愛人のいる夫を捨てました。せいぜい性悪女と破滅してください。私は王太子妃になります。

Hibah

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「あら、フィリップ様! 失礼しました! 帰っていらしたのですね。お迎えにも参らず申し訳ありません」

リーゼは私といるときとは正反対に態度を変え、しおらしく謝った。

夫はリーゼの姿を見るとほっとした表情になり、そのあと顔をニヤつかせた。若い娘にデレデレする夫を見るのは、怒りや呆れというよりも、苦痛である。

夫は自ら近づいてリーゼを抱き寄せた。
「リーゼ。会いたかったよ。飛んで帰ってきたんだ。部屋は居心地よかったか? ゆっくり休めたかい?」

「はい、奥様もわたしに大変よくしてくださって、至れり尽くせりでございます。わたしのような人間にもったいないかぎりです」

リーゼは夫と抱き合い、夫の頭の横から私を見た。(フィリップ様のことを一番理解しているのは私よ)みたいな目をしているのが憎らしい。夫の背中が、心なしかいつもより小さく映った。

夫はリーゼの肩に両手を添えながらリーゼにきいた。
「お前がカリーナに”おばさん”と言ったというのは事実か?」

「まさか! わたしが大切な奥様のことを”おばさん”だなんて呼ぶはずございません。聞き間違いではないでしょうか? もしそのように聞こえたのなら謝ります……」

リーゼの謝るフリの演技は完成度が高い。息を吐くように嘘をつく人生だったから、こんな風に振る舞えるのね……。

夫は眉間にシワを寄せて私を睨んだ。
「カリーナ、どういうことだ! リーゼは”おばさん”だなんて言ってないぞ! お前はリーゼが来たことを疎ましく思って嘘をついたのか!?」

私は必死で否定した。
「そんなわけないじゃないですか! 嘘をつく必要がどこにあるんです。その子の真の姿はもっと恐ろしいものです。いい加減目を覚ましてください」

使用人たちがこっそりとこちらを見て、小声で何か話しているのがわかる。使用人たちはさすがにリーゼの本性を知ってくれていると思うけど、なんだかこの場に私の味方はいない気がした。

(私はいつも使用人たちに指示を出す立場。好かれようと思ってやってきたわけじゃない。嫌われていて当然よね……)

夫はまた大きくため息をつくと、今度はさげすむような目で見てきた。
「お前にはがっかりだよ。リーゼのことを理解し、仲良くやってくれると思っていたのにな。まあいい。頭を冷やせ。しばらく顔も見たくない」

そこまで……そこまで言う必要あるかしら……?
顔も見たくない? 長年の夫婦生活も、たったこれだけのことで終わらせてしまうの? あなたにとって私は、その程度の価値だったの?

涙も出なかった。
涙を出してすっきりするような感情だったら苦労しない。
帰宅するかわからない夫のために支度する私の労力も考えてよ。
今までの努力は何だったの? ぽっと出の小娘に私たちの築き上げた”城”をめちゃくちゃにされて……。

はあ……せいぜい性悪愛人と破滅したらいいわ。


私はとぼとぼと自室に戻った。
そして、荷物をまとめ始めた。
明日の朝、この家から出ていくために……
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