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39話 腐りあう大魔法使いと大聖女
しおりを挟むガタッ……! と、音を立てる椅子を下げて、私が立ち上がろうとしたその時だった。
シャンプルは煌めく銀髪をふわりと掻き上げながら、キノコを見下ろして言う。
「マッシュ、人様のプライベートに口を出すなんて無粋ですわよ? なんてデリカシーのない大魔法使いなのかしら?」
『いや……シャンプルよ、お前も大概だが』
「いや、だってさ?! 勇者パーティーの、しかも神聖なる大聖女が魔王軍の頂点に座する魔王とデートしてたら……世間的には大問題だよね?」
『キノコめ……やはり気がついていたか……』
「そうかしら? わたくしが誰とデートしたって、世間様にもマッシュにもぜーんぜん、関係ありませんけど? 仮に、わたくしが魔王さんとデートしたとして、勇者様にも迷惑かけませんし? というかむしろ、わたくしと魔王さんが恋仲になったら人間と魔族の戦いが平和的に解決するんじゃなくって?」
キノコの攻撃的な発言もなんのその。シャンプルの切り返す言葉とリアクションが濃い、濃すぎる。
彼女の、私に興味がありまくりなことがダダ漏れである。
火花散るキノコとシャンプルの視線。
「くっ……! あのさシャンプル……! 忘れたの? ヨーケスおにいさんはボクにマフラーとマントをくれるほど、ボクのことを気にかけてるってことを!」
「物をいただいたからって、それがどうかなさったの? 大事なのは二人で過ごした密のある時間だとわたくしは思うのですけど?」
二人の会話に、私は心の中でツッコミを入れながら……。
キノコ、私は別にお前を気にかけてない。
むしろ気にかけてるのはいつまで経っても返してくれないマフラーとマントだ。
そしてシャンプル、私は君と密な時間を過ごしてない。変な誤解を生む発言はやめてほしい。
そんな、互いに一歩も引かず歩み寄りの見えないキノコとシャンプルの会話は続き……妬み、という感情が二人を支配していった。
そんな二人を見やるユーナは、両手の拳を握りしめ、プルプルと打ち震えていた。
そりゃあそうだろう。仲間たちの罵り合いほど、見るに堪えないし聴きたくないものだ。
……ユーナ、私にはわかる、わかるぞ? その気持ち。
声を張り上げる二人に、見るに見かねた私が彼らに話しかけようとふたたび席を立とうとすると。
「いい加減にして! マッシュもシャンプルも……いがみ合ってケンカばかりしよるなら、ユーナは二人とも仲間にいらん! 心配しちょったのがバカみたいッッ」
……気づいたら私より先に、大きな声を出してユーナが立ち上がっていた。
「ユーナちゃん!?」
「勇者様!?」
「ウホッ!?」
「……もうみんな知らないッ!」
そう言ってユーナは涙を拭い、肩を怒らせながら二人と一匹から走り去るのだった。
☆★
それからしばらくして──
ユーナは冒険者ギルド内にある手洗い場の前に立っていた。
「……はぁ。イヤになっちゃうなあ……」
あたしは鏡の前に両手を乗せて、呟いた。
鏡に映る目は真っ赤に腫れている。
自分の顔なのに、目を背けてあたしは言った。
「なんなの。マッシュもシャンプルもなんであそこまでヨーケスのこと好いとるの? しかもシャンプル、あんな堂々として……ユーナだって、ほんとはヨーケスが魔王じゃなかったら……」
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