『沈黙するグラス』 ~5つの視点が交錯する伏線回収型ミステリー~

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沈黙するグラス

【第4話】誤認容疑者視点: 「疑惑のオーナー」

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俺は信じられなかった。

 いや、正確に言えば「やっぱりな」と思った。

 探偵助手が告げた。「オーナーの藤倉俊一、あなたも事件に関与している可能性があります」と。

 バカげた話だ。

 俺はこの店、「ル・ソレイユ」のオーナーだ。事件当日、俺は経営のことで頭がいっぱいだった。厨房のことはシェフに任せていたし、ウェイターの動きまで気にする余裕はなかった。

 それなのに——

 毒殺事件の「共犯」として疑われることになるとは。

1. 疑惑の目

 事件の夜、俺は店の奥で書類整理をしていた。売上を確認しながら、来月の経営方針を考えていた。

 だから、南條修司が倒れた瞬間も、俺は直接は見ていない。警察の事情聴取を受けたが、俺は疑われることはなかった。

 それなのに、なぜ今になって俺が「事件の鍵を握る人物」だとされるんだ?

「藤倉さん、監視カメラの映像を見てください」

 探偵助手が再生した映像には、事件の直前、俺がウェイターの木島と短く会話を交わす様子が映っていた。

「この時、何を話していたんですか?」

「ちょっとした指示だ。客の席の確認とか、そんな話だ」

「ですが、その直後に木島さんは厨房へ行き、毒入りのグラスを持ち出しました。これは偶然でしょうか?」

「……」

 言葉に詰まる俺を、探偵助手が鋭く見つめた。

2. 疑念と焦り

 確かに、俺は木島に指示を出した。

 でも、それは「南條のテーブルのサービスが遅れているぞ」と言っただけだ。ワイングラスを変えろとは言っていない。

 それなのに、なぜ木島はあのグラスを選んだ?

 俺は焦った。

「高梨が毒を仕込んだのは事実です。しかし、それを南條さんの前に確実に置かせるには、誰かの指示が必要だった。そして、その指示をしたのがあなたではないのか?」

「……そんなバカな」

 俺は頭を抱えた。

3. もう一人の影

 しかし、ふと違和感がよぎる。

 事件の日、もう一人、不審な動きをしていた人物がいる。

 ——木島だ。

 彼はなぜ、俺の指示をあそこまで正確に理解し、グラスを持ち出したのか?

「まさか……」

 俺は全身に悪寒が走った。

 俺は利用されたのか?

「藤倉さん」

 探偵助手の声が重く響く。

「この事件、まだ終わってません」
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