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中学生編
娘vs運命(3)
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十二月二四日──終業式。今夜はクリスマスイブで明日はクリスマス。そして冬休みの始まり。
年末年始はまた夏ノ日家も遊びに来る。さおちゃん達とも出かける予定。小梅ちゃんは受験目前で流石に誘えないけど、勉強会はいつも通りやることになっている。
校長先生の長いお話が終わった。しきりにうんうんと頷いていた私を見て隣の小嶋君が感心する。
「大塚さん、真面目に話を聞いててすごいね」
「ためになるじゃん」
「そう?」
「そうだよ、人生の先輩だからね」
聞き流してちゃもったいないって。まあ、今回はもう終わっちゃったけど。
「ふうん……なら、次はしっかり聞いておこうかな」
「うん、まだ一年以上あるしね」
来年はいよいよ私達も受験生。ますます気を引き締めて頑張らなくちゃ。私も気合いを入れ直した。
教室で先生から休み中の注意事項を聞いて二学期終了。いよいよ冬休みに突入。
カバンを手に取ると、早速さおちゃんが近付いてきた。
「あゆゆ、一緒に帰ろう」
「うん」
二人一緒に教室を出る。すると廊下にいた木村と目が合った。
「よう、またな」
「うん、またね」
そんな軽い挨拶を交わして離れる。するとさおちゃんが首を傾げた。
「最近あいつおかしくない?」
「え?」
「なんか、妙にあっさりしてるって言うか……」
「そうかな?」
前からあんなもんじゃなかった? 小四の時にクラスが別々になって以来、どこかよそよそしくなった。それでも一ヶ月前のうちの双子の誕生会みたいに遊びに来ることはあるけれど。
靴箱から外履きを取り出し、内履きは持って来た袋の中へ。部活があるから冬休み中も学校には来るけど、たまには洗わないと。臭くなっちゃう。
「ところでさおちゃんさ、明日だけど──」
遊びに行く予定を改めて確認したい。そう思って、すぐそこにいるはずのさおちゃんに話しかけた。
でも、誰もいなかった。
「あれ?」
いつの間に……先に出て行っちゃった?
慌てて外履きに履き替え、玄関から外へ出る。
でも、そこにさおちゃんの姿は無かった。
いや、それどころか──
「……なんで?」
誰もいない。ついさっきまで大勢周りにいたのに、今は一人も見当たらない。
忘れかけていた不気味な感覚。得体の知れない圧迫感が蘇って来る。
「さおちゃん、さおちゃんっ!?」
校庭を走り回って探してみたけど、やっぱりいない。校門の外も無人。振り返って校舎を見ると、窓の向こうにもやはり人影は見当たらなかった。さっき木村が立っていた場所にも。
「なんだよこれ? どうなってんのさ!?」
まさか街も? 恐ろしくなった私は家に向かって走り出した。
カガミヤ本社ビル最上階。
「消えただと!? どういうことだ!」
電話越しに報告を受けた私は、思わず部下を怒鳴りつけてしまった。
『申し訳ございません、監視対象Aは校舎内で突然消失。一緒にいた友人と目撃者数名が取り乱してしまい、現在教師に報告しています。突拍子も無い話のため信じてもらえてはいません』
それはそうだ。目の前で人間が消えたなどと言われても常識人には信じられない。
『もっとも、保護者に連絡が入れば事態は明るみに出るかと』
「少しでいい、警察の出動は遅らせろ。今から私達が出向いて直接ご両親と話す」
『かしこまりました』
通話を切る。それからスマホを取り出し時雨に連絡を取った。こんなこともあろうかと待機させておいたおかげですぐに駆けつけて来る。
「歩美ちゃんが消えたですって!?」
「嫌な予感が当たった。思った以上に特異点化の進行は早かったらしい」
数ヶ月前、目の前にいる時雨が大塚家を訪れた時から目に見える形での顕在化を始めた異変。
大塚 歩美は今、この世界の歴史に大きな影響を与える存在になろうとしている。
この神隠しはおそらく、その始まり。
「だが、させはしない」
