少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第12章

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 待ち合わせの三条大橋の袂のコーヒーショップに着いたら、巧が先に来ていた。

「やぁ 昨日 お父さん・・より お姉さん 大丈夫だったか?」

「うん 寝る前はバタバタしてたけど、朝はケロッとしてたよ」

「そうか 見た目より、飲み出すと意外と乱れてくるんだなー 前もそうだったみたい」

「そう 酒乱気味ね ああ見えても、普段のストレスがあるのかな ウフッ」

 そこに、有沢一さんが・・学生の時と変わっていない。

「おぉー 香波ちゃんも・・ すこし、大人びたかな きれいになったよ」

「ありがとう 有沢さん 変わんないわよー」

「それは いいことなんかどうかなー 社会人なんだからー」と、巧が言っていたけど、確かに、巧に比べると、まだ、学生みたいなのはどうなんだろうと思った。

「はじめ 僕たち結婚することになった この春」

「そうかー やっとかー 良かったなー 香波ちゃん おめでとう」

「うん やっとね でも、島を出てきて あっと言う間だったわ」

「だね あのお店で最初に 香波ちゃんを見た時 まさかーと思ったもんなー」

「うん 僕も まさかと思った 信じられなかった 幻かともね」

「昨日も 話出たんだけど 巧ったら 最初、私を見ても知らない子だと思って無視してたんだからね」

「だからー 謝るよ でも 仕方ないじゃないか あんなに可愛く変身していたし まさかと思うよ」

「うふっ そんなに可愛かった?」

「あぁ 今もな」

「あのさー イチャイチャするの止めてくれよー こっちは、まだ、彼女に縁がないんだから」

「そうなのー 有沢さん もてそうなのにね 優しいし」

「そう言ってくれるの 香波ちゃんぐらいかも知れない 周りが女っけなくてなー」

「だから まだ 学生みたいな雰囲気なんだー」

「そーかなー 今年は婚活パーティにでも出てみるかなって思っている」

「高学歴 高収入 顔もまずまず 直ぐに、女の子のターゲットになるね」と、私は、一応ほめておいた。だけど、この人なんとなくいざという時、頼りなく感じるんだ、悪くない人なんだけど、だから、最初に会った時も私は何となく頼りになる巧に魅かれてしまったんだ。

 その後、3人で海鮮居酒屋に行って、

「あのな はじめ 僕たち 式は挙げるけど 披露宴は延期なんだ このご時世 出来ないんだ」

「そうかー だろうな そりゃー 残念だけど仕方ないよなー 香波ちゃんのきれいなの見れないんかー」

「改めて 落ち着いたらするから そん時は来てくれよな」

「もちろん でも 喜びも半減するだろー」

「そんなことないですよ 私 やっと 傍にずーっと居られるし」

「香波ちゃん 本当に幸せそうだよ 安心した 波が押し寄せる岩場を飛ぶようにしていた男の子とは、とても 思えないよー」

「・・・はじめさん 巧の親友じゃぁなかったら 水をぶっかけてるよー」

 — — — * * * — — —
 
 私、成人式は取りやめってことになったので、お誕生日に近くの馴染みの洋食屋さんで、お父さんがお祝いをしようと言って、家族で祝ってくれた。

「香波 やっと 成人だな でも、もう直ぐ 嫁いでしまうんだなー ワシにしてみれば 早すぎるけどな 世間で言うと やっと 二十歳なんだぞ」

「お父さん 近くにいるんですから・・ ちょくちょく お世話になりにいきますよ」

「そうしてくれ 珠に 散歩でもせんと老け込んでしまうからな」

「やだー お父さん そんな風に言わないで 私も楽しみにしているんですから」

「お父様 これからは 私も 時々 香波の代わりしますから・・」と、お姉ちゃんも珍しいことを言っていた。

「燿 どうした風の吹き回しなんだ」

「まぁ お父様 私も娘なんだってこと 忘れているんじぁなないですの!」

 それから、数日後、私はお母さんと一緒に衣装を選ぶために出掛けた。その時、色打掛とドレスで巧と写真の前撮りとかで、お庭で撮影もしたのだ。色打掛は西陣の唐織のもので、帯屋さんの仕事仲間からお借りしたもので、最高級の物だという。帯も勿論、帯屋にある最高級のものなのだ。私は、無理にお願いして、巧と再会した大学の構内でも撮った。そして、キャンセルが出たからと、式の予定が1週間程前の土曜日に早くなった。

「巧さん 新居 決まったの?」と、お母さんが

「はぁ まだ 良いところが無くて 空いていても1階とかで・・」

「そう でもね 香波ちゃんに持たす、電気製品とか 選ばなきゃあなんないんですからね いきなりっていうのもね・・ 早い目にね 今のことだから タンスは要らないんでしょうけど 何が必要なのかわからないでしょ お布団だって ベッド用と床に敷くのじゃぁ違うし・・猫の子を送り出すんじゃぁないですからね」と、珍しく強い口調で・・。巧も頭を下げるしかなかったみたい。

「香波 猫の子だと思っていたけど 知らない間に 虎の子になっていたみたいだな」

「そうよ 虎の子 でも 巧の前では 猫の子になって 甘えるからね」いよいよ 巧さんのお嫁さんになるのが、現実となってきていたのだ。
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