絢と僕の留メ具の掛け違い・・

すんのはじめ

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第1章

1-⑵

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 中間テスト成績の発表と同時に席替えが始まった。成績の良かった者から順に呼ばれて席を後ろから移動してゆく。3番目に健チャンが、僕は5番目に呼ばれた。又、負けた。

 本町絢は 4番目だった。又、離れ離れだ。いつものことなので気にしないでおこうと思っていたが、掃除の時間に窓を拭いている時、気が付いたら隣に彼女が居たので、

「なんでもっと頑張んないだよッ」って思わず言ってしまった。

「勉強興味ないから」って思いがけない返事が返ってきた。

 確かに彼女は授業中でもなんかの紙にどこかの風景みたいな絵をいつも描いている。僕は辺りに人が居ないか確かめて、

「やってみないと興味あるかどうかわからないだろー、勉強必要だろう。一緒に勉強しょうか」と自分でも思いがけない言葉を言ってしまった。

 すると、例のごとく彼女の頬は少し紅くなって、顔を下向けて窓ガラスの同じところをずーっと拭いていた。

 次の日の朝、上履きに履き替えようとしたら、先っぽに何か入っていた。折りたたまれた紙だつた。中には几帳面に書かれた「今度の土曜日水島君の家にいっていいかな」って書かれていた。
 名前なかったけど本町絢だとすぐにわかった。僕はその瞬間、うれしいような、でも戸惑っていたかもしれない。

 教室に入ってゆくと、いつもは僕より遅いんだけど、この日は本町絢が机に座っていた。僕の方を見もしない。返事が気にならないのだろうかとか、他の人に知れたら嫌だなとか、色んなことが頭を横切った。と同時に、どうやって返事したらいいのか、もちろん来るのは良いのだけれど、どう言えばいいのかとか、おそらく心臓がバクバクしていたと思う。
 
 手紙を書くのも面倒だし、だれかに見られるのも嫌だったので、給食を食べ終わってみんながわさわさしている時をねらって、食器を戻しに行く際に彼女の側に寄って、

「市民会館で朝9時待っている」と何気なく言って通り過ぎた。

 彼女に聞こえたのかどうかわからなかったが、食器を返して戻るとき、彼女の方を見ると、小さく指でVサインをしていた。その時の顔は窓の方を向いていたが、僕が席に戻るとこっちを向いて、ニコッとした。可愛かったのかもしれない。その時、二人の留メ具が掛かり始めようとしていた。
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