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最終話

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私はアルバートの目をじっと見た。
嘘じゃなさそうだった。

「どうして、断ったの?」

「別にユリアのことは……たしかに楽譜を貸してもらったとかはあるけど……ただそれだけだよ。恋愛とかじゃない」

「ちがう。アルバートはユリアに恋してた。目がそう言ってた」

「俺が好きじゃないって言ってんだから好きじゃないの! ユリアなんて何とも思っていない。ただの友達」

「わからないわ」

「そうだね、俺だってわからないよ。ユリアに楽譜を借りて、ユリアと目が合うようになって、そうすると俺は……シャーロットが好きなんだって気持ちに気づかされたんだ」

「それは……友達として? 私たちの関係って……何なの?」

「俺はシャーロットのことが好きだ。ユリアに告白された昨日も、ずっとシャーロットが頭から離れなかった。もしシャーロットと過ごせないときが来るなら、そんなの耐えられない。そう思って、今日はシャーロットの家まで行ったんだ」

「嬉しい……私もずっとアルバートが好きだったのよ」

私はアルバートの腕に抱かれながら、口づけをした。

アルバートの”特別”だった私はこの日から、アルバートのただの恋人になった。”特別”がつかなくても、それは特別なものだった。クレメント家との会から飛び出してきてよかった。両親からしてみると、私の初めての自己主張だったと思う。私は、望まない運命から逃れることができた。行動としては逃避だったかもしれないけど、逃避しなければアルバートと結ばれることもなかった。本当に望むものを手に入れるためには、何も持っていないという状態も、必要なのかもしれない――。

ユリアはアルバートにフラれたショックでしばらく引きこもり生活を続けていた。ユリアの精神状態を懸念した王家は婚約の話をなかったことにし、ユリアには何も手に入らなかった。


私とアルバートには多くの困難があったけど、無事に婚約を果たしたのだった。
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