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第3章
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2日3日と私も桔梗も出掛けないで家に居て、驚いたことに桔梗も食事の時お母さんの手伝いをしていた。というより、私が主に作るようにとお父さんから言われていたのだけど・・・。
それで、ベタなんだけど、みんなで人生ゲームなんかをして過ごしたのだ。お父さんもそれなりに機嫌を取り戻したみたいだった。珍しく笑って楽しんで居たりしていた。
4日から仕出しのほうだけ始まった。お店のほうは明日からだという。朝はやっぱり5時前から私は厨房で拭き掃除をしていた。そして、直ぐに健也さんも元気な姿を見せていた。6時には親方も顔を見せて、並んで挨拶をしたのだ。
仕出し料理を送り出して、今日は早めのまかないになっていた。その後は明日からの仕込みをやると言っていた。そして、親方は新年の挨拶廻りがあるからと、健也さんに任すからと着物姿のお母さんと出掛けて行くのだ。
まかないを食べた後、健也さんが持ってきてくれたお菓子を食べながら
「ねぇ この前のおそば おいしく無かったんでしょ? なのに、お父さんも健也さんも黙って全部飲み干してくれて・・ どうして?」
「いゃぁー うまかったですよ お嬢さんが作ってくれたんで感激でした」
「それって 私が娘だからって 忖度してるんでしょー 兄弟子なんだからちゃんと言ってよ 厳しく本当のことを」
「・・・親方はどう思ったのかわからんですが 俺は・・ おいしかったです 料理人はこの人においしく召し上がっていただきたいと思うのが、その腕以上に大前提なんです 味付けは経験積んでいけば何とかなるんですよ あの時、山葵は一生懸命に作ってくれたじゃぁないですか だから 俺にはおいしかったです」
「・・・健也さん ありがとう ウチ やっぱり 健也さんが兄弟子で良かったぁー」
何かすっきりとした気持ちだった。ずーと、悶々としていたんだけど、きっとお父さんもそのことを私に教えておきたかったんだわ。だから、あんな厳しいように無茶振りして・・・お正月の間なんかも、台所に立たせて慣れさせようと・・・もともと不器用な人だから、口で言えないんだわ・・・きっと。
あっ 元旦の時も もしかすると 桔梗の前で、遊んでるだけの友達じゃぁなくて、信頼できる仲間が必要なんだと、桔梗に伝えたくて 私を使って、あんなに強く言っていたのかしら・・・そんな訳ないよね お父さん そんなに思慮深くないものー だけど・・・お店を守っている主なんだよ!
― ― ― * * * ― ― ―
3学期も始まって、落ち着いた頃、私達は彼等の受験が近いので学校が終わると図書館の自習室に集まるようになっていた。私達は何故か誰も塾には行って無かったのだ。もともと、みんな勉強は嫌いなのだけど、みんなまぁまぁの成績でやってきている。
そして、樹羅ちゃんも久しぶりに顔を出した時
「キラちゃん 発表会 終わったの?」と、私が聞くと
「えぇ 無事に・・・ 今回はコンクールじゃぁ無かったから楽しかったですよ」
「そう ウチも 次は聞きに行くネ」
「ウン ぜひ この前も匠が見ていてくれたから 普段と違って頑張りました」
私達は思わず、その時 白木屋君のほうを見てしまっていたのだ、本人は知らんぷりして問題集を見ていた。だけど、ポツンと
「暇だったから でも、ふらっと行っただけだよー」
「うふふっ 私ね 直ぐに 客席の中に見つけちゃったー だって 男の人 ひとりで目立つんだものー その時、私への特別な熱視線も感じたからー だから、勇気もらえた感じで楽しく弾けました」
「へぇー へぇー 行ったんじゃぁない! 素直じゃないわねー 熱視線だてぇー」と、亜里沙も茶化すように言うと
「あぁ 行ったよ 悪いか 俺の彼女はピンクのドレスで可愛くて天使みたいだった これで 納得しましたか? 皆さん」と、珍しく顔が紅かったのだ。
「おーぉー 僕も そんな風に言ってみたいよー 匠は偉い!」と、村沢君が言っていたけど、私は なんなん じゃぁ 私に可愛いとでも言ってよー そんなの言われたこと無い と思っていた。
「ねぇ 匠 鎖国ってなんで始まったの? だって 信長なんて外国かぶれだったんでしょ?」と、キラちゃんは匠に甘えだしていた。もう、匠だってー この子 男の扱い 知ってるぅー と、私は乱されていた。白木屋君も嬉しそうに、しどろもどろで応えちゃってー。
その後も、二人の仲の良いのを見せられて、けど、村沢君は気にもしない様子で問題集に取り組んでいた。たまには、ウチのほうも見てよーと思いながら、時々、構って行くのだけど、素気なくて・・・そのうち、私も教科書に集中していったのだけども、つまんなかった。健也さんとなら気が休まるー。
