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47話 ご褒美は胸キュン
しおりを挟む「……魔王ちゃま、これがゆーしゃちゃんだけが抜ける伝説の剣なんでちか?」
ロリエラが猫耳を垂らし、小首を傾げて私に言う。私は彼女を見下ろし、答えた。
「らしいな。台座にはそう刻まれている」
「……で、この剣をゆーしゃちゃんがひっこぬきやすいよーにすればいいんでちね?」
「その通りだ。ユーナがこの剣を抜くことは世界平和に一歩近づくらしい」
私は目の前にたたずむ伝説の剣をまじまじと見つめながら、ロリエラに言う。
さて、指示を待っている【SLAT】はというと……。
「ロリエラ大佐、ご命令を!」
「うむっ! しょくん、聞いてのとーりでち! 現刻よりじょーきょーをかいちするでちよ!」
「「「ヤー!」」」
「ゆーかんなるしょくん。にんげんたちとのたたかいに、まおーぐんのあたちたちがピリオドを打つ英雄となるんでち! さぁ、勇気とスコップとツルハシを持て! 行動開始、伝説の剣エクスカリバーのまわりをほじくりまくるでちよ!」
「「「サーイエッサー!」」」
魔王軍において、誰もが一目置く存在と揶揄される四天王の一人であるロリエラ。(私はたいへんな変態たちとして一目というか、目が離せないというか)
その声に呼応して、特殊部隊の精鋭たちが敬礼をすると、すぐさま全員が伝説の剣の周辺を掘り起こし始める。
ある者はスコップで台座周りを掘り起こし、またある者はツルハシで台座を破壊している。
するとだ。
もの凄い速さで【伝説の剣・エクスカリバー】が刺さっている台座が粉砕されていく。台座の破片が飛び散っていき、その破片が積もって小さな山を築いていた。
「ロリエラ……すごいなアイツら」
「いやいや、まだまだこれからでちよ? ゆーしゃちゃんが触れただけで抜けちゃうくらい、かんぺきに仕上げてやるでち!」
鼻をふんすと鳴らし、得意げにロリエラは言った。
それを聞いて、私は嵐のように掘削作業をするロリコンたちを見ながら、
『伝説の剣……掘りすぎて倒れたりしないだろうか』
と、心の中で思うのだった。
そして。
「すごいな……あっという間に台座が半壊していく……見る影もなくなっていくではないか」
「魔王ちゃま? これでも時間かかりすぎでちよ。じょうきょーかいしから、もう約いちじかん……なかなかてごわい台座でちね!」
──ロリエラがそう言ってから、どれくらい時間が経過しただろうか。
私が特殊部隊の作業を見守ることおよそ2時間くらいか? いや、そんなに経っていないと思う。彼らの作業は早すぎて残像が見えるほどだった。
そしてさらに数分後──【伝説の剣・エクスカリバー】が刺さっている台座はほとんど無くなり、剣の半径3ミリほどになっていた。
見た目にもすぐ抜けそうなほどだ。心なしかエクスカリバーが風に吹かれてユラ……と揺れているようにも見える。
すると、
「ロリエラ大佐! 任務完了致しました!」
特殊部隊の隊長がロリエラに向かって敬礼すると、ロリエラは「うむ! ごくろうでちたみなのもの!」と言いながら右手の親指を立ててウィンクしていた。
うんうん、部下を褒めることは上司として大切なことだ。良い心がけだなロリエラよ、後でナデナデ、首元ゴロゴロの褒美をしてやろう。
もちろん、特殊部隊の者たちにも特別報酬を与えよう。
私も魔王軍の頂点にして魔王。ロリエラの上司だからな、彼らにねぎらいの言葉をかけるのは当然だと思う。
「皆、素晴らしい働きだったな。私は感動したぞ? お前たちに何か褒美を取らせたいが……何か欲しい物はあるか? 遠慮なく申すがいい」
「は! 魔王様! では我々【SLAT】としてはロリエラ大佐の萌えを希望いたします!」
「も、萌えだと!? そ、それはどうしたら良いのだ」
「はっ! 魔王様の『変装』の魔法でロリエラ大佐をぜひ、プリチーでキュアっキュアな猫耳女学生へと変えていただきたいのです!」
「……えっ……うん、まぁ……そんなことで良いのか……?」
マスク越しでわからないが、その口ぶりからきっとヤツは目をキラキラさせているような気がする。
……簡単かつ、特殊で変態な内容だが、まぁいいだろう。
私がロリエラに確認すると、コスプレについては問題ないそうだ。二つ返事で了解を得る。
ロリエラも、この程度で魔王軍の者たちのモチベが保てるなら是非もないことだそうだ。
ほんと良くできたニャンコ娘である。
私はロリエラに身体を向け、彼女の瞳を見据えて言う。
「ロリエラよ、彼らに萌えキュンさせる準備はいいか? セリフの練習は?」
「だいじょーぶでちよ? 魔王ちゃま、どんとこい!」
私はロリエラに手をかざし、『変装』の魔法をかける。すると、彼女の身体は眩い光に包まれていき、やがて──変身したロリエラが姿を現す。
胸元に大きな赤いリボン。ダークブルーのブレザーに赤と白のチェックのスカートをひらひらさせて。
ニーソのロリエラが、ノリノリでチェキをしていた。
「にゃんにゃん♪ みんな今日はがんばったでちねっ♪」
「「「うぉおおおおおおおお!」」」
「「「萌え、むしろ萌えぇえ!」」」
「「「萌えぇええええええ!!」」」
すると、特殊部隊の者たちが歓喜の絶叫をあげる。中には感極まったのか、グスングスン……と泣き出す変態もいた。
マスクをしているのにもかかわらず、涙を拭うそぶりには正直アホらしく思う。
「すごい、すごいです魔王様……! なんとクオリティの高いコスプレ魔法……感動しました!」
「ロリエラ大佐ぁあああ! こっち向いてください!」
「可愛すぎて萌え死にそうだ! 萌えぇええ!」
猫耳娘の女学生のコスプレ姿に狂喜乱舞するロリコンたち。そして、まんざらでもないロリエラがノリノリで可愛らしいポーズをサービスする一方で……。
「……良かったなおまいら……」
と、私はぽつりと呟く。
そして、私と【伝説の剣・エクスカリバー】はその異様な風景を、呆然として静かに見つめるのだった──
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