少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第10章

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 年があけると、ウチでは例年どおり、新年のお祝いをして、平安神宮にお参りに行って過ごした。

「もう あと何年も こうやってみんなで過ごす正月もなくなるんだろうな」と、お父さんが、寂しそうに言っていたので、私は、その日はずーとお父さんの傍についていたのだ。夜の晩酌の時も少し お付き合いしていたのだ。

 次の日、京都駅で巧と9時に待ち合わせをしていた。お姉ちゃんには、旅行のことを打ち明けていて、一緒に東京のテイクアウトのお店を見に行くという口実で、お父さんとお母さんには説明をしていてくれたのだ。お父さんなんかは、本当のところをわかっているんだろうけど、別段 反対もしなかった。

 私は、グレーのキュロットスカートにチェック柄のボァのハーフコートとグレーのバケットハットにロングブーツで来たのだが

「香波 コートの下なんか穿いているのか コートが歩いてきたみたい」

「ちゃんと キュロット穿いているよ 心配ご無用 可愛って言ってよー」

「うん 可愛いい 振り返ってしまうよ」

「よーし 巧にだけ、ほめてもらえばいいんだー」

 お昼前に東京に着いて、私の希望で銀座から築地で立ち喰いのお寿司を食べた後、竹下通に向かった。私は、ティクアウトのお店とかどんなものが若い人に人気があるのか見てみたかったのだ。だけど、人通りは少なく、お店も閉めているところもあって、思っていたのと違った。お正月だからか感染するのが嫌なのかはわからなかったけど。

「もっと 東京って人が多いのかって思ってたけど、以外と少ないね」

「うーん みんな自己防衛を思っているせいも大きいよねー やっぱり でも、混んでて 感染なんかしたら大変だよ」

「だね だけど もう一か所 大久保に行きたい いいでしょ?」

「うっ コリアンかー?」

「うん 新しい食べ物 どんなものあるか見たいの お願い」

 その夜は浅草の近くでホテルを予約していて、チェックインした後、営業が早い目に閉まるかもしれないからと、直ぐにでて、関東の天丼を食べたいからと済まして、早々とホテルに戻ってきた。

 部屋のバスルームは壁もクリスタル調になっていて、ベッドルームからも見えるような感じだったし、私は

「ねぇ 一緒に入ろうよー」と、巧を誘って、バスルームに向かった。

 巧は少し遅れて入ってきた時、やっぱり、まだ、少し恥ずかしかったけど、私は、湯舟に一緒に浸かりながら、巧の膝の上で抱かれるように入っていった。お互いの身体を洗いっこしていて、私は彼のものを真面に見たのは初めてだったのだけど、バクのものも見ていたので、こんなふうなのかと・・・最初は少し抵抗があったけど、手に取って優しく洗っていたのだ。

「ふっ ふぅー 香波 あんまり そんなのぉー 出ちゃいそうだよー」と、巧が戸惑っているのが、私には、逆に可愛かった。

 お風呂から出た後も、窓からは、スカイツリーも見えて、私は、用意してきたお花のレースで飾られたキャミソール姿のまま、巧の膝の上で甘えていた。その夜、私は、今まで以上の快感で巧に身をゆだねて幸せを感じていたのだ。

 ― ― ― * * * ― ― ―
 
 3月になるとくるみちゃんが卒業で居なくなるので、新しいバイトの人を募集していて、採用のほうは私に任すといわれていた。お姉ちゃんは、最近お店のことは全部私に任せっきりで、一週間ごとに報告を聞くだけになっていた。

 ちょくちょくお店に買いに来てくれるお客さんの中で、2年生の大学生がやりたいと言ってくれたので、私は、直ぐに採用した。お姉ちゃんは履歴書の写真を見たとき、「ふーん」と、言ったきり、なんにも反応しなかったのだ。おそらく自分の好みに合わなかったのだろうけど、私は、そんなことは気にしなかった。反対されたら、お店のことを任せっきりなんだから・・と反論するつもりだった。お姉ちゃんは、そんなことになるのを避けたのだろうと、私は感じていた。

 そして、くるみちゃんの卒業式が近づいた時、お姉ちゃんがくるみちゃんの慰労会を開いてくれて、暁美さん、奈々ちゃんと私、それに新しいバイトの女の子の米原瞳ちゃんが参加して、すみれさんは出れないからって、就職祝いのプレゼントだけを預かっていた。

「くるみちゃん ご苦労様 あなたが頑張ってくれたから、だいぶ助かったわよ。香波とも仲良くしてくれたしね」と、お姉ちゃんが労うと

「いいえー 香波と楽しかったですよ 正直言って 店長だけの時は、怖かったから」

「あら そーかしら 優しくしていたつもりよ」

「ええ だから、余計に なんか怖くて・・ エヘッ」

「そうそう 私も そうだった でも、直ぐに慣れたけどね この人は美人すぎるから冷たい感じするんだとね」と、暁美さんも

「二人とも、そんなこと思ってたのー まぁ あなたは笑顔も素敵だから、ホテルに行っても好かれるわよ ねえ 結婚はまだ先なんでしょ?」

「ハイ 就職も決まったから、しばらくは仕事に集中しまーす」

「そうよねー でも、日曜もお仕事になるんでしょ 彼と会う機会が減るねぇ」

「香波 嫌なこと思い出させてくれるやん そーなんだけど、もう、しっかり掴まえているから平気よ 香波こそ、ちゃんと掴まえておかなきゃだめよ」

「うん 私たちは繋がっているから大丈夫だと思う」

「はぁー さては、ついに繋がったのー?」

「くるみのバカ 変な言い方しないでよ」私、ドキドキしながら、お姉ちゃんの顔を見てしまった。そうしたら、少し、笑っていただけだったけど・・東京での夜のことを見透かされているようだった。


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