私の辛かった思い あんたにぶつかっていくわ!

すんのはじめ

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第2章

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 11月に音羽女学院の推薦入学の試験があって、と言っても簡単なテストと面接だけだった。その時、学校を訪れて、掲示板に [祝 岸森璃々香さん 京都府高校選手権大会 準優勝] の張り紙が・・。私は、その時、自分でも訳がわからなく心が燃えてくるような気持ちになっていたのだ。来年はあいつの代わりに私の名前を張り出させるんだ。

 数週間後、発表があって、私は合格していた。最初にお父さんに音羽女学院に行ってテニスを続けたいと言って、高校に行ったら、料理の勉強もしたいから厨房に立たせてとお願いしたら、音女に行くのは構わんけど、厨房に入るのは駄目だと言われたのだ。だけど、しつこくお願いしたら「健也の下で修業するのなら構わんが もちろん お母さんの了解をもらってからな」と・・・。それで、お母さんより先に、お父さんの下で働いている吉井健也よしいけんやさんに無理やりお願いしたのだった。

 お母さんに、そのことを言ったら「そうなの・・ テニスも頑張って 京都代表になってね」と、あっさりと返されただけだった。

 お父さんは、お母さんに気を使ってか、強いことも言わないし、お母さんもお父さんとか私に気を使ってるんだと思う。絶対に強いことは言わないのだ。そんな、波風の立たない家族なのだ。最近の桔梗以外は・・・。

「吉井さん 学校の無い 土日には入るし よろしくネ」

「ほんまに やるんでっかー お嬢さん」

「ウン ほんま あのー お嬢さんじゃぁなくて 山葵って 呼び捨てでね 最初は、出来へんことばっかーやろけど、遠慮せんと どんどん 叱ってネ 吉井さんの弟子なんやから」

「はぁ 弟子ってー まぁ 親方からも 遠慮は するなって・・ あのー お嬢さんも 吉井さんじゃぁなくて 健也って・・」

「・・・だからぁー お嬢さんじゃぁないでしょ えーっとー 健也さんでいい?」

「わかりました 山葵 よろしく」

「ハイ! よろしくお願いします」

 吉井さんは30少し前で独身で、お父さんの下について、もう6年になる。地方の料理旅館に居たのをお父さんが引っ張ってきたのだ。私も桔梗も、小学校の時は、時々勉強も見てもらっていたから、気安いのだ。だから、村沢君のことが好きなのって話したのも吉井さんにだけだったし、お父さんやお母さんよりも、色んな事を相談というよりも聞いてもらっていた。村沢君に告白されて付き合うようになったことも、最初に報告していて、一緒に喜んでくれたのだ。だけど、あの日のことだけは、恥ずかしくて言えなかった。私の中にしまい込んでおこうと思っていたのに・・・もっと、悔しいのは、学校中であんなことになってしまって・・。今でも、夜になると思い出してしまって本当は辛い思いをしてるのだ。

 ― ― ― * * * ― ― ―

 2学期の期末テストが近づいた土曜日。図書館で村沢君と待ち合わせをしていて、白木屋君も一緒に勉強しようと呼んでいた。実は、11月の終わりに、私は白木屋君から付き合ってくれと告白されていたが、村沢君とのことを白状していたのだ。その時は、白木屋君も「わかった じゃぁ 応援するよ」と、気持ち良く言ってくれていた。

 今日の私は赤レンガ色のコーデュロイでサイドベルトのミニのラップスカートで来ていた。あれからは、村沢君を意識してミニスカートとかショートパンツの恰好のことが割と多くなっていた。私と村沢君が自習室に居ると遅れて白木屋君がやってきた。見ると、その後から レモンイエローのフレァーなミニスカートの可愛い女の子が・・

「おう さっそく 仲良さそうだなー 俺等も一緒させてもらってもいいか?」

「あぁ いいけど・・・」と、村沢君も私もその女の子に釘付けになって見ていると

「あっ 樹羅きらちゃん 俺等 付き合ってるんやー 期末近いから、一緒に勉強しようって 連れてきた いろいろと教えられるかもしれんしー」

「えっ ええー それはかめへんけど・・・」と、私達は戸惑っていたのだ。

「こんにちは よろしく お願いしまーす あっ 山城さんですよね? 天野樹羅でーす よろしくです」と、可愛い声で頭をピョコンと下げていた。

「私のこと 知っててくれるんだ」

「ええ エースですから・・ 女の子の間でもあこがれですよぉ・・」

 この可愛い娘は私も知っていた。1年生で確かバイオリンが上手だと評判なのだが、今は、吹奏楽部でクラリネットをやっていて、まだ身体が成長しきれていなくて、顔が大きく見えるのだが、可愛らしくて、まるでアニメの女の子みたいで男の子からも注目を集めている子なのだ。

 私達は白木屋君を本棚のほうに連れ出して

「どういうことよー 少し前には・・ ウチに・・ 無節操なー」途中まで言って私は、村沢君には白木屋君とのことを黙っていたことに気づいた。

「そうだよー 匠 あの子はまだ・・ 毛も生えそろってないような子供じゃぁないのかー?」

「あららっ らっ 山水にしては 下品な言い方だなー それを見守るんだなー 俺は」

 その時、初めて、この人達が何の話をしているのか意味がわかって

「なによー 二人とも 男って そんなことしか考えてないのーっ! サイテー」と、二人を睨みつけていたのだが

「いや あこがれの人に振られたしなー 彼女 めっちゃー可愛いしな! 早いこと 手を打っておかないと、誰かに取られちゃうからー 彼女 最初は困惑していたんだが、強引に付き合ってくれと・・で なんとかな 付き合うことになった 俺は真面目に思ったんだよ」

 何となく、私達は納得して、教科書を広げている彼女の待つ席に戻って行った。

「キラちゃん あのー こんなガサツな男でいいの? まぁ 良い奴なんだけど・・」と、村沢君が切り出したら

「えぇ 私 付き合うってーどんなのか 良くわからないんですけど・・ 私が返事出来ないでいても 一生懸命 押してくるんですよー だからー 何となく 頼りになるかなぁーって 私 お兄ちゃん居ないから あこがれなんです」

「はぁー そんなもんなのかなぁー 白木屋君 大切にしなきゃぁ ダメよ!  こんな可愛いんだからー じゃぁ キラちゃん 私達もよろしくネ わかんないとこあったら教えるから、遠慮しないでネ」と、女って真正面からぶつかって来てくれる人って弱いんだよねー 私だって 村沢君と付き合い始めてなかったら・・・断りきれなかったのかも・・。

「ハイ! そのつもりで・・ 誘われましたから・・ 匠さんから」

 もう、匠さんだって・・ウチって まだ 村沢君としか・・・と、心の中で自分のこと振り返っていた。だって 山水って・・旅館みたいなんだものー 呼びにくいんだ。さんちゃんってのもなぁー。

 でも、お互いに呼び合って、仲良さそうに、時々、キラちゃんが白木屋君を頼って教えてもらっているを見ていると、案外、この二人、お似合いなのかなって思ったりしていた。

 そして、私 ぎこちなく しらぁっと 山水って呼んだりしてみたのだ。
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