のんびり契約結婚のはずが、王太子妃になってしまいました。

Hibah

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シルヴィア様は少し微笑みましたが、目に見えて顔が引きつっています。


「ビアンカ様の紅茶でしょう? わたしが飲むわけにはいかないわ」


この返事を聞き、ディートハルト様はいっそう顔を暗くしました。シルヴィア様をじっと見つめ続けます。

会食の参加者たちは、立ち上がっているディートハルト様の異変に気づき、注目し始めました。全員がおしゃべりをやめました。


「飲めない理由でもあるのかい?」


「わたしにはわたしの紅茶があります」


「じゃあ僕が飲んでもいいんだね?」


ディートハルト様はこう言うと、私の席から持ってきたティーカップを右手で持ち上げ、口元に運ぼうとしました。シルヴィア様はそれを見てぱっと立ち上がり、ディートハルト様の右腕をがしっと掴みました。シルヴィア様の身体が小刻みに震えているように見えます。

二人は無言で見つめ合っていました。シルヴィア様はディートハルト様の腕を抑えたまま、彼の手からティーカップを取ろうとしました。しかし、ディートハルト様はかたくなに離しません。


「どうして僕が飲んではいけないんだい?」


シルヴィア様はディートハルト様の問いかけを聞き、目が充血し始めました。何も答えず、静かに首を横に振るだけです。


「入っているのかい? 毒が……」


ディートハルト様の言葉は、静寂を保っていた広間に虚しく響き渡りました。会食の参加者全員がざわつきます。

シルヴィア様は膝から崩れ落ち、両手で顔を覆いました。


「お兄様は……飲んではいけません……。ただそれだけです……お願いです」


「答えになっていないよシルヴィア」


「お兄様のことが……好きで好きでしかたないのです」


「……そんなの言い訳にならない。君がしようとしたことは重罪だぞ」


シルヴィア様は立ち上がり、顔をくしゃくしゃにしたまま、私を指さしました。


「わたしはお兄様のためにやったのです! あの女はお兄様を不幸にします。エミールがもうすぐいなくなるのもあの女のせいなのでしょう? エミール……いい人だったのに」


「エミールの件は……ビアンカとは無関係だよ。彼が自分で決めた道だ。それを僕が応援した」


「王族も貴族も嘘ばかり……。みんな大っっ嫌い! 消えてしまえ!」


こうシルヴィア様が叫んだところで、国王陛下が憲兵に指示を出しました。毒がついているのであろうティーカップは、ディートハルト様から憲兵に渡されました。ハンカチにくるまれて運ばれていきます。シルヴィア様も憲兵に促されて連れて行かれます。

私の初めての会食は、シルヴィア様の拘束というとんでもない事件であっという間に終了しました。国王陛下が解散を命じ、招かれた参加者にはお詫びの品を送ると説明されました。




後日、私は国王陛下に呼ばれました。国王陛下の執務室には初めて入ります。シルヴィア様の件だとは思いますが、何を言われるのだろうかと緊張しました。

国王陛下は私に次のように言いました。


「シルヴィアを許してやってくれないか?」
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