少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第3章

3-2-2

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 お父様が帰ってきて、直ぐにお風呂に行った。今日は3人でお出迎えだった。私を見て、首を振って、もう一度私を見ていたが、黙ったまま、玄関に向かった。

「燿さん 海老の殻 剥いてくださる?」

「あのー 私 剥きます 慣れてますから」と、私は、本当にやっていたからできると思ったのだ。

「あら そう じゃぁ お願いね 頭は残してね 燿さん お蕎麦ゆでてちょうだい ね」

 車海老だったのだ。おそばに天ぷらを添えるみたいで、もう、お母さんはしし唐、蓮根を揚げていた。

「あー もう あがってくるわね 燿さん そこの徳利と小鉢 お父様に 先に持って行ってちょうだい」

 そして、燿さんが戻ってくると、今度は

「そこにある箱寿司 お皿に移し替えて、持って行って いず重さんにお願いしておいたの 二つともね  香波ちゃん 小皿とお醤油 お願い そのまま あなた達は、もう、いいから お父様のお相手しててちょうだい」

 私達、奥の座敷に持って行ったら、お父様が驚いたように私を見て、又、座るところを示してきた。お父様の近くの角の席。

「燿 二人で美容院にいったのか そのー なんだ 一瞬 違う娘かと思ったぞ」

「そう 今日はお帰り 普段より、早かったのね 可愛い男の子に会いたかったから?」

「お前はな ワシを責めておきながら その言い方はないぞー 昨日から、ワシは香波を娘のように思っている 見違えるような娘になったが」

「うふふ 可愛いでしょー 私も びっくりしたわー あっ 私達 お飲み物」と、お台所に立って行った。

「なっ なんとなく 我儘な奴だろー」と、お父様は私に同意を求めるように・・

 そして、燿さんが戻ってきた時、お母さんと一緒にお蕎麦も・・。

「香波ちやん 私の地元のお蕎麦よ この辛み大根の卸しと和えて、そこのお汁をかけて食べるの 初めてでしょ 召し上がれ このお寿司も 燿さん お皿に取ってあげて」と、お母さんが言ってくれた。

「やっぱり、娘がふたりも居ると、華やかだぞ 聡 もう1本つけてくれ」

「一日1本ていう お約束でしょ」と、お母さんは渋っていたら

「いいじゃない 特別よ 今日は お父様も楽しいのよ 私がやってくるから 香波も来て」と、私の背中をポンとして立っていった。

「このカップに1合半 お母様は毎日のことだから目分量でやってるみたいだけどね 香波 足 くずしてもいいよ 辛いんでしょ まだ、しびれてるんじゃぁない?」と、言ってくれていた。

「お母さん 私ね おそばって初めて食べたんです 島では、うどんしかなかったの」

「そうなの 私はね 京都に出てくるまで お蕎麦しか食べたことが無かったのよ」

「香波は 何が好物だ? 食べるもので」

「お父様 私 かき揚げ 大好き! 小魚と海藻のん」

「そうかー 旨そうじゃのー 島だから、新鮮なんじゃろ」

「ええ 私ね 毎朝 岩場に行って採って来るの 魚も漁師さんが朝 捕って来たものだから それを おばぁちゃんがね・・」私、言葉が続かなかったのだ。

「あっ すまん そんなつもりなかったんだが・・ だけどな、これからは、ワシ等が家族だよ 香波の親がわりになるから 遠慮しないで何でも言ってくれ」

「お父様・・私 燿さんに出会えて 良かったです こんなに、親切にしていただいて・・」

「その お父様もやめなさい なんで 聡のことはお母さんなんだ ワシのこともお父さんって言ってくれ その方が親しみわくだろう?  いいよな 燿」

「もちろんよ 香波は私の可愛い妹ですもの お父様」

「うーむ 燿はそのままでいい 何かお父さんて呼ばれる方が気持ち悪い」

「それは お父様が そーいう育て方したからよ でも こんなにくだけたお父様 初めて見させてもらいましたわ」

 その日、燿さんは、私の横に布団を並べて、一緒に寝てくれた。私は、本当にこんなに甘えても良いんだろうかと思いながら・・・何にも考えないで、京都まで来てしまったけど・・・巌さんが止めるのを断って、バクにもお別れを言わないままに、引き寄せられるようだった。色々と、思い出しながら、あの人のことも・・・眠りについていた。本当に 違う人生が始まるのだ。

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