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エドガーは気持ちを切り替えて「かしこまりました」と答えた後、食堂の扉を開けて出ていった。なんのことはない。こうして出ていき、また頃合いを見て戻る。そして旦那様に報告するだけ。「奥様は本日体調が悪く、寝室から出られない」と。

クラリス亡き後、バーナード伯爵、エドガー、コルテオは食堂でともに食事をしていた。バーナード伯爵の希望だった。使用人として残した二人のことを、伯爵は家族同然に思っていた。

エドガーは屋敷の外を一周歩いた後、たばこを吸った。屋敷の外壁にもたれかかり、ゆっくりとたばこを味わいつつ、静かな夕暮れの空気を肺いっぱいに吸い込んだ。彼の目は薄雲にかかる三日月を見つめているが、心は過去にさまよっていた。

「クラリス様との日々は、まるで夢のようだった……」エドガーはぽつりとつぶやき、たばこの煙とともに、その思い出を空に送り出した。年老いた彼の細くなった心は、失われた時代への哀愁と混じり合い、淡い夕陽の光に溶けていった。



   ***



食堂に座るナタリーは、クラリスに会うのを楽しみにしていた。


「ねえコルテオ。奥様はどんな方なの? きっとお綺麗で、素敵な方なのでしょうね!」


ナタリーの声は夢見るように柔らかく、彼女の純粋な好奇心が空間を温かく包み込んだ。

目をキラキラさせてきいてくるナタリーに対し、コルテオは返事に困った。「うーん、そうだなあ」と間を持たせつつ、苦笑いとも困惑とも取れる表情を浮かべている。バーナード伯爵はまぶたを閉じ、祈りを捧げるかのようにたたずんでいる。急に沈黙した主人の姿が、コルテオにとって少し怖かった。


「うん。そりゃ奥様なのだからお綺麗さ。凛としてて、高貴な御方だよ」


ナタリーはうんうんと強くうなずき、天井を仰ぐ。想像が膨らんでいる。


「奥様はお花以外だと何が好きなの? 奥様がいらっしゃったらお花以外のこともたくさんお喋りしたいわ!」


コルテオはちらちらとバーナード伯爵の様子をうかがっていた。下手な答え方はできないと緊張しているのである。


「奥様は……料理が得意だよ。使用人たちに任せず、ご自身で厨房に立って、旦那様の食事を作ってる。あと、ピクニックが好き。お弁当や果物をバスケットに入れて、よく丘の上に行くんだ」


コルテオがこう言うと、バーナード伯爵は目を開けてコルテオを見つめた。
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