愛人のいる夫を捨てました。せいぜい性悪女と破滅してください。私は王太子妃になります。

Hibah

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王都に着いて街の人に話を聞くと、リーゼはもともと働いていた”カフェ”の常連客に刺されたとのことだった。正確には刺されたのではなく、刃物で顔を斬られて、血だらけになったそうだ。

王都警察がたくさんいるなか、私は知り合いの警察官のビリーを見つけた。
「ビリー、街の様子はどう?」

ビリーは私の姿を見て驚いた。
「カリーナ様じゃないですか! ご覧のとおり、街は騒然としています。犯人は捕縛済みですのでご安心ください。被害者のリーゼという女は性悪で有名なカフェ嬢ですが、今までは行方不明でいなかったんです……。突然現れたと思ったらこんな事件になるし……」

ビリーはリーゼが夫の愛人であることを知らないようだった。
私はあえてそのことを伝えずに、リーゼについて質問した。
「リーゼっていう女の人はどんな人なの?」

「私も詳しくありませんが、カフェ嬢というのは表の顔で、裏では犯罪者集団とつながりがあるようです。逮捕された男も犯罪者集団のうちの一人ですが、どうもリーゼに惚れていたみたいですね。リーゼはカタギの人間にもそうじゃない人間にも色目を使って金品をせしめていたそうです。相当恨まれていたのでしょう。よく王都に戻ってきたなという感じです」

リーゼは男たちを騙しすぎて街にいられなくなったんだわ。
最後の獲物が、うちの夫。
夫が言っていた『生活に困っている』というのは、文字通りリーゼが王都で生きていけないという意味だったのね。リーゼはなんとか夫をたぶらかして自分のものにし、屋敷に逃げ込んできた。夫はリーゼが犯罪者集団とつながっていることも知らずに、惚れた弱みにつけこまれた。あるいは利用されているとも知らずに、リーゼを手に入れた気になっていた……のかな。

「リーゼという人は、無事なの?」

「生きてはいるそうですが、顔を何度も斬られたそうです。もう顔をつかった商売はできないでしょうな。男の善意を利用して稼ぐ女の末路は悲しいものですね」

「そう……わかったわ。ありがとうねビリー」

「いえいえ! フィリップ様によろしくお伝えください!」

ビリーが世情に詳しくない人で助かった。
フィリップはもう私の夫ではない……。
そうか、ついくせで夫と言っていたけど、これからは元夫が正確な呼び方ね……。



私はその後王都を出て、ミシェルとともに実家へ帰った。
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