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千姫ルート 上海要塞防衛戦3
狙撃兵の価値(エロ度☆☆☆☆☆)
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狙撃兵・雑賀孫六は基次から待ちに待った命令が下され、胸を躍らせた。
ようやく自分達狙撃兵の実力を試せることに。
「・・・・・・落ち着け、逸るな。昂揚は手元を狂わせる」
スゥーッと一つ息を大きく吸い、荒くなっていた呼吸を落ち着ける。
「先ずは、あの部隊長だ」
既に決まりきった動作と手順で、照準を1人の明兵の頭に合わせる。
的を視認し、呼吸を整え、息を吸い込みながら遠眼鏡を覗き込み、そのまま十字を男の頭に合わせる。
必死に明兵の混乱を沈めようと叫び声をあげる男に。
「ど真ん中にくれてやる」
人を撃つのは初めて。
おそらく、一瞬後にこの遠眼鏡に映るのは、血飛沫を上げて絶命するその男の姿。
「恨みはないが、これも戦よ!」
息を止め、引き金に指をかける。
「・・・・・・南無」
そして、引く。
ターンという、他の火縄銃よりもどこか鋭く軽い発砲音で遠眼鏡の先が赤く染まる。
「次」
敵が死んだかどうかは確認するまでもない。
だいたい、殺すべき敵はまだまだいる。
弾込めは補助の者に任せ、次の銃を受け取る。
前装砲は装弾に時間がかかるので、銃ごと取り換えるのだ。
人を殺した感慨など今は考えはしない。
ただ正確な狙撃をするための部品へと己を変える。
「迷わずにあの世へ逝けよ」
同じ動作、同じ息遣いで次の男を撃つ。
その男の周りで少しだけ回復しかけていた混乱は一層の混迷を増す。
おそらく、明兵の混乱はまだまだ回復しないだろう。
「他の狙撃兵も上手くいっているようだな」
「ええ。ですが、我らの存在はまだ悟られるわけにもまいりません。あと5人ほどと制限もかけられておりますので、より優秀そうな者を狙いましょう」
「ああ。・・・・・・次はあいつだ」
混乱が収まりそうになっている場所を探し、その中で指揮している者。
多くの歩兵の中で騎馬に乗っているので、見分けは付きやすい。
「・・・・・・む、少し遠いな」
「あの者、ですか。8町(約800m、1町=109.09m)も先ですな」
「ちょうど良い。狙撃の神髄はより遠くの敵を殺すことだ」
また、同じ動作、同じ息遣いで照準を合わせる。
先程までより倍以上の距離。
的も当然距離に合わせて小さく映る。
弾も外れやすくなる。
人の頭ほどの大きさの的を狙うのならば、現状で9町が限界。
10町では当たるも八卦当たらぬも八卦。
だが、射程内の8町と言えど、動くものを狙うなら当然外れる確率も上がる。
少し緊張しているのが分かり孫六は落ち付く様にと一つ深呼吸をする。
まだたかが3人。
ただし、いずれもが恩賞に値する者達。
単純に兵を多く殺すのとは、意味合いが大きく異なる。
実際、明軍とて兵は多くいても将は多いわけではない。
長く戦闘が無かった明では部隊長もほとんどが文官。
その中で本当に兵を指揮しうるものなどどれだけがいるだろうか。
「・・・・・・動くな。止まれ、止ま――」
その男の息遣いまで見えるほどに集中した孫六には、動きが止まる頃合いですら手に取るように分かる。
それに合わせて銃身をブラさない様に、力を入れずに引き金を引く。
「これで3人。あと2人、か」
無心で撃つからか、どうにも手ごたえがないからか、予想以上に罪悪感はない。
ただ、確実に殺している。
その証拠に頭を打たれた男たちはピクリとも動かない。
「恨むなら戦場に出てきた自分を恨みな」
あと2人。
より大物を狙うのなら、後方で指示を出す者の方が良いはず。
そうすれば先程の8町を越えることもあるだろう。
「9町以上先を狙ったことはない、が・・・・・・」
今日なら出来そうな気がする。
「おい。最初の銃を寄越せ」
孫六が代えながら使う新式銃は3丁。
とはいえ、微妙な誤差なのかもっとも長距離での収束が良いものは最初に使った1丁。
「・・・・・・隊長? 10町以上はありますよ!?」
補助の者が孫六の銃身の向きからその狙いに気付いたのだろう。
「ああ。だから当たれば新記録だな。しっかり観測していろよ」
9町以上先を狙ったことがないのは、弾の収束がひどく悪くなるからだ。
その状態で頭を狙うことなんて出来ない。
それでも、今なら外れる気がしなかった。
放たれた銃弾は吸い込まれるように哀れな男の頭を抉る。
こうして、狙撃兵たちの初陣が終わる。
