魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

文字の大きさ
62 / 89

62話 アイド・ルハイユへ自己紹介

しおりを挟む


「ま、まぁ人には趣味や価値観の違いがあるからね……」

 そう言うと、アイドはガクリと肩を落とす。

 何を隠そう、シャンプルは大聖女でありながら、男と男の純愛作品、ボーイズラブなジャンルが大好物なのだ。

 つまるところ、アイドが示した作品は彼女のお気に召さなかったらしい。

 そこへと、ユーナがアイドに言う。

「そんなことよりアイド、ユーナ何回も言っとうよね? ユーナたちは四人パーティーなんやからこれ以上人数増やさんて。やから、一緒に冒険はせんよ?」

「そんなぁ、ユーナさん! つれないこと言わないでくれよ……! って……四人? 君たち五人いるけど……?」

 私とキノコ、シャンプルにゴリラを順番に視線を向けると、最後にまた私に視点をロックオンする。

「ん? なんだナル男。私に何か文句があるのか?」

 ギリリ! とアイドが歯がみして言う。

「おかしいな? 勇者パーティー【天使の聖剣エンジェル・セイバーズ】は、オレが聞いた話しだと美女と美少年、それと野獣で構成されてるって。君、何者だい?」

「不躾に失礼なヤツだなお前。いいだろう教えてやる、私は魔王軍の頂点にして魔王、ヨーケス・ブーゲンビリアだ」

 アイドへ私が自らの素性を伝えると、ヤツはなぜか、ふふん、と言ってキラッ! と白い歯を輝かせる。

「あはは! おもしろい冗談を言うね君は! まさかユーナさんに雇われた旅のコメディアンかい? 魔王と勇者がともにいるなんてお伽話でも聞いたことないぜ? ま、なかなかのジョークだ、このオレが褒めてやろうじゃないか」

「コメディアンじゃない、魔王だ。お前も話し聞かない系か? 話し聞けよ」

 しかし、アイドは「うんうん、もういいから。ジョークは二回言うもんじゃないぜ?」と、そう言って私の肩をポンポンと二回軽く叩く。

 というか、初対面でなんて馴れ馴れしいヤツなんだろうか。

 それに、私がこんなに魔王だと言ってるのに、この男は信じていないらしい。

 人を信用できなくなったら人生終わりだと思うんだが。私は魔族だけど。

 アイドは右手を私に差し向けて言う。

「さ、ここは危険だから君も街まで送ってあげるよ。このトラッフグの泉には凶悪なモンスターがいるらしいからね。まぁ不思議とここへ来るまでにモンスターは一匹も出なかったが……たぶんオレの強さと美貌に恐れをなしたかな? あはは」

「自意識過剰も甚だしいヤツだ。私はお前の助けなどいらん。おい、それからな? 私はコメディアンじゃない、魔王だ」

 パチン! と私はアイドが向けた手を振り払う。

「ふーん、このオレの手を払うだなんて……そんなことできるのはこの世にはパパかママか、あるいは勇者か魔王くらいしかって……んん? まっ、まさかほんとに……?」

 私はアイドの言葉にコクリとうなずいた。
 愕然とした表情を浮かべ、アイドはユーナたちの方へと顔を向ける。

「そんなバカな……! ユーナさん、なぜ魔王と一緒に行動してるだい!? いや、君たちもそうだよ? なんでごくナチュラルに魔族と並んで歩いてたんだ!? そんな前例聞いたことないよ!」

 アイドはチラチラと私を見ながら言ってくる。
 たしかに、普通の人間たちからすれば、魔王と勇者パーティーが一緒にいるのはおかしな光景なのかもしれない。

 それから、その前例とやらは私より以前の魔王の前例だ。ユーナもそうだが、なんで魔王と勇者が一緒にいてはいけないのか疑問だ。

 そんな前例なんてどうでもいい。いや、ならば私は魔王と勇者が仲良くできる前例になってやる。

 だって、かつて私とユーナはそんなルールなど知らずに、ともに手を繋いで歩いたのだから。

 ま、私とユーナが幼いころからの繋がりがあると言っても、きっとこの男は信じないだろうがな。

 それでもいいか、話してやろう。

 私は、自分と一緒にユーナとその仲間たちとここまで来たことの経緯と、出来事をアイドに説明し……。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

処理中です...