関白の息子!

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千姫ルート 上海要塞防衛戦3

張居勝(エロ度☆☆☆☆☆)

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 張居勝の志。
 それはこの国の民を権力の横暴から救うことにある。

 明と言う国は、既に末期と言って良い程に腐っている。
 それは民や少しでも学のある者ならば分かっていることだ。
 朝廷は金で権力を売り、民を顧みずに贅沢三昧。
 皇帝は必要経費である官僚の給料すら出し惜しみして、数が減っても新しく雇わず、宦官を徴税官として各地に派遣し税だけを取り立てる。

 そして、今は東北に金、南東より倭、北にモンゴル、南に越とまさに内憂外患。
 史に照らせばこのような状況では間違いなく国が亡ぶ。
 だが、それで民が楽になることなど無い。
 侵略者たちは民から奪い、犯し、殺す。
 だが、明と言う国は腐っても大国。
 自分が上に着けば、必ず立て直せる。

 そう信じているからこそ、どんな不条理にも耐え、土を食んでも生きて来た。
 悪辣な官吏の靴だって舐めてやる。
 志を同じくする者を密告し殺すことになろうとも、絶対に志は曲げない。

 なにがなんでも上に立つ。
 そのためには手段など選ばない。
 それが張居勝と言う男であった。

 だから、朝廷の中心につながりのある李進安の赴任に当り、自身の最愛のすら・・・・・・。

「何をしているのだ、俺は・・・・・・」

 想いは絶ったはずだったのだ。
 多くの民を救うために彼は最愛の人を犠牲にした。
 だが、いざ殺されてしまうのではと思った時に我慢など出来なかった。

 ・・・・・・本来であれば、この戦の勝利による褒美が季夏であっていいはずがない。
 それではそもそも季夏を売った意味がないのだ。

 季夏は居勝の願いを聞き届け、進安に抱かれながらも、密書にて進安の弱みになりえそうなことを伝えてきてくれていると言うのに・・・・・・。

「俺が志を曲げてどうする!」

 ガツッと大木を殴りつける。
 その拳から血が伝う。

 最愛の人が苦しむ姿に耐えかねたのは本当だ。
 だが、果たして季夏はあの言葉をどう受け取ったのだろうか。

「俺は!」

 もう一度大木を殴り自分の行動を戒める。
 そのために全てを捨てたのだ。
 国を変えられる重職につけないのなら、それこそその全てを無駄にしたことになる。

「・・・・・・どうした?」

 背後に人の気配を感じて振り返る。
 そこには居勝が信を置く部下の一人が立っていた。

「・・・・・・張将軍。後方部隊の到着にはあと3日ほど時間がかかるとのことでございます。また、さらに後続の部隊は、その――」

「敵遊軍の妨害にあっているか?」

「はっ!」

 だが、3日後に到着する部隊には明軍の攻城兵器の運搬を任せている。
 それさえ到着すればあのような城壁は・・・・・・。
 と、そこまで考えて、居勝は未だに倭軍を侮っていることに気付く。

「いや、火砲についても敵の方が先を行くと考えるべき、か。今日の戦では用いてこなかったが・・・・・・」

 だが、居勝は知る由もないが、実は上海要塞には火砲、つまり大砲の類は持ち込まれていない。
 持ち込まれているのは運搬が現実的に可能な大鉄砲や棒火矢の類。
 大砲類に関しては大和を始めとして、城の北側の長江や東の上海港に停泊する戦艦群が搭載しているのみだった。

 理由はまさに運搬が困難であること。
 なにせ、彼等はこの要塞を破棄する予定なのだから。

「明日は敵の手を探るために西と南の門だけを攻める。破城槌と盾兵を多く用意せよ。盾を貫通した弾ならば死ぬほどのことはあるまい」

 まだまだ様子見。
 方法はどうあれ、糧食の確保は出来ている。
 だがなぜか、居勝には絶対にあの城壁を崩せないような気がしていた・・・・・・。

「いや、火砲を受けて崩れぬ壁などあるはずもない。良いな、あの堀を越えられる梯子が届くまでは堀を越えようなどとは考えず、門を狙うように徹底させよ」

 弱気を振り払い、居勝は部下に命令する。
 今は正攻法しかありえない。
 基本に立ち返り攻城は敵の心を攻める。

「はっ! ・・・・・・あの、それと張将軍。間諜が敵の総大将の情報を得たのですが・・・・・・」

「なんだ? 倭軍の将軍など聞いても分からんが、何かの役に立つかも知れん。言ってみよ」

 倭軍が上海を奪う前から商人に化けさせ、上海の情報を探らせていた間諜の情報。
 上海は占拠されたものの、商人や民には弾圧も略奪も行われず、しかも倭との商売が認められているのだ。
 だが、上海港と倭軍の要塞は別の場所にあり、おまけに交流があるわけではない。
 だから、その者からの情報は正直、どれほど役に立つかは分からない。
 あまりにも情報の少ない明軍にとっては、なにが役に立つかもわからない。

「その、女だということなのです。それも天女と見間違うほどの美しい少女だったとか・・・・・・」


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