7 / 77
超能力を見る
しおりを挟む
黒江が買い物を済ませて寮の門前に差し掛かると『Mark2eyeball』が見えた。
目の向いている方向に立つと、ぴょこぴょこ動き出した。
黒江が、白野のアパートの方を指さし歩き出すと、『Mark2eyeball』は、アパートの方向に黒江の前に立って移動し始めた。
「おはよう。」
「おはよう、本当に来てくれたんだ。」
「そりゃ、言ったことは守りますよ。」
「いや、本当にくるのかなぁと思って、つい『Mark2eyeball』を差し向けてしまった。携帯の番号教えてもらえなかったし。」
「ごめんね、寮のことがあったから。」
昨日の嘘を修正しないまま黒江は答えた。
「ところで昨日の晩は、どうしたの?お布団とか?」
「寝袋で寝た。」
「寝袋!?」
「あぁ、親父が漁師なんだけど、休みの日は揺れない山がいいって、山に行ってたんだ。子供の俺らも付き合わされてさ。それで寝袋持ってんの。」
「俺ら?」
「兄貴が二人いるんだ。俺は末っ子の3男。」
「そうなんだ、私は一人娘。」
「寂しくない?」
「あれこれ言ってもしょうがないしね。小学4年生の時、同級生に妹が生まれたって聞いた時だけはうらやましかったな。」
「そうか、ところで何買ってきたの?」
「あ、雑巾とかスポンジ、洗剤とか色々。」
「雑巾って、この部屋不動産屋が掃除してくれているよ。」
「ちがうわよ、新しく買った家電とかベッド、棚とかは拭いてから使うものよ。お鍋とか食器だって洗わないと。」
「そうなの?」
「そうなの、って、やっぱり買ってきてよかった。」
「ありがとうございます。」
「お昼ごはん期待してるから、ね。」
「はい。」
インターフォンが鳴ったのは、白野の返事と同時だった。
洗濯機や冷蔵庫は業者さんが設置してくれた。組み立て式の食器棚やベッドは、梱包を白野が指定した場所においてくれただけで、これから白野が組み立てる。
「よかった、バケツや水きりなんかもある。これで掃除や洗い物ができる。」
細々としたものが梱包された段ボール箱を開封して黒江は言った。
「ありがとう。色々やってくれて。お昼はおごる。ただ、お店がわからんから教えて。」
「任せておいて、あなたより先にこっちに来てるし、先輩からも話は聞いているから。」
「よろしくお願いします。」
「まぁ、さっさとやっちゃお。私もさっさと終わらせて色々話をしたいし。」
「おっと。」
ロフトベッドの上から落ちたネジが空中で停止する。そして浮かび上がって行き、白野の手に収まった。
「う~んまだ慣れないね。親指と人差しだけが宙で何かを掴んでいるっての。」
「親指と人差し指?」
「そう、念動力ってこんな感じに見えるよ。」
黒江は自分の親指と人差し指で雑巾をぶらさげた。
「こんな感じで昨日もボールペン持ってた。手のひらに該当する部分は見えなかったけど。」
「黒江さん、ちょっと念動力でトイレのスイッチつけるから見て。」
「いいわよ。」
白野がロフトベッドの上から視線を送るとトイレのドアにはめ込まれている曇りガラスが蛍光色に光る。
「スイッチを押すときは、人差し指だけですね。」
「見えるんだ。」
「えぇ、ぼんやりと青い指が。『Mark2eyeball』に指があったらあんな感じかも。」
「…俺には見えないよ。」
「そうなんですか?」
「実は、昨日黒江さんが帰ってから色々試したんだ。『Mark2eyeball』で鏡を見たけど黒江さんの言う目だけくっきりしてる青い人型なんて俺には見えない。今だって、黒江さんの言う青い指は見えない。」
白野の目の前にネジが浮かんでいる。
「思うんですけど、黒江さん『時間停止』以外に『超能力を見る』という超能力があるんじゃないかな。」
「『超能力を見る』超能力ですか?」
「そう、『Mark2eyeball』が黒江さんに見えて俺に見えない理由はそういうことじゃないかなと思う。」
白野は目の前のネジが落ち、手のひらに受け止められた。
「まだ、俺一人だから断言はできんけど、超能力が発揮されている時、黒江さんには、それがどんな感じで発動されているか見えて、俺に見えない理由を考えるとそういう可能性もあるなって思う。」
「試してみます、ちょっと『時間停止』使いますね。」
「どうぞ。」
「『時よ止まれ』」
全てが静止する。ロフトベッドの白野もネジを握ったまま停止している。
黒江は鏡を見た。時間を停止した状態で鏡を見るのは初めてだった。
鏡の中の黒江は、青い光に縁どられていた。
「『汝は美しい』」
張り詰めたものが解ける感覚。時間が動き始めた。
「どうだった。」
「鏡を見たけど、青い光に縁どられていたわ。『時間停止』している時の私は、青い光に覆われているみたい。」
「可能性はあるね。」
「ねぇ、部屋の片づけ終わったら渋谷に行かない?」
「渋谷ってW杯とかで人の集まるあそこ?」
「そう、行きましょ。」
目の向いている方向に立つと、ぴょこぴょこ動き出した。
黒江が、白野のアパートの方を指さし歩き出すと、『Mark2eyeball』は、アパートの方向に黒江の前に立って移動し始めた。
「おはよう。」
「おはよう、本当に来てくれたんだ。」
「そりゃ、言ったことは守りますよ。」
「いや、本当にくるのかなぁと思って、つい『Mark2eyeball』を差し向けてしまった。携帯の番号教えてもらえなかったし。」
「ごめんね、寮のことがあったから。」
昨日の嘘を修正しないまま黒江は答えた。
「ところで昨日の晩は、どうしたの?お布団とか?」
「寝袋で寝た。」
「寝袋!?」
「あぁ、親父が漁師なんだけど、休みの日は揺れない山がいいって、山に行ってたんだ。子供の俺らも付き合わされてさ。それで寝袋持ってんの。」
