関白の息子!

アイム

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千姫ルート 上海要塞防衛戦3

1夜目2(エロ度☆☆☆☆☆)

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 初戦の戦果に沸いた日本軍とは真逆に、明軍は手痛い被害に意気消沈していた。
 特に、自分で突撃を指示をしていながら、進安の荒れっぷりは相当なもので、被害が余計に増えるほどであった。
 
「張将軍。李将軍が・・・・・・」

 伝令に来た者が話しにくそうに居勝に声をかける。
 聞かなくても進安の性格なら、今どうしているかなど分かりきっている。
 報告する者はそれなりの立場の者なので、進安に斬られるのはやめてほしいのは山々だが・・・・・・。

「少し待て、魏将軍が討たれた状況を詳しく聞いてからだ」

「魏将軍でしたら、流れ弾に当たって死んだのでは?」

「ああ。だが城壁から10町も離れたところでか? 朝鮮で捕らえた倭軍の兵の話ではどんなに飛んでも5町だと言う話だった。それも1町も離れればまともに的にも当たらぬと言う話だった。もしも、もしもだ。これが狙って当てたと言うのであれば・・・・・・」

 そこまで言って居勝はブルリと震える。

 居勝が今回の被害報告を聞いた時、真っ先に驚いたのは部隊長格の被害の多さだ。
 敵の鉄砲の脅威については、当然部隊長格には伝えてある。
 3町以内には近づかぬようにと全員に徹底させていたはず。
 前線に出るのは替えの利く兵だけで良い、と。

「それがこれほど死ぬと言うのはどういうことだ? しかも、死んだ者達はほとんどが言いつけを守り3町以上離れていたと言う。まして、その死に方は全員頭を撃ち抜かれて、だ。身体にはほとんど銃弾が当たっておらぬ」

 居勝の命令で集められた部隊長たちの死体。
 それに、一般兵の死体。
 それらが集められた地で居勝はその脅威に気付き始めていた。

「見よ。一般兵の死体は撃たれた場所が弾ける様に抉られている。だが、将達の傷は・・・・・・。そうでなくとも硬い頭蓋を撃ち抜いておる。恐らく、全く異なる銃によるものだ」

「・・・・・・敵は新兵器を用いている、と?」

「ああ。もしやすると5000の損害でこのことに気付けたこと。助かったくらいかも知れぬぞ」

 もしもこの兵器に気付くのが遅れ、本格的な総攻撃をかけていたとしたら、将達の被害はいかほどになっていただろうか。
 いや、大将の進安が討たれていたかもしれない。

「・・・・・・それも良いのかもしれんがな」

「張将軍?」

「なんでもない。李将軍のもとに参るぞ。これ以上の被害は総攻撃の害となる」

 気は重いが、副将として大将のご機嫌は取らねばならない。




 そして、進安の幕舎の前に着けば、戦場さながらの血の匂い。
 既に何人か殺しているのだろう。

「・・・・・・李将軍。失礼いたします」

「ぬ!? 居勝か! 何の用じゃ!?」

「・・・・・・報告したいことが」

 自分が目にかけて来た南京の警備隊の者の死体を目にしても、居勝は乱れない。
 これでまた攻め難くなったと小さく溜め息を吐くのみだ。
 バッと頭を下げ、そのまま報告をする。

「敵は新兵器を用いています。を狙い、人の頭を撃ち抜ける兵器です」

「だからなんじゃ!」

 部下を殺し興奮したままの進安には居勝の語った言葉の意味が測れない。
 共に入って来た居勝の部下は、5町と居勝が言ったことに驚いているが、それに進安が気付くはずもない。

「落ち着いてください。この情報は千金に値するものです。5000の兵の損耗など、安いもの。都に報せれば、それだけで将軍の優秀さを知らしめることが出来ましょう」

 進安は己の気分さえ良ければそれで良いと考える小物。
 ならば、この初戦が敗退で終わったのではなく、貴重な情報を得るための止むない犠牲であったと言い換える機会を与えてやればいい。

「この報せは今後の倭軍との戦において、多くの将の命を救うことになりましょう。今までの情報のままでは3町ほどのところに将は陣取ったでしょうからな。それに5000の損耗と言えど、実際の死者は2割程度。2割も復帰は難しいでしょうが、残りの6割、3000程度の兵はこの戦の内に復帰が可能でしょう。・・・・・・つまり、将軍はたった2000の兵で、今後の倭軍との戦で脅威になるであろう新兵器の存在を掴んだのです」

 もっとも、その兵器の脅威は5町ではなく10町先を狙えることだがな、と居勝は内心でほくそ笑む。
 ただし、5町先を狙撃できるだけでも、この時代の戦では有り得ない脅威。

「・・・・・・成る程のぅ。では、儂は英雄ということじゃな?」

「はっ! ましてその脅威にさらされながらも城を奪い返し、更には敵の新兵器まで鹵獲出来たとすれば、それはどれほどの恩賞を賜れるものなのか、私では想像もつきませぬ」

「ククッ、そうかそうか」

 そこまで言って、進安の機嫌が良くなったことが分かると居勝も頭を上げ――。

 そのままの姿で固まる。

「・・・・・・」

「む? なんじゃ?」

「い、いえ。その娘も殺したので?」

 居勝の視線の先には、一糸纏わぬ姿のままでピクリとも動かない季夏がいる。
 篝火の明かりが余り届かぬところにいるせいで生きているのかいないのかも判然としない。

「ふん。儂のありがたい子種を零しおったので少し指導してやっただけじゃ。人形もあまり持ち込めなかったのでな、壊すわけにもいかん」

 季夏をただの物として扱っているのが良く分かる発言。
 だが、居勝は生きてさえいればよいと考えていた。

「・・・・・・将軍。一つ願いが」

「なんじゃ?」

「この戦が終わりましたら、その娘をいただいてもよろしいでしょうか?」

 言っておいて居勝自身が自分の言葉に驚いていた。
 志のために耐えたはずの想いが、未練が残っていたのか、と。

「む? グフフ、良かろう。儂のお下がりで良いと言うのなら、それをくれてやろう。都には良い人形が山ほどおるからのう。もっとも、戦が終わるまでその人形が生きて俺ばじゃがな。ぐぁっはっはっは」

「ありがとうございます。この張居勝。李将軍の尖兵となりて必ずやこの戦を勝利に導いて見せましょう」

 もう一度深々と頭を下げ、居勝は進安の幕舎を去る。
 最後にチラリと季夏を見れば、何時の間に起きたのか忍び泣いているのが分かった。
 彼女が今どういった心境なのか、それを考えようとしたが恐ろしくなり止めた。

 なにより、自分にはそれを考える資格はない。
 そう居勝は自分を戒めた。
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