7 / 11
7
しおりを挟む
「フィリップはおそらく、お前に劣等感を抱いていたんじゃなかろうか。結婚してすぐに家が没落し、浮いたことをする間もなく、仕事だけをしてきた。言い訳にはならんだろうが、恋も女も知らない男なんだよ。貴族に真面目なやつは少ないからな、相対的に出世できたが、それもお前の支えのおかげ……。フィリップは自分の力を確認したくて、自分で手に入れたものがほしくて、あの訳のわからん愛人を連れてきたんじゃないか」
「私が夫を支えたことが、夫の仇になっていたということでしょうか?」
「それは違う。違うが……フィリップという男は想像以上に自尊心や支配心の強い男だったんだな。だからカフェで働く平民の女を連れてきたんだろう。哀れな男だ。さらなる高み、さらなる栄光に向けて歩む覚悟ができなかったんだな」
「お父様……私はどうすればよかったのでしょうか? 夫のしたいようにさせ、私自身は奥に引っ込んでいたらよかったのでしょうか?」
父は静かに首を横に振り、微笑みを浮かべた。
「お前は最高の仕事をした。外国との交渉も、疫病の沈静化も、お前の貢献度は計り知れない。国王陛下はじめ、王家がお前を認めているのだ。そしてお前には新しい話がある――」
「……何でしょうか?」
「去年、不幸なことに王太子妃様が疫病でお亡くなりになったな」
「はい。もちろん存じております」
「お前が王太子妃にならないかという話がきている」
私は耳を疑った。
「え……!? 私が王太子妃……?」
「私が夫を支えたことが、夫の仇になっていたということでしょうか?」
「それは違う。違うが……フィリップという男は想像以上に自尊心や支配心の強い男だったんだな。だからカフェで働く平民の女を連れてきたんだろう。哀れな男だ。さらなる高み、さらなる栄光に向けて歩む覚悟ができなかったんだな」
「お父様……私はどうすればよかったのでしょうか? 夫のしたいようにさせ、私自身は奥に引っ込んでいたらよかったのでしょうか?」
父は静かに首を横に振り、微笑みを浮かべた。
「お前は最高の仕事をした。外国との交渉も、疫病の沈静化も、お前の貢献度は計り知れない。国王陛下はじめ、王家がお前を認めているのだ。そしてお前には新しい話がある――」
「……何でしょうか?」
「去年、不幸なことに王太子妃様が疫病でお亡くなりになったな」
「はい。もちろん存じております」
「お前が王太子妃にならないかという話がきている」
私は耳を疑った。
「え……!? 私が王太子妃……?」
319
あなたにおすすめの小説
【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。
西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。
それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。
大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。
だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。
・・・なのに。
貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。
貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって?
愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。
そう、申し上げたら貴方様は―――
【完結】領地に行くと言って出掛けた夫が帰って来ません。〜愛人と失踪した様です〜
山葵
恋愛
政略結婚で結婚した夫は、式を挙げた3日後に「領地に視察に行ってくる」と言って出掛けて行った。
いつ帰るのかも告げずに出掛ける夫を私は見送った。
まさかそれが夫の姿を見る最後になるとは夢にも思わずに…。
「君を愛することはない」と言った夫と、夫を買ったつもりの妻の一夜
有沢楓花
恋愛
「これは政略結婚だろう。君がそうであるなら、俺が君を愛することはない」
初夜にそう言った夫・オリヴァーに、妻のアリアは返す。
「愛すること『は』ない、なら、何ならしてくださいます?」
お互い、相手がやけで自分と結婚したと思っていた夫婦の一夜。
※ふんわり設定です。
※この話は他サイトにも公開しています。
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。
貴方が要らないと言ったのです
藍田ひびき
恋愛
「アイリス、お前はもう必要ない」
ケヴィン・サージェント伯爵から一方的に離縁を告げられたアイリス。
彼女の実家の資金援助を目当てにした結婚だったため、財政が立て直された今では結婚を続ける意味がなくなったとケヴィンは語る。
屈辱に怒りを覚えながらも、アイリスは離縁に同意した。
しかしアイリスが去った後、伯爵家は次々と困難に見舞われていく――。
※ 他サイトにも投稿しています。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
〖完結〗私を捨てた旦那様は、もう終わりですね。
藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢だったジョアンナは、アンソニー・ライデッカーと結婚していた。
5年が経ったある日、アンソニーはいきなり離縁すると言い出した。理由は、愛人と結婚する為。
アンソニーは辺境伯で、『戦場の悪魔』と恐れられるほど無類の強さを誇っていた。
だがそれは、ジョアンナの力のお陰だった。
ジョアンナは精霊の加護を受けており、ジョアンナが祈り続けていた為、アンソニーは負け知らずだったのだ。
精霊の加護など迷信だ! 負け知らずなのは自分の力だ!
と、アンソニーはジョアンナを捨てた。
その結果は、すぐに思い知る事になる。
設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。
全10話で完結になります。
(番外編1話追加)
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。全て読ませて頂いております。ありがとうございます。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる