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会合の当日、約束の時間になったのでバイロンを呼んだ。
久しぶりにバイロンと話す。
「元気だった?」
バイロンは特に表情を変えることもなく、いつもの無表情といった感じである。
「はい。元気です。王太子妃様におかれましては、お元気そうでなによりです」
「そうね。ライナス様にお心遣い頂いて、なんとかやれているわ」
「さようでございますか」
「ききたいことがあるんだけど」
「答えられることであれば、何なりと」
「バイロンは……クリフォード様が命の恩人とは別の人と会っていることを知ってたわね?」
「……」
「言葉を変えましょうか。モニカが黒髪の女を亡きものにして、なりすましをしていた。この事実を知ってたわね?」
「……」
「答えてくれない……か。なんとなくわかっていたわ。ごめんね時間を取らせて。下がっていいわ」
バイロンはその場に立ったままだった。
「黒髪の女というのは……実は国王陛下の娘だったのです」
「……はい……?」
「陛下と平民の女との間に生まれた子が、黒髪の女だったのです」
「ということは、クリフォード様と黒髪の女は……同じ父親で……」
「さようでございます。腹違いの姉と弟です。黒髪の女は、自分の出生の秘密を知っていました。なので、弟に会えるのを楽しみにしていたのです。おそらくモニカには、クリフォード様が自分の弟であることは告げなかったのでしょう」
「ちょっと待ってバイロン……わからなくなってきた。川で溺れていたクリフォード様を助けたのは黒髪の女、で正しいの?」
「さようでございます。クリフォード様の城外教育のために当時用意した、選抜された平民のうちの一人でした」
「陛下はご存知だったの?」
「いえ、陛下は黒髪の女が自分の娘であることを知りません。陛下は一時期平民に熱を上げていたことがありました。そのときの女が身ごもってしまったのです。その女は陛下に黙って子を産みました。生まれた子が黒髪の女というわけです」
「バイロンが選抜したの?」
「いえ、担当ではありませんので。別の者です」
「あとから知った?」
「さようでございます。偶然でした」
「じゃあバイロン……あなたは陛下の秘密を守るために、黒髪の女の存在を隠蔽したのね」
「……はい」
国王陛下はクリフォード様と同じように、かつて平民を愛していたんだ。親子でそのようなところが似るなんて……業というやつなのかしら……。国王陛下はどんな気持ちで、クリフォード様の死を見届けたのだろう。自分もああなっていたかもしれないと思ったのだろうか。それとも、息子のことが可哀想でしかたなかったのだろうか。
「もしクリフォード様が黒髪の女と会えていたら、あの小屋を使って逢瀬を重ねることもなかったかもしれない……?」
「……そうかもしれません。姉弟なのですから」
紅茶を口につけたけど、すっかり冷えてしまっていた。
私はしばらく目を瞑った。
「最後にもう一つ、知りたいことがあるわ」
久しぶりにバイロンと話す。
「元気だった?」
バイロンは特に表情を変えることもなく、いつもの無表情といった感じである。
「はい。元気です。王太子妃様におかれましては、お元気そうでなによりです」
「そうね。ライナス様にお心遣い頂いて、なんとかやれているわ」
「さようでございますか」
「ききたいことがあるんだけど」
「答えられることであれば、何なりと」
「バイロンは……クリフォード様が命の恩人とは別の人と会っていることを知ってたわね?」
「……」
「言葉を変えましょうか。モニカが黒髪の女を亡きものにして、なりすましをしていた。この事実を知ってたわね?」
「……」
「答えてくれない……か。なんとなくわかっていたわ。ごめんね時間を取らせて。下がっていいわ」
バイロンはその場に立ったままだった。
「黒髪の女というのは……実は国王陛下の娘だったのです」
「……はい……?」
「陛下と平民の女との間に生まれた子が、黒髪の女だったのです」
「ということは、クリフォード様と黒髪の女は……同じ父親で……」
「さようでございます。腹違いの姉と弟です。黒髪の女は、自分の出生の秘密を知っていました。なので、弟に会えるのを楽しみにしていたのです。おそらくモニカには、クリフォード様が自分の弟であることは告げなかったのでしょう」
「ちょっと待ってバイロン……わからなくなってきた。川で溺れていたクリフォード様を助けたのは黒髪の女、で正しいの?」
「さようでございます。クリフォード様の城外教育のために当時用意した、選抜された平民のうちの一人でした」
「陛下はご存知だったの?」
「いえ、陛下は黒髪の女が自分の娘であることを知りません。陛下は一時期平民に熱を上げていたことがありました。そのときの女が身ごもってしまったのです。その女は陛下に黙って子を産みました。生まれた子が黒髪の女というわけです」
「バイロンが選抜したの?」
「いえ、担当ではありませんので。別の者です」
「あとから知った?」
「さようでございます。偶然でした」
「じゃあバイロン……あなたは陛下の秘密を守るために、黒髪の女の存在を隠蔽したのね」
「……はい」
国王陛下はクリフォード様と同じように、かつて平民を愛していたんだ。親子でそのようなところが似るなんて……業というやつなのかしら……。国王陛下はどんな気持ちで、クリフォード様の死を見届けたのだろう。自分もああなっていたかもしれないと思ったのだろうか。それとも、息子のことが可哀想でしかたなかったのだろうか。
「もしクリフォード様が黒髪の女と会えていたら、あの小屋を使って逢瀬を重ねることもなかったかもしれない……?」
「……そうかもしれません。姉弟なのですから」
紅茶を口につけたけど、すっかり冷えてしまっていた。
私はしばらく目を瞑った。
「最後にもう一つ、知りたいことがあるわ」
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