「俺ら?」
「兄貴が二人いるんだ。俺は末っ子の3男。」
「そうなんだ、私は一人娘。」
「寂しくない?」
「あれこれ言ってもしょうがないしね。小学4年生の時、同級生に妹が生まれたって聞いた時だけはうらやましかったな。」
「そうか、ところで何買ってきたの?」
「あ、雑巾とかスポンジ、洗剤とか色々。」
「雑巾って、この部屋不動産屋が掃除してくれているよ。」
「ちがうわよ、新しく買った家電とかベッド、棚とかは拭いてから使うものよ。お鍋とか食器だって洗わないと。」
「そうなの?」
「そうなの、って、やっぱり買ってきてよかった。」
「ありがとうございます。」
「お昼ごはん期待してるから、ね。」
「はい。」
インターフォンが鳴ったのは、白野の返事と同時だった。
洗濯機や冷蔵庫は業者さんが設置してくれた。組み立て式の食器棚やベッドは、梱包を白野が指定した場所においてくれただけで、これから白野が組み立てる。
「よかった、バケツや水きりなんかもある。これで掃除や洗い物ができる。」
細々としたものが梱包された段ボール箱を開封して黒江は言った。
「ありがとう。色々やってくれて。お昼はおごる。ただ、お店がわからんから教えて。」
「任せておいて、あなたより先にこっちに来てるし、先輩からも話は聞いているから。」
「よろしくお願いします。」
「まぁ、さっさとやっちゃお。私もさっさと終わらせて色々話をしたいし。」
「おっと。」
ロフトベッドの上から落ちたネジが空中で停止する。そして浮かび上がって行き、白野の手に収まった。
「う~んまだ慣れないね。親指と人差しだけが宙で何かを掴んでいるっての。」
「親指と人差し指?」
「そう、念動力ってこんな感じに見えるよ。」
黒江は自分の親指と人差し指で雑巾をぶらさげた。
「こんな感じで昨日もボールペン持ってた。手のひらに該当する部分は見えなかったけど。」
「黒江さん、ちょっと念動力でトイレのスイッチつけるから見て。」
「いいわよ。」
白野がロフトベッドの上から視線を送るとトイレのドアにはめ込まれている曇りガラスが蛍光色に光る。
「スイッチを押すときは、人差し指だけですね。」
「見えるんだ。」
「えぇ、ぼんやりと青い指が。『Mark2eyeball』に指があったらあんな感じかも。」
「…俺には見えないよ。」
「そうなんですか?」
「実は、昨日黒江さんが帰ってから色々試したんだ。『Mark2eyeball』で鏡を見たけど黒江さんの言う目だけくっきりしてる青い人型なんて俺には見えない。今だって、黒江さんの言う青い指は見えない。」
白野の目の前にネジが浮かんでいる。
「思うんですけど、黒江さん『時間停止』以外に『超能力を見る』という超能力があるんじゃないかな。」
「『超能力を見る』超能力ですか?」
「そう、『Mark2eyeball』が黒江さんに見えて俺に見えない理由はそういうことじゃないかなと思う。」
白野は目の前のネジが落ち、手のひらに受け止められた。
「まだ、俺一人だから断言はできんけど、超能力が発揮されている時、黒江さんには、それがどんな感じで発動されているか見えて、俺に見えない理由を考えるとそういう可能性もあるなって思う。」
「試してみます、ちょっと『時間停止』使いますね。」
「どうぞ。」
「『時よ止まれ』」
全てが静止する。ロフトベッドの白野もネジを握ったまま停止している。
黒江は鏡を見た。時間を停止した状態で鏡を見るのは初めてだった。
鏡の中の黒江は、青い光に縁どられていた。
「『汝は美しい』」
張り詰めたものが解ける感覚。時間が動き始めた。
「どうだった。」
「鏡を見たけど、青い光に縁どられていたわ。『時間停止』している時の私は、青い光に覆われているみたい。」
「可能性はあるね。」
「ねぇ、部屋の片づけ終わったら渋谷に行かない?」
「渋谷ってW杯とかで人の集まるあそこ?」
「そう、行きましょ。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
煙草屋さんと小説家
男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。
商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。
ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。
そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。
小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。
ユキ・シオン
那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。
成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。
出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。
次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。
青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。
そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり……
※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる