魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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59話 勧善懲悪! ザッコス盗賊団ざまぁ回 後編

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 私の態度の軟化を感じ取ったのか、ザッコスが露骨な猫撫で声で尋ねてくる。

「あ、ありがてぇ! なんでも言ってくんなぁ、さあ遠慮せずに──」

「キサマら全員……魔王軍で下働きをさせてやる」

 私の言葉にザッコス含め、盗賊たちが固まった。

「……な、なんですって?」

「何度も言わせるな、キサマらを魔王軍に就職させてやると言ったのだ。だがな、これはキサマらを人間たちの世界から追放するのと同義だ。今後一切、人間たちと関わることを禁ずる」

「そ、そんな横暴な! まるで奴隷じゃねえですか! この人でなし!」

「口の聞き方に気をつけろ人間ケダモノ! 教えてやる。私はな、女、子どもに手を出す下劣な輩と、生ける者を奴隷にして商売するクソみたいなお前たちが反吐が出るほど大嫌いなんだ。だから私は、今までお前らがしてきたことと同じことをしてやる」

「ぬぐぐ……ッ」

 ザッコスが唇を噛み、盗賊たちの歯軋りの音が響く。

 横暴どころか、私からしたら優しい提案だと思う。むしろこいつら外道のしたことを考えれば、優しすぎると思うのだが。

「そ、そんなことをしたら人間たちと魔族の戦いがさらに激化していきまさぁ! 人間を人質に取る極悪非道の魔王許すまじってよぉ……!」

「お前、何言ってるんだ? お前らに人質としての価値など微塵も無い。それに、あいにく私はお前らのように下品な輩を人質に取るほど悪趣味ではない」

「な、なんてひでぇこと言うんですかい! それに、ダンナの提案は理不尽すぎでさぁ! 人権無視ってやつですぜ!」

「やかましい! 弱きを打ち据え、さんざん暴力を振るってきたお前たちがえらそうにほざくな! ガタガタ吐かすとその命、本当に剥ぎ取るぞ!」

「ひ、ヒィッ! ──ぐへっ!」

 私はザッコスの胸ぐらを掴み、吐き捨てると同時にヤツを突き飛ばす。

 それに私は、理不尽さを突きつけて魔族に接したことなどない。

 むしろ、そういったかつての魔王軍が許せなくて、私は同族ながら、当時の魔王軍を叩きのめし、改善してきたのだ。

 おかげで、優しいけどバカで変態なヤツらばかりが私の配下になっていってしまったけど……!

 もちろん、私の全ての行いが正しかったかと言われたらそうじゃないかもしれない。

 だが、私はいつまでも人間たちと争う魔王軍の姿勢にピリオドを打ちたいのだ。それは、そう簡単にできることだとは思わないが、少なくとも私は……心からそう思っている。

「グフッ……! し、しかしですぜ? あっしらがダンナの下で良い働きができるわきゃねぇッ……!」

「……安心しろ。私はお前たちに何も期待していない。ゆえにお前たちの仕事は雑用ばかりだ。そうだな、魔王城から始まり領土全般のトイレ掃除やドブさらい、街の外壁工事などの土木、それはそれはもうキッツイ仕事を命じてやる」

 ザッコスは尚も言い訳を捻り出そうとするが、私は魔王軍の頂点にして魔王。凍てつくセリフを波動のごとく、そして冷たい目線とともに一気に切り込んでいく。

「──で、どうなんだ? キサマらはさっき私になんて言ったか数分前のことも忘れたのか? 『なんでもする』『悪さはしない』『マジメに働く』そう言ったのはウソだったのか? 私はウソが嫌いでな、もしそうなら瞬きをする間にお前らを消し炭にしてやるぞ?」

「そ、そんなわけありやせん! で、ですがあっしらがいたら魔王のダンナに迷惑かけるんじゃねぇかと……」

「そうだな。はっきり言って迷惑だ。だがキサマらの存在は世界にとって大迷惑だ。だから私がお前らを更生させてやる、ありがたく思え」

 盗賊たちはなんとしてでも取り繕い、逃げ出したいのだろう。

 でなければ、ここまで否定的で拒否は示さない。つまり、こいつらは反省の気持ちなど全くゼロだと言える。

「嫌ならかまわん。私自ら裁きを下すか──いや、神託の勇者ユーナの名の元に、憲兵か聖騎士団にでもお前らを突き出してやろう。どっちみち断罪の刑だ」

「そ、そそそ、それは──ッ!」

 冷や汗をダラダラと流しながら、苦悶の表情で頭を抱え、うつむくザッコスら盗賊団。

 私の毅然とした態度を目にして、どうやっても逃げ切れないと判断したのだろう。

 不満にあふれ、恨みがましく頭を上げたザッコスが言ってくる。最後の悪あがきだろう。

 瞳を潤ませ、懇願するように私に言う。

「なぜ……なぜでさぁ。悪名高いあっしらが、ここまで誠意を見せて謝ってるんですぜ……!?」

 まったく、変態モヒカン頭の潤んだ瞳など一体誰得なのか。
 
 気持ちの悪いことこの上ない。

「いらん。浅ましく卑劣で、恥知らずのお前の誠意などいらん。いいからさっさと選べ。ゴミのように死ぬか、這いつくばって生きるか、お前たちにはそれしかないのだからな!」

 私がビシっと言うと、ついにザッコスは黙り込みそのまましばらく口を開かなかった。

 そして、

「くそぉ! 仕方ねぇ、煮るなり焼くなり好きにしろってんだ!」

 ザッコスは私に煉獄の炎クリムゾンフレアーを放ってもらいたいのか、さっぱり分からない返し方をする。

 しかしそれは間違いなく諦めの言葉だった。

「そうか、わかった。毎日猛省しながら仕事しろよ?」

 私は盗賊たちに背を向けて、このやりとりを見守っているユーナたちに声をかける。

「ユーナ、無事で良かった。お前たちもな」

「うん……ありがとヨーケス」

「ぐすっ……、ふぇえええっ……ヨ、ヨーケスおにいさぁんっ……あぐっ……!」

「ダールン……あた、あたし信じてましたの……! ダールンがきっと助けてくれるって……うぇえええん!」

「ちょ、キノコ! シャンプル! 私の服が汚れるではないか! うわぁ鼻水が!」

 ユーナを気にせず、涙やら鼻水やらでグシャグシャになって私に抱きつくキノコとシャンプル。
 
 そして、私を裏切ってまでユーナのパーティーにいるのにもかかわらず、彼女を守れなかった罰として私にフルボッコにされた元四天王のエツィーが「ウ……ウホ……」と言いながら横たわっていた。

 そんな中……ユーナが涼やかな声で、両手を後ろに組みながら、小首を傾げて私に尋ねる。

「ヨーケス……あんた、よくこの人らの命を奪わんかったね? 魔王なのになんでなん?」

 その言葉に──私はユーナをじっと見てこう言った。

「君が悲しむと思ったからさ」
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