だけど、私は身体が訛らないようにと、帰ってからジョギングをして、お店の終わる時間を見計らって掃除に入ったりして、お母さんには少しでも早く家に戻れるようにして、朝も5時から6時までお店の手伝いに入っていた。その時間に健也さんと一緒に居ることが楽しみになっていたのだ。
それで、ベタなんだけど、みんなで人生ゲームなんかをして過ごしたのだ。お父さんもそれなりに機嫌を取り戻したみたいだった。珍しく笑って楽しんで居たりしていた。
4日から仕出しのほうだけ始まった。お店のほうは明日からだという。朝はやっぱり5時前から私は厨房で拭き掃除をしていた。そして、直ぐに健也さんも元気な姿を見せていた。6時には親方も顔を見せて、並んで挨拶をしたのだ。
仕出し料理を送り出して、今日は早めのまかないになっていた。その後は明日からの仕込みをやると言っていた。そして、親方は新年の挨拶廻りがあるからと、健也さんに任すからと着物姿のお母さんと出掛けて行くのだ。
まかないを食べた後、健也さんが持ってきてくれたお菓子を食べながら
「ねぇ この前のおそば おいしく無かったんでしょ? なのに、お父さんも健也さんも黙って全部飲み干してくれて・・ どうして?」
「いゃぁー うまかったですよ お嬢さんが作ってくれたんで感激でした」
「それって 私が娘だからって 忖度してるんでしょー 兄弟子なんだからちゃんと言ってよ 厳しく本当のことを」
「・・・親方はどう思ったのかわからんですが 俺は・・ おいしかったです 料理人はこの人においしく召し上がっていただきたいと思うのが、その腕以上に大前提なんです 味付けは経験積んでいけば何とかなるんですよ あの時、山葵は一生懸命に作ってくれたじゃぁないですか だから 俺にはおいしかったです」
「・・・健也さん ありがとう ウチ やっぱり 健也さんが兄弟子で良かったぁー」
何かすっきりとした気持ちだった。ずーと、悶々としていたんだけど、きっとお父さんもそのことを私に教えておきたかったんだわ。だから、あんな厳しいように無茶振りして・・・お正月の間なんかも、台所に立たせて慣れさせようと・・・もともと不器用な人だから、口で言えないんだわ・・・きっと。
あっ 元旦の時も もしかすると 桔梗の前で、遊んでるだけの友達じゃぁなくて、信頼できる仲間が必要なんだと、桔梗に伝えたくて 私を使って、あんなに強く言っていたのかしら・・・そんな訳ないよね お父さん そんなに思慮深くないものー だけど・・・お店を守っている主なんだよ!
― ― ― * * * ― ― ―
3学期も始まって、落ち着いた頃、私達は彼等の受験が近いので学校が終わると図書館の自習室に集まるようになっていた。私達は何故か誰も塾には行って無かったのだ。もともと、みんな勉強は嫌いなのだけど、みんなまぁまぁの成績でやってきている。
そして、樹羅ちゃんも久しぶりに顔を出した時
「キラちゃん 発表会 終わったの?」と、私が聞くと
「えぇ 無事に・・・ 今回はコンクールじゃぁ無かったから楽しかったですよ」
「そう ウチも 次は聞きに行くネ」
「ウン ぜひ この前も匠が見ていてくれたから 普段と違って頑張りました」
私達は思わず、その時 白木屋君のほうを見てしまっていたのだ、本人は知らんぷりして問題集を見ていた。だけど、ポツンと
「暇だったから でも、ふらっと行っただけだよー」
「うふふっ 私ね 直ぐに 客席の中に見つけちゃったー だって 男の人 ひとりで目立つんだものー その時、私への特別な熱視線も感じたからー だから、勇気もらえた感じで楽しく弾けました」
「へぇー へぇー 行ったんじゃぁない! 素直じゃないわねー 熱視線だてぇー」と、亜里沙も茶化すように言うと
「あぁ 行ったよ 悪いか 俺の彼女はピンクのドレスで可愛くて天使みたいだった これで 納得しましたか? 皆さん」と、珍しく顔が紅かったのだ。
「おーぉー 僕も そんな風に言ってみたいよー 匠は偉い!」と、村沢君が言っていたけど、私は なんなん じゃぁ 私に可愛いとでも言ってよー そんなの言われたこと無い と思っていた。
「ねぇ 匠 鎖国ってなんで始まったの? だって 信長なんて外国かぶれだったんでしょ?」と、キラちゃんは匠に甘えだしていた。もう、匠だってー この子 男の扱い 知ってるぅー と、私は乱されていた。白木屋君も嬉しそうに、しどろもどろで応えちゃってー。
その後も、二人の仲の良いのを見せられて、けど、村沢君は気にもしない様子で問題集に取り組んでいた。たまには、ウチのほうも見てよーと思いながら、時々、構って行くのだけど、素気なくて・・・そのうち、私も教科書に集中していったのだけども、つまんなかった。健也さんとなら気が休まるー。
だけど、私は身体が訛らないようにと、帰ってからジョギングをして、お店の終わる時間を見計らって掃除に入ったりして、お母さんには少しでも早く家に戻れるようにして、朝も5時から6時までお店の手伝いに入っていた。その時間に健也さんと一緒に居ることが楽しみになっていたのだ。
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