何者の意思かは知らん。そんなことはどうでもいい。歩美を勝手に特異点になどされてたまるか。絶対に阻止してやる。雨道の遺志を無駄にはさせん。
「まずは学校まで行くぞ。現場検証をして、それから大塚家のご両親に説明だ。念の為に玲瓏も持って来い」
「はい!」
可愛い姪っ子をさらわれた時雨の目は、私以上にギラついていた。
「歩美が行方不明?」
「そんな……友達と遊びに行ったわけではないんですか?」
顔面蒼白で問い返してくる麻由美さん。急いで市役所から戻って来てくれた大塚さんも流石にうろたえている。
「その可能性もあります。なので、今は落ち着いて、お二人にはここで待っていて欲しいのです」
場所は大塚家。以前のようにちゃぶ台を挟んで座った私達。雫さんの要請に、ご両親は納得いかない表情。
「歩美は我等の娘です」
「そうです、私達も捜します!」
「それはプロに任せてください」
待ったをかけたのは刑事さん。さらに二名の警察官が後ろに控えている。
「状況がまだはっきりしていません。お嬢さんの友人達が突然目の前で消えたと騒いでるだけです。連絡が取れないことから我々も事件性ありと判断して動きましたが、まだ誘拐だと確定したわけではない。
もちろん可能性は考えられる。だからご両親にはここにいて欲しいのです。もし本当に誘拐で犯人から要求が来るとしたなら、ここの固定電話かお二人の携帯電話にでしょう」
「むう……」
「な、なるほど……」
ようやく納得してくれた二人。それを確認した私達は立ち上がる。まずは雫さんから声をかけた。
「代わりに我々が捜しに出ます。社の者達にも動員をかけておりますので、吉報をお待ち下さい」
「必ず見つけてきます」
「お願いします」
「お頼み申す」
震えながら頭を下げられた。ああ、今さらながらに心が痛む。
雨道君が亡くなる原因になったあの事件──直前、私は同じように数日行方を眩ませてしまった。
あの時も、こんな風に皆に心配をかけてしまったのだろう。これが終わったら育ての母と実家の両親に改めて謝ろうと思った。養父のお墓にも頭を下げないとな。
歩美、君にはそんな真似させないからね。
家を出たところで雫さんに背を叩かれる。
「安心しろ、心強い助っ人が来る」
「えっ、では」
「ああ、ギリギリのタイミングだが間に合った。夏ノ日夫妻が車でお連れするそうだ」
──直後、その二人の車が角を曲がって現れた。大塚家の前で停まり、先に美樹さんと友也さんが降車する。
「お待たせ!」
「お連れしました!」
そして後部座席からは久しぶりに見るお姿が現れた。
彼女は青い瞳で私を見つめ、穏やかに笑む。
「お久しぶりですね、時雨さん」
「鈴蘭様!」
「……誰もいない」
もう何時間も歩き通し。疲れた私は近くにあったベンチに腰掛ける。
「どうなってるんだよ……」
まるで悪い夢。街はどこへ行っても無人で、挙句それ以上におかしなことになっている。
いつも通りの道を歩いたはずなのに、全く知らない場所に出た。我が家に着くどころか、今いるこの場所がどこなのかもわからない。見覚えのない建物ばかりで、少なくとも普段住んでいる場所ではないと思う。
「電話も通じないし……」
電波はずっと圏外。悪いと思いつつそのへんの建物に入って固定電話を借りてみたりもしたけど全て不通。駅前で見つけた公衆電話さえ繋がらなかった。
そしてやっぱり誰もいない。だから自力でどうにかするしかない。挫けるな──自分に言い聞かせて、また立ち上がる。歩き出す。こんな時にこそ聴きたいあの声は、あれ以来全く聴こえて来ない。
やがて、ようやく見慣れた街並みへ迷い込んだ。
でも、ここって──
「パパの……」
パパの実家の近所だ。どうして? 車でだって三時間はかかる距離なのに。
うろ覚えの道順を辿ると、思った通りパパの実家・浮草家があった。
「おじいちゃん、おばあちゃん?」
中へ入ってみる。鍵はかかっていなかった。そして──
『そんな、どうして……』
『仕方ないんだ、どちらかを……』
話し声が聞こえた。いる! そう思って靴を脱ぎ、中へ入った私は、居間で祖父母の姿を見つける。
でも違う。一瞬でわかった。私の知ってる二人よりずっと若い。