戦果は敵兵50人ほど。
その多くは100人将ほどの小規模の部隊長であったが、中には都から派遣された将軍級の首も一つだけあった。
ようやく自分達狙撃兵の実力を試せることに。
「・・・・・・落ち着け、逸るな。昂揚は手元を狂わせる」
スゥーッと一つ息を大きく吸い、荒くなっていた呼吸を落ち着ける。
「先ずは、あの部隊長だ」
既に決まりきった動作と手順で、照準を1人の明兵の頭に合わせる。
的を視認し、呼吸を整え、息を吸い込みながら遠眼鏡を覗き込み、そのまま十字を男の頭に合わせる。
必死に明兵の混乱を沈めようと叫び声をあげる男に。
「ど真ん中にくれてやる」
人を撃つのは初めて。
おそらく、一瞬後にこの遠眼鏡に映るのは、血飛沫を上げて絶命するその男の姿。
「恨みはないが、これも戦よ!」
息を止め、引き金に指をかける。
「・・・・・・南無」
そして、引く。
ターンという、他の火縄銃よりもどこか鋭く軽い発砲音で遠眼鏡の先が赤く染まる。
「次」
敵が死んだかどうかは確認するまでもない。
だいたい、殺すべき敵はまだまだいる。
弾込めは補助の者に任せ、次の銃を受け取る。
前装砲は装弾に時間がかかるので、銃ごと取り換えるのだ。
人を殺した感慨など今は考えはしない。
ただ正確な狙撃をするための部品へと己を変える。
「迷わずにあの世へ逝けよ」
同じ動作、同じ息遣いで次の男を撃つ。
その男の周りで少しだけ回復しかけていた混乱は一層の混迷を増す。
おそらく、明兵の混乱はまだまだ回復しないだろう。
「他の狙撃兵も上手くいっているようだな」
「ええ。ですが、我らの存在はまだ悟られるわけにもまいりません。あと5人ほどと制限もかけられておりますので、より優秀そうな者を狙いましょう」
「ああ。・・・・・・次はあいつだ」
混乱が収まりそうになっている場所を探し、その中で指揮している者。
多くの歩兵の中で騎馬に乗っているので、見分けは付きやすい。
「・・・・・・む、少し遠いな」
「あの者、ですか。8町(約800m、1町=109.09m)も先ですな」
「ちょうど良い。狙撃の神髄はより遠くの敵を殺すことだ」
また、同じ動作、同じ息遣いで照準を合わせる。
先程までより倍以上の距離。
的も当然距離に合わせて小さく映る。
弾も外れやすくなる。
人の頭ほどの大きさの的を狙うのならば、現状で9町が限界。
10町では当たるも八卦当たらぬも八卦。
だが、射程内の8町と言えど、動くものを狙うなら当然外れる確率も上がる。
少し緊張しているのが分かり孫六は落ち付く様にと一つ深呼吸をする。
まだたかが3人。
ただし、いずれもが恩賞に値する者達。
単純に兵を多く殺すのとは、意味合いが大きく異なる。
実際、明軍とて兵は多くいても将は多いわけではない。
長く戦闘が無かった明では部隊長もほとんどが文官。
その中で本当に兵を指揮しうるものなどどれだけがいるだろうか。
「・・・・・・動くな。止まれ、止ま――」
その男の息遣いまで見えるほどに集中した孫六には、動きが止まる頃合いですら手に取るように分かる。
それに合わせて銃身をブラさない様に、力を入れずに引き金を引く。
「これで3人。あと2人、か」
無心で撃つからか、どうにも手ごたえがないからか、予想以上に罪悪感はない。
ただ、確実に殺している。
その証拠に頭を打たれた男たちはピクリとも動かない。
「恨むなら戦場に出てきた自分を恨みな」
あと2人。
より大物を狙うのなら、後方で指示を出す者の方が良いはず。
そうすれば先程の8町を越えることもあるだろう。
「9町以上先を狙ったことはない、が・・・・・・」
今日なら出来そうな気がする。
「おい。最初の銃を寄越せ」
孫六が代えながら使う新式銃は3丁。
とはいえ、微妙な誤差なのかもっとも長距離での収束が良いものは最初に使った1丁。
「・・・・・・隊長? 10町以上はありますよ!?」
補助の者が孫六の銃身の向きからその狙いに気付いたのだろう。
「ああ。だから当たれば新記録だな。しっかり観測していろよ」
9町以上先を狙ったことがないのは、弾の収束がひどく悪くなるからだ。
その状態で頭を狙うことなんて出来ない。
それでも、今なら外れる気がしなかった。
放たれた銃弾は吸い込まれるように哀れな男の頭を抉る。
こうして、狙撃兵たちの初陣が終わる。
戦果は敵兵50人ほど。
その多くは100人将ほどの小規模の部隊長であったが、中には都から派遣された将軍級の首も一つだけあった。
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