少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第10章

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 冬の兆しが見えたころ、学生さんも少しずつ増えてきていていて、うちのお店も、少しだけだが売れゆきが戻ってきていた。木屋町のお店は、ずーと好調だったのだけど、寒い日には、客足が少し落ちてきていた。だから、暁美さんは暖かいコーンスープも売るようにしていたのだ。

 巧は、あれ以来、社会人になったらどこか借りなきゃなんないから稼がなきゃーと、バイトの時間を延長していたので、私達はあんまり会う機会が無くなってきていた。

 お姉ちゃんが、フランスの洋服のデザイナーと組んで、着物風のドレスを売り出すからと、そっちのほうにかかりっきりになって、私に二つのお店の経理から仕入れの交渉などを一切のことを押し付けてきたので、私は夜もそのことばっかりで、休みの日も仕入れ先の野菜農家さんのところに行ったりで、あんまり、巧のことも想っている暇もなかったのだ。

「どう、なんとかやっているみたいね お店のこと」久々にお姉ちゃんとお風呂に誘われたとき、聞かれた。

「まぁ なんとか でも、大変なんだよー 初めてのことばっかりなんだからー」

「そりゃー大変だろうけど、香波には良い経験になるよ」

「そんな 簡単に言うけどねー・・わからないことばっかーでさー 迷ってばかりだよー」

「それが、身についていくのよー 香波は私から見ていても もう、一人前の素晴らしい経営者よ でも、忙しくて 彼とは会えない?」

「うん 会えない もっとも、彼もバイトばっかりでー」

「そう でも、あんまり会っていても・・すること考えちゃうからね それも、大事なんだけど」

「なによ するって そんなのー 私・・」

「隠さなくってもいいじゃぁない わかるんだから なんとなく、雰囲気で 彼と あれからもしてるんでしょ?」

「・・・やだー お姉ちゃん・・ したよ・・ 抱かれて、彼のものになったの でも 一度だけネ」

「そーだよね 私 初めての時は香波に いろいろと教えてもらおうっと」

「だからー 私 そんなに してないってっ・・」 

 ― ― ― * * * ― ― ―
 
 12月も半ばになった頃、くるみちゃんが

「香波 ウチ等 お正月休み 彼がね スノーボード連れて行ってくれるんだー 白馬 ウチ したことないけど、彼が教えてくれるって 香波はなんかないのー 彼と」

「何にも 考えていない だって お泊りなんてー」

「あのさー まだ そんなこと言ってんのー 早く、彼にあげちゃいなさいよー 向こうだって いじいじ してるってー どこか 素敵なところで愛してもらいなさいよー ねぇ その時の可愛いのん ランジェリー あげよーかぁー? 持ってないんじゃぁない?」

「そーだよね 考えておく」

 まだ、巧とのことはくるみちゃんには内緒にしていた。それに、実際に、私 巧と泊りに行くなんてことお父さん達に言えなかった。また、くるみちゃんと遊びに行くってウソをつこうか、どうしょうかと迷っていた。

「ねぇ 巧 お正月休み どこか いこー」

「なんだよー どこかって」

「巧と一緒ならどこでもいいんだぁー ずぅーっと 一緒に過ごしたいの 甘えていられるから」

「どこかって言っても もう 観光地なんか予約とれないよー  それに、今は感染が 危ない」

「うーん だったら 街のホテルでもいいよ すいているんじゃぁない?」

「と いってもなー 最近はシティホテルも・・ 香波 東京行ったことないだろー どうだ?」

「ウン そーしよー 行きたいー」

「うーと じゃー 2日の日にな どこか泊まるとこ探しておくよ」

「ううんー 私が探しておく 行きたいとこもあるしー 新幹線も取っておくね」

「そうかー じゃー」

「そのかわり 全部 私に付き合ってよね 文句言わないって約束よ!」

「なんだよー それ! どこだよー 変なとこで 感染されるのって嫌だぜー」

「う~ん これから 考える」と、その時 くるみちゃんが言っていたように 可愛いのんって 考え始めていた。

 その年の年末、31日には、すみれさんとこのものを出した後、お店の掃除を終えて、お昼過ぎに家に戻って、門扉とかお庭を掃除して歳の瀬を迎えていた。このおうちに来て もう 4度目の新年を迎えるのだ。あの時、不安を抱えながら出てきた私を燿さんが拾ってくれて・・・今の生活があるのだと、感謝していた。
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