腕の中には赤ん坊が一人ずつ。
「まさか……」
『ごめん、ごめんね雨道、時雨……』
何度も謝るおばあちゃん。その涙がぽたぽたと赤ん坊だった頃のパパと時雨さんの顔に落ちた。
年末年始はまた夏ノ日家も遊びに来る。さおちゃん達とも出かける予定。小梅ちゃんは受験目前で流石に誘えないけど、勉強会はいつも通りやることになっている。
校長先生の長いお話が終わった。しきりにうんうんと頷いていた私を見て隣の小嶋君が感心する。
「大塚さん、真面目に話を聞いててすごいね」
「ためになるじゃん」
「そう?」
「そうだよ、人生の先輩だからね」
聞き流してちゃもったいないって。まあ、今回はもう終わっちゃったけど。
「ふうん……なら、次はしっかり聞いておこうかな」
「うん、まだ一年以上あるしね」
来年はいよいよ私達も受験生。ますます気を引き締めて頑張らなくちゃ。私も気合いを入れ直した。
教室で先生から休み中の注意事項を聞いて二学期終了。いよいよ冬休みに突入。
カバンを手に取ると、早速さおちゃんが近付いてきた。
「あゆゆ、一緒に帰ろう」
「うん」
二人一緒に教室を出る。すると廊下にいた木村と目が合った。
「よう、またな」
「うん、またね」
そんな軽い挨拶を交わして離れる。するとさおちゃんが首を傾げた。
「最近あいつおかしくない?」
「え?」
「なんか、妙にあっさりしてるって言うか……」
「そうかな?」
前からあんなもんじゃなかった? 小四の時にクラスが別々になって以来、どこかよそよそしくなった。それでも一ヶ月前のうちの双子の誕生会みたいに遊びに来ることはあるけれど。
靴箱から外履きを取り出し、内履きは持って来た袋の中へ。部活があるから冬休み中も学校には来るけど、たまには洗わないと。臭くなっちゃう。
「ところでさおちゃんさ、明日だけど──」
遊びに行く予定を改めて確認したい。そう思って、すぐそこにいるはずのさおちゃんに話しかけた。
でも、誰もいなかった。
「あれ?」
いつの間に……先に出て行っちゃった?
慌てて外履きに履き替え、玄関から外へ出る。
でも、そこにさおちゃんの姿は無かった。
いや、それどころか──
「……なんで?」
誰もいない。ついさっきまで大勢周りにいたのに、今は一人も見当たらない。
忘れかけていた不気味な感覚。得体の知れない圧迫感が蘇って来る。
「さおちゃん、さおちゃんっ!?」
校庭を走り回って探してみたけど、やっぱりいない。校門の外も無人。振り返って校舎を見ると、窓の向こうにもやはり人影は見当たらなかった。さっき木村が立っていた場所にも。
「なんだよこれ? どうなってんのさ!?」
まさか街も? 恐ろしくなった私は家に向かって走り出した。
カガミヤ本社ビル最上階。
「消えただと!? どういうことだ!」
電話越しに報告を受けた私は、思わず部下を怒鳴りつけてしまった。
『申し訳ございません、監視対象Aは校舎内で突然消失。一緒にいた友人と目撃者数名が取り乱してしまい、現在教師に報告しています。突拍子も無い話のため信じてもらえてはいません』
それはそうだ。目の前で人間が消えたなどと言われても常識人には信じられない。
『もっとも、保護者に連絡が入れば事態は明るみに出るかと』
「少しでいい、警察の出動は遅らせろ。今から私達が出向いて直接ご両親と話す」
『かしこまりました』
通話を切る。それからスマホを取り出し時雨に連絡を取った。こんなこともあろうかと待機させておいたおかげですぐに駆けつけて来る。
「歩美ちゃんが消えたですって!?」
「嫌な予感が当たった。思った以上に特異点化の進行は早かったらしい」
数ヶ月前、目の前にいる時雨が大塚家を訪れた時から目に見える形での顕在化を始めた異変。
大塚 歩美は今、この世界の歴史に大きな影響を与える存在になろうとしている。
この神隠しはおそらく、その始まり。
「だが、させはしない」
何者の意思かは知らん。そんなことはどうでもいい。歩美を勝手に特異点になどされてたまるか。絶対に阻止してやる。雨道の遺志を無駄にはさせん。
