15 / 89
15話 魔王とキノコ少年
しおりを挟むしかし……困った。
何が困ってるかというと、魔導水晶板の『監視』の機能が上手く作動しない。
魔法電波はなぜか圏外、ぜんぜん使い物にならない。
これはもしかしたら敵対勢力の妨害電波のせいだろうか?
ユーナにDMしても、やはり『送信されませんでした』の文字が出るし。魔導通話もできない。
おかげでユーナの動向がまったくわからない。私の心配は募るばかりだ。
……そこでッ!
私は今回の協力者として、ある男を作戦メンバーに抜擢していた。
そう、ヤツだ。
見た目はゴリラ、頭脳はぼちぼち! 四天王最弱と揶揄される、ここ最近は空気感まっしぐらのエツィー・ドゥガーである。
「エツィー、ユーナの姿が見当たらない。そこで、お前がゴリラ時代に大自然で培った野生の勘が今こそ必要だ……! 頼むぞ」
「はっ! お任せください。必ずや勇者殿を見つけだしてみせるゴリよ! ……見つけだしてご覧にいれます!」
そんな感じで、屈強そうな戦士スタイルの装備をしたエツィーが冒険者たちに聞き込みを開始する。
しかし、結果は散々だ。
ゴリッゴリのゴリラ風味のエツィーが、『ワガハイに探せないものなどないゴリよ!』と、イキっていたのはいいものの、やはりというか、エツィーの顔が厳つすぎて冒険者たちはドンがつくほど引いている
冒険者たちがビビッて会話にすらなっていない。
見ろよ、みんな顔が真っ青になっとる。
恐怖と絶望で泣き出す新米冒険者さえいるくらいだ。
おかげで情報がまったく手に入らない困った。
ほんとのあいつは、気は優しくて力持ちなんだが……。四天王最弱なのに、インパクトだけは最強なんだよなあ。
一応、あいつに人族と接するための、『変装』と『擬態』の魔法はかけたんだけどまっっったく! 意味がなかった。
「はぁ……困った……! 今もこうしている間に、ユーナがボケカス超クズドエロ変態冒険者の毒牙が忍び寄ろうと……ああ、心配で心配でたまらないッッ」
私がぶつぶつと思考を漏らしていたその時だった。
近くから、男の声がした。
「…………誰だ貴様は」
振り返ると、爽やかな美少年が目の前にいた。
身長は小さい。
クリーム色のボブヘアー、長いまつ毛。
少しタレ目の、ショタなら身悶えするような男の子だ。
しかし私はショタでもなければ、BL大好き系腐れ魔王ではない。
私が眉をしかめると、目の前のキノコは口を開いた。
「こんばんは。えっと、何かお困りのように見えたから……声をかけてみちゃいました、あはは」
「……ほう、貴様。まさか読心術の使い手か?」
「ち、ちがいますよぅ。なんか困ってるのかなって思ったから……」
「ふん。あぁ、たしかに困っている。だが私はキノコに心配されるほど落ちぶれ……」
待て。落ち着くのだ私よ。
エツィーが使い物にならん今、このキノコの登場はラッキーだ。
せっかくだから、好意的になってくれるこの人族の少年を利用させてもらおう。
どうやらコイツは私が魔王だとわかっていないのだバカめ! くっくっく、黒ヨーケス……!
「……すまん、取り乱して失礼を少年。どうか許してほしい」
「う、うん……だ、大丈夫ですけど」
「実は……私の大事な女性が見当たらなくてな。ドチャクソ心配しているところなんだ。冒険者というのはガラの悪いヤツも多い……彼女がもしイタズラされてたらと思うといてもたっても……ん? ところで少年、君のその風貌はまさか、冒険者か?」
「あ、はい……いちおう、ボクは冒険者でこう見えてレベル50のまほーつかいなんです」
「ほぅ……! それは高いのか低いのかよくわからんが、褒めて使わそう。大義だな少年」
見た目すっごい少年なのに、たぶんこのキノコは冒険者としてはまぁまぁやれてる方なんだろう。
キノコのくせに。
「な、なんかいきなり褒められて照れちゃうな……と、ところでお、おにいさん。探してる人はこのギルドにいるのですか?」
「む? おそらくそれは間違いない。ここに来てから急に……コホン!」
私は、魔導水晶板の『監視』機能が動かなくなった、と言いかけそうになるが咳払いをして飲み込んだ。
こいつら人族に、魔王軍の企業秘密を簡単に教えるわけにはいかない。
すると、キノコは私を見上げて言う。
「じゃあボクも一緒におにいさんの人探し手伝ってもいい? 実はボクも人とはぐれちゃって」
「ふふ、よきにはからえ。一人より二人の方が効率的だからな、少年よ。君は賢いな」
私とキノコは並んで、広い冒険者ギルド内を歩き始める。
……近くで見ると、本当にキノコにしか見えない。
「少年、名前はなんというのだ?」
「ぼ、ボクの名前はマッシュ・ルムゥです」
「そうか、私はまお……コホン! 私の名前はヨーケス・ブーゲンビリアだ」
「ヨ、ヨーケス……? なんか魔王みたいな名前ですね……!」
「バカだなキノコ。貴様、考えが浅いぞ。その飛び抜けて浅い考えは……そうだな。まるで貴様のこれまでの人生を垣間見るような発言だ。いいか? 同姓同名な者は世界にごまんといるんだぞ?」
「あ、そ、そうでしたね! いきなり〝魔王みたい〟だなんて、失礼なことを言ってごめんなさい!」
「まぁいいさ。キノコよ、そんな小さなことは気にしなくていい。私はその程度の無礼を気にするほどちっちゃくはないのだから」
まあ、私は魔王軍の頂点にして魔王なのは事実。
失礼も何も、普通に魔王ですし?
それに、些細なことで怒るほど私は子供ではない。相手は子どもだし。
烈火の如く怒り狂って、四天王をいつも燃やすのは内緒だ。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる