私の辛かった思い あんたにぶつかっていくわ!

すんのはじめ

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第1章

1-2

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 数日後、私は村沢山水むらさわ さんすいと白木屋匠に呼び出されて、学校の近くの川沿いの公園に居た。村沢君は小学校から仲良くしている男の子で、名前に同じ山が入っているってことで、お互いにずーっと好意を持っているはずなのだ。それに、何故か他のクラスなのに村沢君と白木屋君は仲が良いのだ。私達は友達というより仲間のつもりなのだ。そんな二人だから、私を呼び出したのだろう。少し、遅れて亜里沙も来ていた。

「おいっ 山城山葵 学校で変なウワサあるの わかってるのか?」

「うーん なんとなくネ」

「なんとなくじゃぁ無いだろぅ 山城山葵が、男を誘惑して やったんだってことまで言ってる奴も居るんだぞー お前はそんな奴じゃぁないよなー 何があったんだ?」

 村沢君は黙ったまま私を見詰めていた。私は、みんなにあの日のことを全部細かく話始めたのだ。そして、話し終えると

「山城 どうして そんなことがあったって、話してくれなかったんだよ」と、村沢君は私に問い詰めるわけでも無く、いたわるように言ってきたけど

「どうしてってー 村沢君にも心配かけたくなかったしー 脱がされかけたけど・・なんでもなかったし・・ もう、ウチも忘れたかったんやー」と、私は涙が滲んできていた。

「わかった わかったよ 山城山葵 辛かったんだなー もう 俺たちが 変なウワサから守ってやるからな 泣くな! なぁ 山水」

「あっ あぁー 山城は何にも悪くないんだから、堂々としていたら良いよ」

「そうだよ わさびちゃんの処女は俺か山水のもんやからー それにしても そんなええ加減なこと誰が言い出したんやろなーぁ 数人しか知らないことなんだろう? その音女の女って思いたくないしなぁー」

「どさくさに 紛れて 今 変なこと言ったやろー・・ 好き勝手に・・」

「そうやー 白木屋君 いゃーらしいー そんなん思ってたん!」と、亜里沙も追い打ちをかけてきた。

 そうなのだ。数人だけのはず。あの時の男達は未遂に終わって逃げて行ったんだから・・・あの人。音女の人。助けたといっても、私が怖くてふさぎ込んでいるのに、他人事みたいに、彼氏と楽しそうに笑いながら帰って行った。きっと、私のことを見下して、ふらふらしてるからよって、言っていたに違いないワ。

 だけど、私は、ありがたかった。やっぱり、仲間なのだ。ずーと、ふさぎ込んでいたけど、私は、この仲間にだけでも、信じてもらって、気が楽になっていたのだ。

 ― ― ― * * * ― ― ―
 
 2学期の中間テストが近づくにつれて、私のウワサをする人も少なくなってきていた。テストの初日が終わって、私は村沢君と翌日の試験準備のため、図書館に居た。

「あのなー ウチ 高校 音女に行こうと思うネン」

「えぇー 大路にするんちゃうのかーぁ?」

 大路高校は公立で、それなりの進学校なので、有名大学を目指しているものは大半がそこに進むのだ。だから、私も当然そこに行くと村沢君も思っていたのだろう。

 私は、あの時の人の名前を調べたのだ。それは、すぐに分かった。岸森璃々香きしもりりりか。テニスは高校に入ってから始めたらしいのだけど、直ぐに頭角を現して、今は1年生なのだけど、すでに京都府内の高校ではトップクラスらしかった。

 だから、私は挑戦しようと考えたのだ。この前の大会で私が負けた子はテニス留学で他県に行くらしいから、私は、高校入学した時点では京都府内No.1という自信があった。それに、必死で練習すれば璃々香なんか勝てない相手ではないと・・・。待ってろよー。

 あの時、変なウワサを流されて、私は辛い思いしたのよー。許さない! きっと犯人を突き止めて、見返してあげるのよー。私は、みんなから 自分から男を誘って、ふしだらな女だとまで言われたのよ!。

「山城 まさか あのウワサのこと引きずって・・・ あの音女の女 犯人だと思って・・・」

「違うよ! ウチ テニス もっとやりたいから・・ 大路じゃぁ 駄目なの」

「だってよー 小学校から ずーと 一緒やんかー 今度も・・」

「ウン 仲良くしてくれたよネ ウチ・・ 村沢君のこと・・ ・・・ だって、いつまでもって わけにいかないじゃない」

 私達は、お互い、気まずい雰囲気で図書館を出てきた。そして、別れる時に

「山城 僕と・・・ 僕と付き合ってくれ 違う学校に行っても・・」と、私の手をいきなり握ってきたのだ。

「・・・」私は、そのまま、しばらく返答も出来なかったけど

「好きだ 山城のこと」

「・・・ ありがとう 村沢君 ・・・私だって・・ よろしくお願いします」と、やっと 声が出た。うれしかったけど、突然だったので、さっきは声が出なかったのだ。

「うっ うん よろしくな 良かったぁー 断られたら、恰好悪いしなーと」

「そんなことないよー ウチが村沢君のこと好きやの わかってなかったん?」

「そんなもん わかるかー」と、私の手をもっと強く握り締めてきていた。

「痛いー この 鈍感!」

 でも、その夜、私は少しはウキウキした気分だったのだ。


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