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王宮を出て半年ほど経ったある日、実家にいた私に王宮から使いの者が来た。国王と第一王子が亡くなったとのことだ。
私は使いの者にきいた。
「国王陛下が亡くなったのは……ご病気? それに第一王子まで……どういうこと?」
「国王陛下も第一王子も、王宮の警備兵に刺されました。その警備兵は、両親が税金を払うことができず処刑されてしまっていたようです。国王陛下への恨みは凄まじく、何度も刺して、原型をとどめないほどだったとのこと」
あまりに酷い最期だと思った。国王ともなれば、どこでどんな風に恨みを抱かれているかわからない。
「第一王子はなぜ?」
「一緒にいたから巻き添えをくらったそうです。まあ国王陛下の指示を一番従順に聞いていたのは第一王子ですからね」
「そうだけど……まさか警備兵に刺されるとはね……」
「国王陛下と第一王子を殺害した警備兵は捕縛され処刑されました。次の国王には第二王子のバーナード様がおなりになります。戴冠式にエミリア様もお越しください」
「……! 時代が変わったのね、わかったわ」
王宮で国王や王子が殺されるなんて普通はない。おそらく王宮も混乱しているだろう。そんな中、バーナードは国王になるんだ……。
戴冠式当日、バーナードは私の姿を見ると両手を広げて駆け寄ってきた。私を抱きしめると「エミリアに会いたかった。元気そうでよかった」と泣き始めた。
私はバーナードを慰めながら言った。
「国王陛下とお兄様の件、辛い事件でしたね」
「そうだね、剣でたくさん刺されちゃって……。でも、それだけひどいことをたくさんしてきたと思うし、しかたない面もあるな、って思っちゃうんだ」
「警備兵の家族は国王陛下の指示で処刑されてしまったんでしょ?」
「うん。一度の猶予も与えずに処刑したんだって。そりゃ恨まれるよ」
「あなた様がこの国を変えてください。私も陰ながら応援しております」
「陰の応援なんて嫌だ! エミリアとまた結婚したいんだ。王妃として王宮にあがってくれないか?」
「わ、私が……!? 一度追放された身ですよ?」
「エミリアは正しいことを言っただけじゃないか。これから僕は国王になる。真実を言ってくれる人が近くにいないと、ダメな国王になってしまうと思うんだ」
「いえ……でも……あなた様は王妃を異国から招くこともできます。政略結婚をうまく利用すれば、国の発展につながります。そのような選択肢を考えるのもよいのでは?」
「何を言っているんだエミリア! 僕はエミリアに近くにいてほしいんだ! エミリアじゃなきゃ嫌なんだ。僕と一緒に新しい国作りをしてほしい。そして……夫婦としても、幸せに暮らそう」
「――わかりました。こんな私でよければ、よろしくお願いします」
私はこうして王妃になった。夫のバーナードとともに財政を見直し、国の税金システムを見直した。王宮も少しずつ落ち着きを取り戻し、街で物乞いをする民の数も減ってきた。
なにより嬉しいのは、バーナードが私を一人の女性としてずっと好きでいてくれたことだった。私は自分の頑固な性格が災いし王宮を追放されていたけど、結果的には真実に生きていてよかった。正しいことをするのはリスクもあるし怖いけど、こうして運良く報われたときには、意志を曲げなくて正解だったなと思える。
バーナードは今日も私に相談してきた。
「僕は本当に国王なんて務まるんだろうか……自信がないよ」
私はいつも励ましてあげる。気弱だけど責任感が強く、心配性だけど丁寧な政務を行う国王を。
「大丈夫ですよ! あなた様が国王としての仕事を誠実に捉えている証拠です。王宮も安定し、民の笑顔も増えております。ご安心ください!」
国王になった夫バーナードとともに、私は幸せに生きていくのだった。
私は使いの者にきいた。
「国王陛下が亡くなったのは……ご病気? それに第一王子まで……どういうこと?」
「国王陛下も第一王子も、王宮の警備兵に刺されました。その警備兵は、両親が税金を払うことができず処刑されてしまっていたようです。国王陛下への恨みは凄まじく、何度も刺して、原型をとどめないほどだったとのこと」
あまりに酷い最期だと思った。国王ともなれば、どこでどんな風に恨みを抱かれているかわからない。
「第一王子はなぜ?」
「一緒にいたから巻き添えをくらったそうです。まあ国王陛下の指示を一番従順に聞いていたのは第一王子ですからね」
「そうだけど……まさか警備兵に刺されるとはね……」
「国王陛下と第一王子を殺害した警備兵は捕縛され処刑されました。次の国王には第二王子のバーナード様がおなりになります。戴冠式にエミリア様もお越しください」
「……! 時代が変わったのね、わかったわ」
王宮で国王や王子が殺されるなんて普通はない。おそらく王宮も混乱しているだろう。そんな中、バーナードは国王になるんだ……。
戴冠式当日、バーナードは私の姿を見ると両手を広げて駆け寄ってきた。私を抱きしめると「エミリアに会いたかった。元気そうでよかった」と泣き始めた。
私はバーナードを慰めながら言った。
「国王陛下とお兄様の件、辛い事件でしたね」
「そうだね、剣でたくさん刺されちゃって……。でも、それだけひどいことをたくさんしてきたと思うし、しかたない面もあるな、って思っちゃうんだ」
「警備兵の家族は国王陛下の指示で処刑されてしまったんでしょ?」
「うん。一度の猶予も与えずに処刑したんだって。そりゃ恨まれるよ」
「あなた様がこの国を変えてください。私も陰ながら応援しております」
「陰の応援なんて嫌だ! エミリアとまた結婚したいんだ。王妃として王宮にあがってくれないか?」
「わ、私が……!? 一度追放された身ですよ?」
「エミリアは正しいことを言っただけじゃないか。これから僕は国王になる。真実を言ってくれる人が近くにいないと、ダメな国王になってしまうと思うんだ」
「いえ……でも……あなた様は王妃を異国から招くこともできます。政略結婚をうまく利用すれば、国の発展につながります。そのような選択肢を考えるのもよいのでは?」
「何を言っているんだエミリア! 僕はエミリアに近くにいてほしいんだ! エミリアじゃなきゃ嫌なんだ。僕と一緒に新しい国作りをしてほしい。そして……夫婦としても、幸せに暮らそう」
「――わかりました。こんな私でよければ、よろしくお願いします」
私はこうして王妃になった。夫のバーナードとともに財政を見直し、国の税金システムを見直した。王宮も少しずつ落ち着きを取り戻し、街で物乞いをする民の数も減ってきた。
なにより嬉しいのは、バーナードが私を一人の女性としてずっと好きでいてくれたことだった。私は自分の頑固な性格が災いし王宮を追放されていたけど、結果的には真実に生きていてよかった。正しいことをするのはリスクもあるし怖いけど、こうして運良く報われたときには、意志を曲げなくて正解だったなと思える。
バーナードは今日も私に相談してきた。
「僕は本当に国王なんて務まるんだろうか……自信がないよ」
私はいつも励ましてあげる。気弱だけど責任感が強く、心配性だけど丁寧な政務を行う国王を。
「大丈夫ですよ! あなた様が国王としての仕事を誠実に捉えている証拠です。王宮も安定し、民の笑顔も増えております。ご安心ください!」
国王になった夫バーナードとともに、私は幸せに生きていくのだった。
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