私の辛かった思い あんたにぶつかっていくわ!

すんのはじめ

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第7章

7-1

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 年末のおせち料理も去年と同じように終えていた。桔梗も文句も言わないで手伝って居たのだ。そして、恒例のようになってしまった〆の年越し蕎麦も私が作った。つもりしていたので、間際に鰹だしを取って、煮干しに昆布だしと合わせて、煮切醤油とみりんを合わてせた。最後に粗塩を少しだけ入れた。そして、だしの香りを邪魔しないようにと三つ葉少しととおぼろ昆布を載せた。

 皆が食べだして、お母さんが一口

「おいしいー ねぇ あなた」と、お父さんに同意を求めるように・・。だけど、お父さんは「うむー」と、言ったきりで、健也さんが

「お嬢さん 本当にうまいっすっ お世辞ぬきで 本物ですね」と、言ってくれていた。私は、相変わらず、不愛想な父親にあきれていたのだ。

 そして、元旦。今年は、桔梗が友達と合格祈願に行くと言っていた。

「桔梗は 音羽に行かないんだな?」と、お父さんが今更ながら念押しして聞いていた。

「ウン お姉ちゃんと比べられるのって嫌ヤン チャンピオンやしなー それにウチ アホやから受からへんワー」

「そんなこと無いやろー けど どこに行くんだ?」

「うーん 二条あたりかなー ウチ 高校入ったら ダンス部にしよう思おーてんねん ちょっと 身体 絞らなーぁ ぷよぷよになってきたから」

「桔梗 いつも、夜 ポテトチップ食べてるでしょ 控えれば 直ぐ 痩せるのにー お母さん もう 買うの止めにすればー」

「あらっ 桔梗は いつも 自分買ってきてしまうのよー お小遣いで」

「そうか 桔梗は お小遣い 無駄に使い過ぎじゃぁないの? お化粧品とか下着なんかも 派手なのよ」

「わぁー お姉ちゃん 今時 普通だよ みんな そんなもんだよ お姉ちゃんみたいにリップクリームだけって おらへんよー」

「桔梗には 強力なスポンサーが付いているもんネ ねぇ お父さん」と、私が嫌味っぽく言ったのだが

「嫌 ワシは・・ まぁ 女の子だから、ぽっちやり気味のほうが健康的で可愛いよ 化粧だって年頃なんだから、学校以外で少しはな」

「もぉーう 桔梗には甘いんだからー ウチには厳しい 化粧水でさえ・・」

「そんなことないぞー 二人ともワシの娘なんだから、公平だ だけど 山葵は厨房に入っているし、あんまり化粧品の匂いもな それと、音羽はそういうほうも厳しいらしいから・・」 

 その後、お父さんとお母さん、私とで商売繁盛の初詣に出掛ける時、私は、ツイードの台形スカートだったんだけど、お父さんが

「山葵 そんな短かいので 大丈夫なんか?」

 普段の桔梗の姿を見ると、もっと、びっくりしちゃうんだけど、あの子、今日は中学の制服姿だったから、私のが目立っちゃったみたい。どうも、私は桔梗に比べてタイミングが悪いのだ。

「ウチやって これっくらい テニスの時はいっつも脚出してるやんかー でも 心配せんでもー 下にスパッツ穿いてるよー」

「なんだ? それはー 体操着みたいなやつかー?」

「うーん もうぅー まぁ そんなもんだよ いいから行こうよ 親方」

 — — — * * * — — —
 
 2日の日、仲間達とお昼に会う約束にしていて、近くの公園で待ち合わせをしていた。集まって、歩いてファミレスに行く予定。別に、集まる理由も無かったのだけど、特に私は、普段、会えないので集まろうということになっていたのだ。

 私は、昨日と同じグレーのツィードのミニスカート、亜里沙はサイドプリーツのブラウンのミニスカートでキラちゃんはやっぱりミニ丈の赤いチェック柄のワンピースでスカート部分がプリーツになっているものでやってきた。私の脚だけ陽焼けで褐色。

