者じゃないですよ。店に入るための通路です」
「ならよかった」
少女を抱っこしたまま商談なんてしたくなかったハラディンは安堵した。
下水道をしばらく歩いているとペイジが急に立ち止まる。分岐するような道はないが、何もない壁に手を当てると石のこすれる音がして隠しドアが開いた。
「この先です」
ペイジが進んでいく。ハラディンも後を追っていくと、上り階段があった。背後から隠しドアが自動で閉まる音を聞きつつ登っていく。
一階にたどり着くと木製のドアがあった。年季が入っていて色あせているが頑丈そうだ。
フードを目深にかぶった男が階段に腰掛けいて、三人を見ている。
「子供の預かり所を探しているなら帰れ。うちは違うぞ」
抱っこされているメーデゥを見ての発言だ。声がやや高いのでフードをかぶっている男は若いとわかる。
指摘されて自分が何をしているのか思い出したハラディンは少女を床に下ろした。
「知りたいことがある。情報屋に会わせてくれ」
「金はあるのか?」
「これぐらいは」
勝手に話を進めるハラディンが金貨を数枚出した。
護衛の前金としてもらった残りの金貨である。放浪する日々を続けていたこともあって、貴重品は身につけるクセがあったのだ。宿に置いていたら無一文だっただろう。
「ふーん。ま、それだけあれば一応客として扱ってもいいか。そこのおっさんは、いくら持ってるんだ?」
「それを君に話す必要はあるかね? 早くブレアさんに会わせてくれ」
「マミーの名前を知ってるのか……いいだろう。通れ」
一見客ではないとわかり、フードをかぶった男は立ち上がると端に寄った。
ペイジたちはドアを開けて中に入る。
部屋の中心に小さなテーブルと椅子が二脚ある。奥の方には布で鼻と口を隠した女性が座っていた。黒い長く腰まで伸びている。露出度が高めな紫色のドレスを着ていて、所々に金色の刺繍が施されていて娼婦のようにも見えた。
「ペイジ様、お久しぶりですね」
「ご無沙汰しております」
穏やかに挨拶をしながらペイジは空いている椅子に座った。
天井から人の気配がしているため、ハラディンとメーデゥは立ったまま警戒を続けている。
「随分とよい護衛を雇われているようですね」
「ええ、私にはもったいないほどの優秀な方ですよ」
「ドラゴン族を一人で倒せるほどの実力をお持ちですものね。自慢したくなるのも分かりますわ」
「な……ッ」
パーティー会場でのできごとを目の前にいるブレアが把握していることに驚き、ペイジは言葉が詰まった。
大失態ではあるが、たった数時間前の情報を仕入れているのだから未熟だと責めるのは少し酷だ。
「私への要望は町への脱出手段の提供でしょうか? それとも他にあります?」
口が隠れてわかりにくいが、笑いながらペイジの後ろに立つハラディンを見ていた。
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