少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第7章

7-3

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 火曜日の朝もお弁当を届けるのに、生協食堂の前での待ち合わせが、何回か過ぎて、

「香波 いつも すまんな 負担じゃぁ無いのか? 無理すんなよ 生協だって安く食べられるんだから」

「いいの 少しでも、節約して それに、私の愛も入っているんだからね 夜もちゃんと食べてよー」

「うん いつも有難く それに、おいしいよ まわりのみんなも羨ましがってる それと、こっちのキャンパスは女の子 比較的少ないから 香波が注目の的になってる あの可愛い娘は何学部なんだって、聞いて来るヨ」
 
 私は、生協のメニューを見た時、驚いた。安くて、ボリュームもあるんだ。あんな値段じゃぁ、私にも作れないから、負けないようにボリュームのあるものを詰めているつもりなのだ。

 守衛さんとも、いつも、挨拶するから、顔見知りになって、その日は呼び止められ

「君は、ここの学生さんかい?」

「あっ すみません 私 ここの学生さんにお弁当を持って来ているだけなんです」叱られると思った。

「いや いいんだよ 不審者じゃぁないみたいだし いつも、元気よく明るく挨拶してくれるから 話かけたくなっただけだから」

「うふふっ 安心した 叱られるんかと思ったから」

「あぁー 悪い 悪い その学生は幸せじゃのー こんな可愛い笑顔で・・」

「うん 私も 幸せなんだー じゃぁねー これからも、元気にご挨拶できまーす バイバーイ」

 その夜、私は、お姉ちゃんと夕ご飯の用意をしていて、食卓に蛤のおツユを運んで「はーい ドレミのおすましでーす」と、お父さんにお出ししていたら

「なんだぁー そのドレミって」と

「香波ったらね 蛤を入れていたら 開くのを見て、笑い出しちゃってね それから、はしゃいじゃって」

「だってね 順番にパカンパカンって ドレミの歌みたいに おかしくってー」

「ふーん そんなの おかしいんだな」

「香波ちゃんたらね 今朝、出たらと思ったら、直ぐに、戻ってきて「お母さん 出たら、猫が居てね びっくりしたみたいで、逃げていくときにあわてて、側溝にはまっちゃったのよー」と、笑いながら、わざわざ報告してくるのよ 本当に小さい子供みたいなの 可愛いらしいわー」

「そうか この頃 香波はいつも笑っているな― 眼が輝いている すごく 明るくてキラキラしておる」

「でも お父さん 私 今、とっても幸せなの 生きているんだと感じているの」

「そういう香波を見ていると ワシも元気が出てくるぞ」

「やっぱり 愛しの君に逢えると違うのねー」と、お姉ちゃんが、私は、顔が火照ってきていて、下を向いていた。  

 ― ― ― * * * ― ― ―
 
 次の日曜日、私は植物園に連れて行ってとおねだりした。巧さんは動物園って言って居たけど、

「今は、チューリップがきれいでしょ 藤なんかも見れるかもね それに、植物園の方が、ゆったりとしていて、腕組んで歩けると思ってさー」

 やっぱり、ゆったりとして、お弁当を広げることができた。芝生に座って

「心配しないで これ、インナーパンツついているから」私、短いラップスカートだったから

「別に 心配なんてしてないけどな やっぱり ドキドキするよ」

「うん お姉ちゃんがね ミニスカートなんて、若いうちだけだから、巧さんをドキドキさせてあげたらって」

「うーん お姉さんに感謝かな いや いつも 可愛いよ」

「ありがとう 巧に言ってもらえると うれしい」と、私は、もっと擦り寄って行った。

「ねぇ 教室って 女の子いるんでしょー」

「そーだね でも 1割くらいかなー」

「そう 仲いいの?」

「うー 別に 悪くはないよ 特別に仲がいいわけではないけどー」

「そう 私なんて 色気ないでしょ だから、誘惑が心配」

「そんなことないよ みんなが可愛いっていうんだからね」

「巧も そう 思ってくれている?」

「うん 香波は今のままで 充分 好きだよ」

「ふふっ 安心した 私も 好き 巧のこと」

「なんだよー あんまり 言わすなよ 照れるんだから」

「こんな幸せな時が来るなんて・・おばぁちゃんが見守ってくれているからなんかなー」

「そうだね いつか そろって お墓参りに行かなきゃな」

「うん お盆なんだけどね 実はね 誘われているとこもあるんだ お店に勤め出した頃ね、常連になってくれて、お兄ちゃんみたいな人 いつも、私を見守ってくれてね 今年、卒業して、実家の民宿を継いでいる レスリング部のホープだったんだって 怪我して、最後はやめてしまったみたいだけど」

「うーん 聞いたことがあるなー なんて言ったかなー レスリング部の星だって言う人 怪我したのかー」

「うん 多分 その人 ごっつくてさー でも 優しいの 彼氏に逢えるの祈ってるってー 逢えたら、一緒においでって おいしい魚喰わすからって 城崎温泉の先って言ってた」

「僕の知らない間に 人気者になっているんだね やっぱり 誰からも好かれるんだな 香波は」
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