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52話 ノゾッキーのてへぺろ
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【猛毒の泉トラッフグを浄化しろ! なんなら回復の泉に変えてしまえ! モンスター? 駆逐しろ! 毒属性の魚は浄化して、美味しい魚にしてしまえ!】
と、命令を魔王軍に下してから翌日。
私は『猛毒の泉トラッフグ』に訪れていた。
ここはかつて、初代魔王ネクラデスが人間たちを苦しめるために毒魔法で汚染した場所であり、毒属性を持つモンスターや魚類のいる危険地帯だ。
「あ、魔王様! ご苦労さまです!」
「うむ、みんなご苦労。経過報告をしたまい」
ビシッ! と敬礼をする特殊部隊の一人に私は声をかけていた。
彼らはエルフ族で構成されていて、状態異常を引き起こす魔法や物質の検知や除去……あるいはバイオテロなどに対抗するための部隊、通称MSS(魔王軍セキュリティーサービス)だ。
真っ白な全身防護服に身を包みながら作業をしている。
水に触れて浄化魔法をかけている者、毒消し草を液状にして泉に注入してる者、モンスターを駆逐してる者などさまざまだ。
中には回復魔法を垂れ流す『賢者の石』を泉に投げ入れてる者もいる。
なるほど、おかげで濁り淀んでいるとされる泉が少しずつ澄んできているのがわかる。
なんでも、MSS隊員の話では、浄化が終われば泉に生息する魚類も自然と浄化され、美味しい魚になるんだとか。
中でも猛毒を持つ虎のような顔をした魚、〝タイガーフグ〟は無毒化されれば高級食材になる見込みもあるとのこと。
うん、これはいい。ユーナもきっと喜ぶだろう。人間たちが舌鼓を打つ料理になるのだからな。
私がそんなことを隊員と話しているその時だった。
先日ぬっころしたはずの四天王の【ビエル・フダンスィ】が、私の前にぬっ、と姿を現した。
「ん? 魔王様来てたのか。ていうか、こんな危険な場所に顔を出すなよ」
「……お前、なんでいつも平気な顔して復活してるの? 私は自分の魔法に自信無くすんだけど」
一昨日の晩に、私は全力で〝煉獄の炎〟をビエルに放ち、地獄の底へと送り込んだはずなのに……!
ビエルは長い金髪をかきあげながら私に返す。
「ふっ……! いつも言ってるだろう? 恋の炎でヤケドするくらい、四天王の俺にはわけないさ」
「くっ……! 減らず口を……ふん、まぁいい。浄化作戦は順調に行っているようだからな」
するとだ。
私がビエルと話していると、もう一人のいけ好かないあんちくしょーがやってくる。
〝ドヤッター〟でここ最近私のことを盗撮してはディスりまくっている、スーツ姿にサングラスをかけたオーガ族のアイツ、四天王【ノゾッキー・トサッツー】だ。
「ノゾッキー……なんでお前も平然として生きて……! まぁいい、なぜお前もここにいるんだ?」
「ご苦労さまです魔王様! セッシャが居るのはそう、見張りですよ。神託の勇者ユーナがこのトラッフグの泉に迫ってますからねぇ? って、さっさと作業を終わらせないと勇者御一行が現れちゃいますよ?」
ノゾッキーがサングラスをクイッ、と持ち上げて魔導水晶板をチェックしている。
「なんだと!? 早すぎるぞそれは……!」
まずい。
今、魔王軍は全力で猛毒の泉トラッフグの浄化とモンスターの駆逐をしている。
もし私たちがここにいるのをユーナが目にしたら……?
せっかく彼女が受けた依頼を私たちが横取りしてるようなものだ。きっと残念がる。
望ましいのは、私たちがさっさと浄化作業とモンスター討伐を終わらせ、成果をそれとなくユーナに譲るのが理想なのだから。
私がそう考えているその時だ。
「仕方ない、ここはセッシャの出番ですかな!」
得意げに言うノゾッキーは魔導水晶板に、何やらポチポチと魔法文字を打ち込んでいく。
私はノゾッキーに、何をしているのか尋ねた。
「ノゾッキー、お前一体何をしているのだ……?」
「そりゃあ、決まってます。勇者御一行の足止めです。このフォロワー数10万魔族のセッシャの力を持ってすれば……拡散キボンヌ、送信!」
その言葉が終わると同時に、私は魔導水晶板で〝ドヤッター〟のタイムラインを確認する。
そこにはこう記されていた。
【ノゾッキー・トサッツー@魔王軍四天王! 現在撮影中!】
【俺巨根の宣材動画撮影のため、猛毒の泉トラッフグはしばらく閉鎖しております♪ by魔王軍】
これを見た瞬間、私はノゾッキーの頬を張った。渾身の力でパン! パン! と往復で2回。
ノゾッキーは殴られた頬を手でおさえ、小刻みにぷるぷると震えていた。そして、懇願するように私を見上げる。
「ぶ、ぶったね! 2回もぶったね! 父さんにもぶたれたことないのにぃッッ」
「知らん! 言いたいことはそれだけか? お前、これではユーナに私たちがここにいるとバラしてるようなものではないか!?」
ノゾッキーを見下ろして言うと、ノゾッキーはうるうるとした瞳で私に気まずそうに告げる。
「て……てへぺろ!」
その言葉を聞いた瞬間……私はノゾッキーに全怒りを込めて、煉獄の炎を放つのだった。
ったく、余計なことをしてくれる……!
