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コルテオが王国展覧会の絵を応募してからまもなく、セバスチャンによる調査の結果が出た。ヴァネッサについてである。

季節は、木々の若葉がそよ風に吹かれる初夏となっていた。

セバスチャンがベランジェールに報告する。


「ベランジェール様。報告申し上げます。コルテオの恋人のヴァネッサという女性についてです。籍は入れていないものの、彼女には同棲している男がおりまして、名前はアランといいます。組合に所属し、大工の親方として働いております。二人は首都にある粗末な長屋に住んでいます」


「え、それってどういうこと? コルテオはヴァネッサの浮気相手だってこと?」


「いえ、事態は単純ではありませんでした。アランという男がヴァネッサに指示を出し、芸術家を中心に誘惑しているのです。目的は支援金です。それぞれの芸術家が出せるギリギリの金額をヴァネッサに搾取させています。ヴァネッサはモデルと自称していますが、コレクションに出るようなモデルではなく、限定的な範囲でしか活動しておりません」


「ふむ……じゃあコルテオにはその点でも嘘をついているってことね。コルテオ以外で、私が支援している画家も被害に合ってるの?」


「幸いにも、他の画家に被害は及んでおりません。コルテオだけが、なぜか奥様の権力範囲内にいるにもかかわらず対象とされてしまったようです」


「コルテオのような無名画家なんか気にしていないとでも言いたげね。失礼しちゃう。次の展覧会できっとあの子の真価が発揮されるわ。……さて、それにしても……ひどいやつらね……。コルテオはヴァネッサのことを真剣に考えているというのに、かわいそう……。組織だった犯行かしら?」


「いえ。組織ではなく、あくまでアランという一人の男の入れ知恵でヴァネッサが動いているだけです。彼らにとって副業感覚と言ってもよいでしょう。支援金支給日の翌日にヴァネッサはコルテオを訪ね、90フラン持って行くようです。おそらく婚約についても、ヴァネッサはコルテオに話を合わせているだけです。実際には、お金目的でしかありません」


「なるほどね。ヴァネッサも、アランという男もいい度胸をしているわね。伯爵領で伯爵夫人に喧嘩を売るなんて」


「ヴァネッサは……アランに惚れているようですが、同時に恐怖心も抱いているようです。アランと一緒にいたくて、彼の言いなりになっていると見えています。アランはヴァネッサの弱みにつけこみ、利用しているのです」


「どうしましょうかね……」


ベランジェールにとっての関心事は、あくまでコルテオの芸術家としての大成である。コルテオの芸術活動が上手くいくなら放っておいてもよいものの、不純なやつらに高いモデル料を払うのは癪に障る。ヴァネッサとアランを秘密裏に排除することは可能だが、そうするとコルテオは突然意味もわからないまま最愛の人を失ってしまう。それが芸術活動のプラスになるかどうか……。


悩んだ末にベランジェールはひとまず様子を見ることにした。

しかし、コルテオとヴァネッサの間にはさらに事件が起きていく。
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