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29話 魔王はブレない、絶対に

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「…………ちゃま?」

 ……ん? 

「魔王ちゃま? ちゃんと聞いてまちか?」

 きょとんとした顔のロリエラが、猫耳をぴょこぴょこ動かしながら私に言った。

 ……しまった。まったく聞いてなかった。

 とはいえ、心配をかけるわけにもいくまい。

 心配そうに覗き込んで見てくる四天王ロリエラに、私は「う、うむ」と、とりあえず答えておく。

 そうだった、私は【ユーナのレベルを上げさせない作戦】の、経過報告を私は受けている最中だったんだ。

 いろいろと起こりすぎて、頭がボケっとしていたのか……いかんいかん。

 私は魔王軍の頂点にして魔王。いつだってクレバーな男でいなければならないのだ。

 と、その時だった。

 ビコン! と私の魔導水晶板にDMの通知音が鳴る。

 表示された相手は、大聖女シャンプル・リンスルからだった。

『魔王さん、お久しぶりです。あなたの未来のお嫁さんのシャンプルです♡ ところで今日、お暇だったりします?』

 頭のイカれたぶっ飛んだメッセージを見て愕然とする。

 先週シャンプルと連絡先の交換をしたのだが、相変わらず彼女の暴走モードは継続していた。

 私の未来のお嫁さんはユーナなんだが?

 マジでなんなんだ? このコ……! 勝手にいろいろ決めつけるとか、怖すぎるだろ。

 というか、あれから頻繁にシャンプルから連絡が来るのだが、ちょっと内容が怖いというか、怖い。

 何度かDMで注意したのだが、『恥ずかしがらなくていいんだよダールン♡キャピ』とか返信来るし。

 彼女の思い込みの激しすぎる性格は治らないようだ。

 ていうか、〝ダールン〟てなに。

 一文字間違えてるよもう。

 私は彼女のメッセージに返信の魔法文字を打つ。

『すまないが、暇ではない』

 と、送信すると即座に既読がつき、シャンプルから速攻で返事が来る。

『えっとね、この間オシャレなカフェを見つけたので一緒に過ごしたいな』

『私にはユーナという名のハニーがいる。他を当たってくれ』

『すっごい楽しみ! ねぇダールン、何時ごろおしごとおわるの?』

 話が噛み合わないというか、聞く耳を持たない系女子からのお誘いメッセージ。そしてお決まりの〝ダールン〟で、もう私イヤになるんだけど。

 そういえば、キノコからも何度か私を食事に誘うメッセージはあった。

 しかし、私はこれらの誘いを全力で断っていた。

 私が好意を抱いてるユーナからのお誘いなら話は別だ。絶対に断ることはない。
 だが、ユーナ以外の者からの誘いを受ける気には到底なれない。

 なぜなら、私のユーナへの気持ちは、一途に真っ直ぐだからだ。ブレることなど絶対にない。

 すまんな、シャンプル。私はユーナ以外を愛せない。

 ゆえに私は、シャンプルからのメッセージをそっ閉じするのだった。
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