おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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渋谷(3)

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 1時間以上粘ったが、超能力が使われた形跡を発見することはなかった。
「簡単にはいかないわね。」
「そりゃそうだよ。」
 スタバを出て、特にあてもなく歩き始めた。
「思うけど、市ヶ谷とかどうかな?自衛隊の本部があるとこ。」
「自衛隊が超能力者を使っていると?」
「漫画とかでさ、国家で超能力の研究してるとかあるじゃん。そんな感じで。」
「漫画とかアニメですか。」
「ただ、ここでじっと見ているより、漫画とか参考にしてでもいいから、いそうなところうろつくのも手じゃないかな。」
「う~ん。」
「そうでなくったって、超能力を使わないとわからないでしょ。渋谷の街中でどんな超能力を使うのか、使う動機になりそうなことあるのかな。」
「そうですね、動機は大事ですね。」
 白野さんの言う通りだな、と黒江は思った。
「この渋谷、スクランブル交差点では多いときは3000人の人が渡るそうです。1時間で万単位の人間が渡るのだから、一人くらいいるんじゃないかと考えてました。」
「何万何十万何百万いてもいない時はいないんだよ。」
「上京して、3日もたたないうちに白野さんと知り合えましたから、簡単に考えてしまったのかも。無駄につきあわせて申し訳ないですね。」
「気にしなくていいよ。俺も渋谷見物くらいはしたかったし。」
「今度は、白野さんの言う、市ヶ谷や霞が関、丸の内なんかに行ってみましょう。」
「いいかもね。永田町や兜町にも。」
「皇居とかも見てみたいですね。案外超能力者がいたりして。東京って風水とかで結界が張られているなんて話もあるじゃないですか。」
「超能力と、風水や魔術は違うでしょ。」
「いや、どうでしょう。ほら呪文を唱えて魔術って使うでしょ。私たちは『見たい』とか『時よ止まれ』という簡単な言葉で使っているけど、人によっては呪文で超能力を使うのかもしれませんよ。」
「なるほど、で、昔は超能力なんて言葉がないから魔術と呼んでいたと。」
「そう、風水なんかもひょっとしたら超能力を使いやすい環境を整える技術だったりするかもしれません。」
 そういうと黒江は、こぶしを口に当てて笑い始めた。
 何がツボに入ったんだろう、そう思いながら白野は、黒江の笑いが収まるのを待った。
 ひとしきり笑うと、黒江は白野の方を向いた。満面の笑みだった。
「いや、ごめんなさい、急に笑い出して。」
「いいけど、何が黒江さんのツボに入ったのかわからない。」
「いえ、魔術だ超能力だと普通の人じゃこんな話真面目にできないじゃないですか。それができるのが楽しくて。」
「あぁ、なるほど。」
 黒江さん、俺と違って何年も悩んでいたんだよな。
「俺ならいつでもつきあうから、気軽に声かけてね。」
「ありがとうございます。でも今後アルバイトとかサークルとかで時間とられるんじゃないですか。」
「う、黒江さんはどうするの?」
 確かに、バイトやサークル以外にも、学部が違うからすれ違うことが多くなるかもしれない。
「サークルくらいは入ろうかな、と思っています。アルバイトは、父からしなくていい、勉強に専念しろと言われてます。」
「何に入るとか決めてる?」
「いえ、まだ。ただ、運動は苦手なんでその辺は避けようと思います。白野さんは?」
「サークルは特に考えてない。バイトはしないといけないかな。ただ、すぐにやるんじゃなくて4月くらいは様子を見てどのくらいバイトに時間を割けるか判断しなさい、って親に言われてる。」
「白野さんは、公務員志望だから勉強もしないといけないんですよね。」
「そうだけど、まぁなんとか時間は作るよ。」
「ありがとうございます。無理はしないで下さいね。」
「でもさ、思ったけど、教養課程なら学部関係ないから一緒の取れるんじゃなかったっけ。」
「科目によりますよね。先輩にも色々聞いてみます。」
 そんな話をしながら歩いていて、気が付くと路地裏だった。
「ここどこでしょう?」
「あ、話に夢中になって変なところ迷いこんじゃったね。」
 その時、目の前の角から女性が飛び出してきた。
 黒江の目には、女性の体が青い光に包まれていた。
   
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