ユーナが来るまでに、なんとかしなければ……!
と、命令を魔王軍に下してから翌日。
私は『猛毒の泉トラッフグ』に訪れていた。
ここはかつて、初代魔王ネクラデスが人間たちを苦しめるために毒魔法で汚染した場所であり、毒属性を持つモンスターや魚類のいる危険地帯だ。
「あ、魔王様! ご苦労さまです!」
「うむ、みんなご苦労。経過報告をしたまい」
ビシッ! と敬礼をする特殊部隊の一人に私は声をかけていた。
彼らはエルフ族で構成されていて、状態異常を引き起こす魔法や物質の検知や除去……あるいはバイオテロなどに対抗するための部隊、通称MSS(魔王軍セキュリティーサービス)だ。
真っ白な全身防護服に身を包みながら作業をしている。
水に触れて浄化魔法をかけている者、毒消し草を液状にして泉に注入してる者、モンスターを駆逐してる者などさまざまだ。
中には回復魔法を垂れ流す『賢者の石』を泉に投げ入れてる者もいる。
なるほど、おかげで濁り淀んでいるとされる泉が少しずつ澄んできているのがわかる。
なんでも、MSS隊員の話では、浄化が終われば泉に生息する魚類も自然と浄化され、美味しい魚になるんだとか。
中でも猛毒を持つ虎のような顔をした魚、〝タイガーフグ〟は無毒化されれば高級食材になる見込みもあるとのこと。
うん、これはいい。ユーナもきっと喜ぶだろう。人間たちが舌鼓を打つ料理になるのだからな。
私がそんなことを隊員と話しているその時だった。
先日ぬっころしたはずの四天王の【ビエル・フダンスィ】が、私の前にぬっ、と姿を現した。
「ん? 魔王様来てたのか。ていうか、こんな危険な場所に顔を出すなよ」
「……お前、なんでいつも平気な顔して復活してるの? 私は自分の魔法に自信無くすんだけど」
一昨日の晩に、私は全力で〝煉獄の炎〟をビエルに放ち、地獄の底へと送り込んだはずなのに……!
ビエルは長い金髪をかきあげながら私に返す。
「ふっ……! いつも言ってるだろう? 恋の炎でヤケドするくらい、四天王の俺にはわけないさ」
「くっ……! 減らず口を……ふん、まぁいい。浄化作戦は順調に行っているようだからな」
するとだ。
私がビエルと話していると、もう一人のいけ好かないあんちくしょーがやってくる。
〝ドヤッター〟でここ最近私のことを盗撮してはディスりまくっている、スーツ姿にサングラスをかけたオーガ族のアイツ、四天王【ノゾッキー・トサッツー】だ。
「ノゾッキー……なんでお前も平然として生きて……! まぁいい、なぜお前もここにいるんだ?」
「ご苦労さまです魔王様! セッシャが居るのはそう、見張りですよ。神託の勇者ユーナがこのトラッフグの泉に迫ってますからねぇ? って、さっさと作業を終わらせないと勇者御一行が現れちゃいますよ?」
ノゾッキーがサングラスをクイッ、と持ち上げて魔導水晶板をチェックしている。
「なんだと!? 早すぎるぞそれは……!」
まずい。
今、魔王軍は全力で猛毒の泉トラッフグの浄化とモンスターの駆逐をしている。
もし私たちがここにいるのをユーナが目にしたら……?
せっかく彼女が受けた依頼を私たちが横取りしてるようなものだ。きっと残念がる。
望ましいのは、私たちがさっさと浄化作業とモンスター討伐を終わらせ、成果をそれとなくユーナに譲るのが理想なのだから。
私がそう考えているその時だ。
「仕方ない、ここはセッシャの出番ですかな!」
得意げに言うノゾッキーは魔導水晶板に、何やらポチポチと魔法文字を打ち込んでいく。
私はノゾッキーに、何をしているのか尋ねた。
「ノゾッキー、お前一体何をしているのだ……?」
「そりゃあ、決まってます。勇者御一行の足止めです。このフォロワー数10万魔族のセッシャの力を持ってすれば……拡散キボンヌ、送信!」
その言葉が終わると同時に、私は魔導水晶板で〝ドヤッター〟のタイムラインを確認する。
そこにはこう記されていた。
【ノゾッキー・トサッツー@魔王軍四天王! 現在撮影中!】
【俺巨根の宣材動画撮影のため、猛毒の泉トラッフグはしばらく閉鎖しております♪ by魔王軍】
これを見た瞬間、私はノゾッキーの頬を張った。渾身の力でパン! パン! と往復で2回。
ノゾッキーは殴られた頬を手でおさえ、小刻みにぷるぷると震えていた。そして、懇願するように私を見上げる。
「ぶ、ぶったね! 2回もぶったね! 父さんにもぶたれたことないのにぃッッ」
「知らん! 言いたいことはそれだけか? お前、これではユーナに私たちがここにいるとバラしてるようなものではないか!?」
ノゾッキーを見下ろして言うと、ノゾッキーはうるうるとした瞳で私に気まずそうに告げる。
「て……てへぺろ!」
その言葉を聞いた瞬間……私はノゾッキーに全怒りを込めて、煉獄の炎を放つのだった。
ったく、余計なことをしてくれる……!
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