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小屋の扉のそばで、聞き耳を立てているライナス様がいた。私を見ると(こっちへ来て)と手招きした。
「どうしたのですかライナス様? なぜ入らないのですか? もう入ってもいい時間でしょう?」
クリフォード様とモニカはある一定の時間を決めて小屋を使用している。時間が過ぎれば入ってもいいことになっていた。
「しぃぃ! 声がでかい! 二人が話しているから、エリザベスも聞いてみてよ」
盗み聞きは気が進まなかったけど、ライナス様が真剣な面持ちで言ったので、扉に耳を当ててみた。
(クリフォード様とモニカの会話が聞こえる……)
『ねえクリフォード、いいでしょ? あたし、産みたいの。ずっとあたしたちの子どもがほしいねって言ってたじゃない? ようやく授かることができたのよ』
『そうだね……あまりにも突然のことで、びっくりしてしまってごめんよ。うん、産もう。僕たちの可愛いベイビーだ』
『ありがとうクリフォード! 大好き!』
『僕も愛しているよモニカ。……実はいい考えが浮かんだんだ。……ライナスが父上を暗殺しようとしているという噂があってね……』
(私の隣にいるライナスはぎょっとした顔をして、必死に首を振って否定している)
『まあ怖い! ライナスって優しそうな顔して危ない人なのね』
『そうなんだよモニカ。王族は誰一人信用しちゃいけないんだ。で、続きなんだけど、僕は最近毒薬を手に入れた。これを使って父上を毒殺し、罪はライナスにかぶってもらう。そうすれば僕は国王になれるし、目障りな第二王子もいなくなる。完璧だろ?』
『クリフォード、頭よすぎ! あたしは王妃になれるのね?』
『そのとおりだよ! 僕が法律を変える。国王は身分に関係なく王妃を選ぶことができる、とね。今の王太子妃のエリザベスも、離縁しておさらばさ。あの邪魔くさい女もいなくなるぞ!』
『なんて素敵! あたしとクリフォードはお城で子どもを育てるのね! もしかして……お菓子食べ放題?」
『お菓子も食べ放題だよ! 洋服だって好きな洋服をなんでも着られるぞ!』
『あ~~~ん、最高すぎるぅぅぅぅ~~~~!!!」
私は左耳を、ライナス様は右耳を扉に押し当てていた。お互いの顔を見合わせて(これはまずい)という感覚が繋がった気がする。
ライナス様は静かに扉から離れ、私をまた手招きした。二人で森の中に入った。
ライナス様が半笑いで言った。
「エリザベス、さっきの会話聞いたかい? とても信じられなくて、笑っちゃうね。俺が兄上のためにどれだけ貢献してきたと思ってるんだか」
「そうですね……。まさか子どもまでできてしまったとは……。このままだと、ライナス様も私も立場が危うくなってしまいます……」
ライナス様と同様、私もクリフォード様のために森へ帯同し、尽くしてきた。それはあくまで私が王太子妃でいられるからだ。王太子妃としての私を否定するのであれば、何のために私はがんばってきたというのか……。クリフォード様のことが……心底嫌いになった。偉そうに恋を語るクソ男め。裏切るのなら容赦しません……!
ライナス様は少し考えたあと、覚悟を決めたように言った。
「よし、俺に任せて!」
「どうしたのですかライナス様? なぜ入らないのですか? もう入ってもいい時間でしょう?」
クリフォード様とモニカはある一定の時間を決めて小屋を使用している。時間が過ぎれば入ってもいいことになっていた。
「しぃぃ! 声がでかい! 二人が話しているから、エリザベスも聞いてみてよ」
盗み聞きは気が進まなかったけど、ライナス様が真剣な面持ちで言ったので、扉に耳を当ててみた。
(クリフォード様とモニカの会話が聞こえる……)
『ねえクリフォード、いいでしょ? あたし、産みたいの。ずっとあたしたちの子どもがほしいねって言ってたじゃない? ようやく授かることができたのよ』
『そうだね……あまりにも突然のことで、びっくりしてしまってごめんよ。うん、産もう。僕たちの可愛いベイビーだ』
『ありがとうクリフォード! 大好き!』
『僕も愛しているよモニカ。……実はいい考えが浮かんだんだ。……ライナスが父上を暗殺しようとしているという噂があってね……』
(私の隣にいるライナスはぎょっとした顔をして、必死に首を振って否定している)
『まあ怖い! ライナスって優しそうな顔して危ない人なのね』
『そうなんだよモニカ。王族は誰一人信用しちゃいけないんだ。で、続きなんだけど、僕は最近毒薬を手に入れた。これを使って父上を毒殺し、罪はライナスにかぶってもらう。そうすれば僕は国王になれるし、目障りな第二王子もいなくなる。完璧だろ?』
『クリフォード、頭よすぎ! あたしは王妃になれるのね?』
『そのとおりだよ! 僕が法律を変える。国王は身分に関係なく王妃を選ぶことができる、とね。今の王太子妃のエリザベスも、離縁しておさらばさ。あの邪魔くさい女もいなくなるぞ!』
『なんて素敵! あたしとクリフォードはお城で子どもを育てるのね! もしかして……お菓子食べ放題?」
『お菓子も食べ放題だよ! 洋服だって好きな洋服をなんでも着られるぞ!』
『あ~~~ん、最高すぎるぅぅぅぅ~~~~!!!」
私は左耳を、ライナス様は右耳を扉に押し当てていた。お互いの顔を見合わせて(これはまずい)という感覚が繋がった気がする。
ライナス様は静かに扉から離れ、私をまた手招きした。二人で森の中に入った。
ライナス様が半笑いで言った。
「エリザベス、さっきの会話聞いたかい? とても信じられなくて、笑っちゃうね。俺が兄上のためにどれだけ貢献してきたと思ってるんだか」
「そうですね……。まさか子どもまでできてしまったとは……。このままだと、ライナス様も私も立場が危うくなってしまいます……」
ライナス様と同様、私もクリフォード様のために森へ帯同し、尽くしてきた。それはあくまで私が王太子妃でいられるからだ。王太子妃としての私を否定するのであれば、何のために私はがんばってきたというのか……。クリフォード様のことが……心底嫌いになった。偉そうに恋を語るクソ男め。裏切るのなら容赦しません……!
ライナス様は少し考えたあと、覚悟を決めたように言った。
「よし、俺に任せて!」
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