「キラちゃん いつものことだけど、可愛いわね そのお洋服も」と、私は、歯が浮くような言葉だったのだけど、本当なのだ。髪の毛も肩より少し長いめで、ふわっと髪の毛が多くて、少し天然なのかもしれないが、裾に向かってカールしているのだ。もしかすると、自分でカールをかけているのかな。そして、耳の両脇を小さなリボンで結んでいた。それに、ウェストもすごく細くて、女の私から見ても可愛いんだから、その場の男達の眼も奪っているに違いない。

 歩いていく時は、何故か男3人と女3人になって、お店に着いて、個室が空くのをしばらく待って、中は長方形のテーブルだったんだけど、キラちゃんはわざと白木屋君の手を取って、縁の短い方に陣取っていた。不思議なのだけど、相変わらず、キラちゃんは白木屋君のことが好きで仕方ないみたいなのだ。

「山葵 相変わらず 練習に明け暮れなのか?」と、白木屋君が聞いてきたけど、まだ、二人は手を結んだまま・・。

「うん ペァの相棒が変わったからね いち からみたいなのよっ」

「えっ そうなのか? あの先輩とは 解消なのか?」と、山水が驚いたみたいに言うもんだからー

「なんだー 山水も知らなかったのか?」

「あっ ごめん 言いそびれた 璃々香先輩はもとの相棒とやるってー 今度の総体予選で最後になるからなんだって でも、今度の子は同じ1年なんだけど、すごく上手になったのよ ウチ等もダブルスでは上位を狙っているの」

「ふぅーん あの先輩とはライバルになるんかぁー」

「山水 そんなー ライバルって あの人に勝てる訳ないやんかー」

「でも 山葵は 神業の子なんやろー」

「なんでーぇ ウチかて 普通の女の子やわー」と、山水の背中を叩いたら

「山葵 あんた等 仲ええなぁー 白木屋君とこには負けるけどな」と、亜里沙は二人が手を結んだままなのが気になるのだろう。

「亜里沙とこは どうなのー 仲ええんやろー?」

「ウチ等は まぁ 普通やなー」と、新藤友則君と顔を見合わせて

「ほんでもなー 前 鴨川を散歩してる時、手を繋いでくれたんやー」と、亜里沙は恥ずかしくなったのか下を向いていた。

「なんやねー お前等 小学生か?」と、白木屋君が冷やかしていたが・・・。キラちゃんもその時、顔を紅くして下を向いていた。

 その時、私の鈍感な彼氏は知らんぷりだったのだが、私は、白木屋君達の仲はどこまでなんだろうかと、想像してしまっていた。そういえば、ウチ等だって、手を繋ぐ程度やんかー。山水は、もっと・・・キスとか期待してるんだろうか そんなに親密になる程 逢おてへんしー 私は・・・と、勝手な想いをしていた。

 家に帰ると、桔梗がお台所でカレーを仕込んでいた。ピッタリとしたショートパンツから太目になった白い太腿を出して、エプロン姿で。

「いい 匂いがすると思ったら・・ 桔梗なの 表までいい匂い」

「この子ったら 朝から やってるのよ」と、お母さんも側で見ていたみたい。お父さんは、リビングの方でチビチビと冷や酒を飲んでいた。寂しそうなので、私は、簡単におつまみを作って、持っていってあげようと・・・イカの生干しを細切りにして、お豆腐とキュウリで白和えにして、ごま油と胡麻塩を少しかけて、あと、ちりめん山椒に鰹節を加えて、味を調えたものを・・。

「おぉ すまんな 山葵 波香が真昼間からあんまり飲むなって 気分概してツマミも出してくれんのやー 桔梗は、そういうとこ まだなー その点、山葵は気が利くのー」

「お母さんは お父さんの身体心配してるんよ お父さんはウチ等のために一生懸命仕事してくれてるのにねぇー ウチは・・早く 身体壊せって思ってるんやけどー そしたら、ウチと健也さんが、お客様の前に立って エヘッ でも、そのかわり、夜はちゃんと桔梗のカレー食べてあげてよー お酒 控え目にして」

「わかった 山葵 この白和え うまい」と、初めて、褒めてくれた。だから、何となく、TVを見ながら夕食までお父さんに付き合っちゃった。だけど、あの人はカレーを何口か食べたら、お風呂に行ってしまったのだ。

 だから、私とお母さんで「すんごーく おいしい!」と、桔梗のご機嫌を取っていた。
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