魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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78話 ナメんじゃねえ!

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「私たちは異国から来たからな、見慣れぬ服装なのは間違いない。しかし私たちは決して怪しい者ではない」

「異国だろうがなんだろうが知ったことか! とにかくお前たちを街に入れるわけにはいかん! わかったらとっとと帰れ!」

 しっしっ! と追い払う仕草の門番に、ついにノゾッキーが私の前に出て大きな声で告げる。

「無礼だぞキサマらッ! このお方はセッシャたちの主にして王であらせられるぞ! 頭が高い、控えおろう!」

 しかし、いかにもやれやれといった表情で門番たちから返ってくる言葉はこうだ。

「……はあ? お前たちのご主人がどこの王だか知らんが、そんなウソついて恥ずかしくないのか?」

「いるんだよなぁ、偉そうにしておけばどこの街でもフリーに入れると勘違いするバカが」

 門番たちの聞く耳を持たない態度にノゾッキーはぐぬぬ……と口を噛む。

 完全に相手を見下すその舐めきった口ぶりに、ノゾッキーの背後で成り行きを見ていた私も、心の中に怒りの炎を小さく灯していた。

 なぜなら、ノゾッキーたち魔王軍爆走愚連隊は誇り高い魔族だ。
 バカにされるのをぐっと堪えてるのはきっと私のため……私の命令に忠実であるがゆえだろう。

 とはいえ……こんな些細なことで争うのでは、今までの魔王と変わらない。

 腹が煮えくりかえる思いを堪え、私はそれでも、穏やかな口調で門番たちに言う。

「どうしてもダメか? 通してはくれないのか」

「当たり前だ。ここは選ばれた者しか入れないサンドリッチの街。お前らのような田舎臭い、ダッサくて変な格好をしたヤツを入れるわけにはいかないんだよ! さっさと消えろ!」

 門番たちは侮蔑の視線を私たちに向けて言う。すると、とうとう我慢できずにノゾッキーが涙目で私に悲痛な声を出した。

「く、悔しい……せ、セッシャ悔しいですよ! ここまで言われて我慢しないといけないなんて……ぐっ……」

「……すまなかったな、ノゾッキー。お前たちに嫌な思いをさせるつもりはなかった。だがな、お前たちをバカにした報いは受けさせてやる、待ってろ」

 私は門番たちの前に進み出た。

「キサマらの度重なる無礼を私たちはぐっと堪えていたのだが、そろそろ我慢の限界だ。踏み越えてはいけない一線を越えたキサマらがこれからどうなるか教えてやろう……!」

「へぇ! どーなるんだ? おもしれぇ、教えてくれよ!」

「それはだな、こうなる」

 争いは避けたかったのだが、仕方ない。

 私は浮遊魔法を解除して、天高く浮遊させていた氷づけの大型ワイバーンを門番たちの眼前へと落下させる。

 ドッス───ン!! と大きな音を立て、地面にめり込む大きすぎる氷塊。

 目の前の門番たちは一瞬何が起こったのか理解が追いついていないようだ。驚きの表情で氷づけのワイバーンを凝視している。

「これはさっき私が倒したワイバーンだ。矮小なるドラゴン種のくせに、生意気にも私に挑んだゆえの末路というわけだ」

「こ、これは……!? 我らが街を苦しめているワイバーンじゃないか……!」

「そんなバカな……ドラゴンを倒せる者なんてそうはいないはず……」

 門番たちの視線が自然と私に向けられる。
 そんな視線を寄せられる中、私は指をポキポキと鳴らしながら門番たちを睨み。

「……さて、お前たち覚悟はできてるんだろうな? さんざん私たちをバカにして、ただで済むと思うなよ?」

 私は片手を突き出し、〝凍てつく氷の監獄アイシクルプリズン〟をサンドリッチの門へ向けて放つ。

 魔法を受けた門は瞬く間にバキバキに凍りつき、やがて氷の門へと一変すると。

「「「えっ」」」

 それを見た途端に間抜けな声を出して、門番たちの顔色が変わった。さすがに気圧されたのか、恐怖で怯みながら私に尋ねる。

「ちょ、ちょっと待った! あなた何者なんですか? さっきユーナ様のお知り合いとかなんとか……?」

「お前たちに教えてやる義理などない。キサマらはもう命のやり取りを私とするしかないのだからな。さぁ門番よ、命がけでその門を守るがいい!」

 私のことをバカにするのはいくらでも構わない。
 だが、私の部下たちを嘲笑い、コケにしたことは許さん。

 そりゃあ、たしかに私の部下は頭のおかしい変態ばかりだし、この格好だってお世辞にもシャレてるとは言えない。

 私だってできることなら着たくないに決まってる。

 でもな、この特効服の刺繍はかつてノゾッキーが徹夜で夜鍋して入れたものだ。

 私の背中の刺繍に至っては、急ごしらえだったと思う。
 その頑張りに、こいつらは泥を塗ったのだ。

 だから私はもはや我慢する気はないし、いっちょサンドリッチの街の門番にも意地を見せてもらおうじゃないか。

「待って……ちょっと待ってください! 俺たちがどどど、ドラゴンを討伐して下さった英雄を門前払いにするわけな、ないじゃないですか! やだなぁそうならそうと早く……」

「早く? なんだ早く死にたいのか? いいだろう、かかってこい」

「ちっ、違いますぅううう! お、落ちついてくださいぃいいいいッッ!」

 立場が逆転し、三つ指ついて土下座し始めるサンドリッチの門番たち。

 私は基本争いは嫌いだが、それと同じくらいに私の部下をバカにしてくる者も嫌いだ。

 なんとも身勝手だが、私がバカにするのはいい。だが他者にバカにされると無性に腹が立つ。

 それに、魔王軍トップの私が舐められたままでは部下たちに示しがつかない。徹底的にやり返して性根を叩き直してやる。

 調子に乗って他者を辱め、罵倒することのしっぺ返しがどれほど痛い目に遭うかということを教えてやらねば。
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