「まずは学校まで行くぞ。現場検証をして、それから大塚家のご両親に説明だ。念の為に玲瓏も持って来い」
「はい!」
可愛い姪っ子をさらわれた時雨の目は、私以上にギラついていた。
「歩美が行方不明?」
「そんな……友達と遊びに行ったわけではないんですか?」
顔面蒼白で問い返してくる麻由美さん。急いで市役所から戻って来てくれた大塚さんも流石にうろたえている。
「その可能性もあります。なので、今は落ち着いて、お二人にはここで待っていて欲しいのです」
場所は大塚家。以前のようにちゃぶ台を挟んで座った私達。雫さんの要請に、ご両親は納得いかない表情。
「歩美は我等の娘です」
「そうです、私達も捜します!」
「それはプロに任せてください」
待ったをかけたのは刑事さん。さらに二名の警察官が後ろに控えている。
「状況がまだはっきりしていません。お嬢さんの友人達が突然目の前で消えたと騒いでるだけです。連絡が取れないことから我々も事件性ありと判断して動きましたが、まだ誘拐だと確定したわけではない。
もちろん可能性は考えられる。だからご両親にはここにいて欲しいのです。もし本当に誘拐で犯人から要求が来るとしたなら、ここの固定電話かお二人の携帯電話にでしょう」
「むう……」
「な、なるほど……」
ようやく納得してくれた二人。それを確認した私達は立ち上がる。まずは雫さんから声をかけた。
「代わりに我々が捜しに出ます。社の者達にも動員をかけておりますので、吉報をお待ち下さい」
「必ず見つけてきます」
「お願いします」
「お頼み申す」
震えながら頭を下げられた。ああ、今さらながらに心が痛む。
雨道君が亡くなる原因になったあの事件──直前、私は同じように数日行方を眩ませてしまった。
あの時も、こんな風に皆に心配をかけてしまったのだろう。これが終わったら育ての母と実家の両親に改めて謝ろうと思った。養父のお墓にも頭を下げないとな。
歩美、君にはそんな真似させないからね。
家を出たところで雫さんに背を叩かれる。
「安心しろ、心強い助っ人が来る」
「えっ、では」
「ああ、ギリギリのタイミングだが間に合った。夏ノ日夫妻が車でお連れするそうだ」
──直後、その二人の車が角を曲がって現れた。大塚家の前で停まり、先に美樹さんと友也さんが降車する。
「お待たせ!」
「お連れしました!」
そして後部座席からは久しぶりに見るお姿が現れた。
彼女は青い瞳で私を見つめ、穏やかに笑む。
「お久しぶりですね、時雨さん」
「鈴蘭様!」
「……誰もいない」
もう何時間も歩き通し。疲れた私は近くにあったベンチに腰掛ける。
「どうなってるんだよ……」
まるで悪い夢。街はどこへ行っても無人で、挙句それ以上におかしなことになっている。
いつも通りの道を歩いたはずなのに、全く知らない場所に出た。我が家に着くどころか、今いるこの場所がどこなのかもわからない。見覚えのない建物ばかりで、少なくとも普段住んでいる場所ではないと思う。
「電話も通じないし……」
電波はずっと圏外。悪いと思いつつそのへんの建物に入って固定電話を借りてみたりもしたけど全て不通。駅前で見つけた公衆電話さえ繋がらなかった。
そしてやっぱり誰もいない。だから自力でどうにかするしかない。挫けるな──自分に言い聞かせて、また立ち上がる。歩き出す。こんな時にこそ聴きたいあの声は、あれ以来全く聴こえて来ない。
やがて、ようやく見慣れた街並みへ迷い込んだ。
でも、ここって──
「パパの……」
パパの実家の近所だ。どうして? 車でだって三時間はかかる距離なのに。
うろ覚えの道順を辿ると、思った通りパパの実家・浮草家があった。
「おじいちゃん、おばあちゃん?」
中へ入ってみる。鍵はかかっていなかった。そして──
『そんな、どうして……』
『仕方ないんだ、どちらかを……』
話し声が聞こえた。いる! そう思って靴を脱ぎ、中へ入った私は、居間で祖父母の姿を見つける。
でも違う。一瞬でわかった。私の知ってる二人よりずっと若い。
腕の中には赤ん坊が一人ずつ。
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