61 / 89
61話 恋のライバルの予感!?
しおりを挟む「ユーナさーん! おぉーい!」
「なんだあの男は……?」
「ウ、ウホ……?」
はて、何者だ? と、私とエツィーが訝しそうにして首をかしげる。
そして私は、ユーナを見て気づいた。
ユーナも向こうの男に手を振り返していたのを。
……むむむ……ユーナの知り合いの男か……?
そして、泉に沿って颯爽と駆け足で近づいてきた男は、満面の笑みでこう言った。
「もう! 探したよユーナさん! オレを置いてクエスト攻略に出かけるなんて水くさいじゃないかっ!」
その言葉に、ユーナは少し困ったような引き気味の顔をしていた。
唖然としている私とエツィーを尻目に、近づいてきたこの男はいきなりユーナの両手を掴む。
私より少しだけ背が高く、茶色い髪をしたかなりの美青年だ。
真っ白なロングコートを羽織り、腰から黒い鞘に入った剣を下げている。
いずれにせよ。
もう少ししたらこいつはこの世界から消えてなくなるだろう。なんてったって私のユーナに馴れ馴れしく触れたのだからな……!
「ひ、久しぶり……だね」
「ユーナ、このナルシスト系のバカはどこのどちら様だ? おい、私のユーナに軽々しく触れるな。ぬっころすぞ」
「ちょ、ヨーケスあかんよ? えっと、この人はね……」
私がズイ! とナルシストの顔を下から見上げるようにして覗き込み、睨みつける。
するとだ。
このナルシストはユーナが紹介しようとした発言を遮り、あろうことか人差し指をユーナの唇に当てて、「ストップ……オレから言わせてもらおう」と言ったのだ。
はぁ? お前の息の根をストップさせてやろうか……?
私のユーナに軽々しく触れたばかりか、唇に指を当てやがった! 私だってそんなことしたことない!
男は私たちに身体を向けて、自己紹介を始める。
「初めましてユーナさんのパーティーの皆さん。オレはアイド。【アイド・ルハイユ】という。S級冒険者で、舞台俳優……そして、貴族の息子。三拍子揃いのキラメキ冒険者とはオレのことさ!」
爽やかに笑い、キラン! と光る真っ白な歯。
よく見ると白コートに真っ赤なバラを胸に挿していて、たしかにむさ苦しい冒険者よりこ綺麗ではある。
猛烈に自分を持ち上げた自己紹介をする青年、アイド。
一方でユーナ以下、私たちは完全に、
「お、おう……」
「あ、そうですか……」
「ふーん、そうですの……」
「ウホ……」
と引き気味だった。
「いやあ、探したよ! ギルドに行ったらユーナさんはもう『猛毒の泉トラッフグ』へと向かったって聞いて、いてもたってもいられなくて!」
そう言うと、アイドは私たちを尻目にしてユーナへ再び話しかける。そんなアイドに、シャンプルが恐る恐る声をかけた。
「あの……アイドさん」
「何だい? 美しいお嬢さん?」
「冒険者で舞台俳優って……本当なんですの?」
「えっ……! このオレを知らないのかい!? それは罪だよお嬢さん。これを機に教えてあげよう」
バッ……! コートを翻し、アイドが何かを取り出した。
こ、これは……?
表紙には魔性さを含ませた表情の美しい女性と、貴族の青年が二人並んでいる絵が描かれた、どうやら小説のようだった。
大きめの字で書かれているタイトルはこうだ。
【婚約破棄されまくりの高慢チキ令嬢は改心して没落スーパー貧乏貴族の青年を成り上げる! ~気がついたらわたくし王妃になってましたの~】
小説には帯が巻かれ、『舞台化決定! S級冒険者アイド・ルハイユ氏出演!』と書かれている。
「どうだい? オレは冒険者もやりながら俳優もやるんだ。すごいだろう? 今ならサインオーケーだよ!」
自分で凄いとか言って恥ずかしくないのだろうか? 私だって魔王やってるけど自分のことを褒めたりはしない。
しかし、そんな自己愛が強いアイドの言葉に、シャンプルは意外と素っ気なかった。
彼女は「なんだ、婚約破棄の悪役令嬢モノですの。わたくし興味ありませんわ」とツンとして言った。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる