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第四部 礼子(れいこ)と秋穂(あきほ)
第七章 眼差しが
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熱い。
そう、感じた。
正さんを見送るために近寄ると振り向いた眼差しから熱い視線が送られたからだ。
同時に私の中にもむず痒い想いが沸き上がる。
玄関の土間が低くて四年前の身長に息子が戻っている印象に、初めて出会った瞬間が思い出された。
正さんも同じ気持ちなのか、ジッと見つめたまま何か決意したように喉を上下させた。
「母さん・・・」
「はい・・・」
呼びかけに返した私の声がため息のように掠れる。
息子の真剣な表情に圧倒されていたから。
その顔は12歳の頃の彼ではない。
視線の高さから少年と錯覚していたのが一気に大人びた男に変わっていた。
「好きです・・・」
「あぁ・・・」
告げられた瞬間、あまりにも切なくて息を漏らした。
ずっと待っていた気がしたから。
無理に避けようとしていたけど、私は知っていた。
息子の気持ちも、自分の想いも。
そう、私は知っていた。
息子が、正さんが私を好きだという事を。
なぜなら、私も同じだから。
ずっと、ずっと好きだった。
息子なのに。
母なのに。
でも。
止められない。
息子でも。
母でも。
好きなの。
愛しているの。
フッと口元を綻ばせた。
ようやく自分の気持ちに気づいたから。
私は息を整えると正さんを見つめ直した。
眼差しから熱さは消えていない。
「わたしも・・・」
玄関に声が響いていく。
「好きです・・・」
短い言葉だったが、二人の胸に刻み込むには十分であった。
「母さん・・・」
正さんが胸に顔を摺り寄せ囁く。
「ただしさん・・・」
愛する名を呼びながらそっと頬を撫でた。
「母さん・・・」
「ただしさん・・・」
もう一度名前を呼び合うと私は両腕をまわし、愛しい息子をギュッとした。
若い汗の匂いが心地よく鼻孔をくすぐる。
温もりを感じながら広くなった背中に成長した男を感じるのでした。
そう、感じた。
正さんを見送るために近寄ると振り向いた眼差しから熱い視線が送られたからだ。
同時に私の中にもむず痒い想いが沸き上がる。
玄関の土間が低くて四年前の身長に息子が戻っている印象に、初めて出会った瞬間が思い出された。
正さんも同じ気持ちなのか、ジッと見つめたまま何か決意したように喉を上下させた。
「母さん・・・」
「はい・・・」
呼びかけに返した私の声がため息のように掠れる。
息子の真剣な表情に圧倒されていたから。
その顔は12歳の頃の彼ではない。
視線の高さから少年と錯覚していたのが一気に大人びた男に変わっていた。
「好きです・・・」
「あぁ・・・」
告げられた瞬間、あまりにも切なくて息を漏らした。
ずっと待っていた気がしたから。
無理に避けようとしていたけど、私は知っていた。
息子の気持ちも、自分の想いも。
そう、私は知っていた。
息子が、正さんが私を好きだという事を。
なぜなら、私も同じだから。
ずっと、ずっと好きだった。
息子なのに。
母なのに。
でも。
止められない。
息子でも。
母でも。
好きなの。
愛しているの。
フッと口元を綻ばせた。
ようやく自分の気持ちに気づいたから。
私は息を整えると正さんを見つめ直した。
眼差しから熱さは消えていない。
「わたしも・・・」
玄関に声が響いていく。
「好きです・・・」
短い言葉だったが、二人の胸に刻み込むには十分であった。
「母さん・・・」
正さんが胸に顔を摺り寄せ囁く。
「ただしさん・・・」
愛する名を呼びながらそっと頬を撫でた。
「母さん・・・」
「ただしさん・・・」
もう一度名前を呼び合うと私は両腕をまわし、愛しい息子をギュッとした。
若い汗の匂いが心地よく鼻孔をくすぐる。
温もりを感じながら広くなった背中に成長した男を感じるのでした。
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