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79話 私は魔王なんだけど!
しおりを挟む「バカにしてすみませんでしたぁッッ! どうかご勘弁、勘弁してくださいぃいッッ!」
目の前には、私の魔法によって顔以外が氷の塊りになって許しを乞い泣き喚く門番たちの姿。
私は彼らの命を誰一人として奪わなかった。
たしかに命のやり取りとは言ったが、こいつらの命に奪うほどの価値などない。ワイバーンのようにカレーの具材にもならないなら懲らしめるくらいで十分だ。
それに、人間たちの命を奪ってしまったらユーナにどんな顔をすればいいと? それこそほんとに私の恋の道は閉ざされてしまう。
感謝するがいい、キサマらはユーナに会わずして彼女に救われたようなものなのだからな。
と、いうことでお仕置きもこれくらいにしといてやろう。私は右腕を上げて指をパチリと鳴らすと、門番たちの動きを封じている氷が砕け散る。
すると、氷の牢獄から解放された門番たちは涙を流して平伏し始めていた。
「ううっ……あ、ありがとうございます……! マジで死ぬかと思いました……ふぐぅっ……」
命が助かったことに感極まった門番の一人が言う。どうやら私の魔法には流石に堪えたらしい。
「これに懲りたら二度と軽々しく他者を愚弄するようなことは言わないことだ。いいか? それがたとえ相手の服装が奇抜だったとしてもだ」
「は、はい……すみません、肝に銘じておきます……!」
よろよろと立ち上がる門番に、私はさらに続けて言う。
「ま、口悪かったとはいえ、お前たちも門番としての職務を忠実に遂行しようとしただけだろう。私も少しやりすぎた。すまなかったな、兵士諸君」
「いや、そんな……あなたは何も悪くないですよ……俺たちがバカにするようなことを言わなければ良かっただけです……」
「ほんとにすみませんでした……」
「反省してます……」
さっきまで高圧的な態度を示していた門番たちは、気まずそうにしながら深々と頭を下げる。
私のことを遥か格上の存在だと自覚したのは間違いないだろう。
すると、顔を上げた門番の一人が私の表情を窺い見るようにして、
「それでその……皆さんはどのようなご用件でサンドリッチの街へ……?」
と、手をすり合わせて媚びる仕草で私に向けて切り出す。なんでも、門番としてこの街へ来た理由は聞いておかないといけないのだとか。
私は魔王軍の頂点にして魔王。
ここは威厳を示し、貫録たっぷりに振る舞うことにする。
「私はな、神託の勇者ユーナ・ステラレコードの代わりだ。圧政に苦しみ、凶悪なドラゴンに怯え、飢えて暮らすいと小さきお前たちを救いに来たのだ」
「「「えっ……? ユーナ様の……代わりに?」」」
もちろん理由としては半分だ。
私がこの街に来たのは愛するユーナのために他ならない。彼女を凶悪なドラゴンと戦わせることなく、安全にサンドリッチの街へと来訪してもらうのだ。
その上でユーナの手を煩わせることなく、悪徳領主を私が先に成敗する。
そうすれば街の者も笑顔になり、ユーナも悪徳領主のせいで嫌な気分になることもない。
私としてもユーナのレベルも上がることなく、全てが万々歳のハッピーウィンウィンだ。
と、救いの言葉を並べた私に門番たちは興味を持ったのか、
「あなた様は一体……?」
「神託の勇者の代わり……異国の王……?」
「ま、まさかサンドリッチの街に伝わる予言の英雄……!?」
互いに顔を見合わせて、自ら答えを導こうとする。そんな門番たちから口々に出てくるセリフは、私には都合の良いものばかりだった。
たとえばおもしろいのが『予言の英雄』ネタだ。
どうやらサンドリッチの街には遥か昔から伝わる予言があるとのこと。門番が言うにはこうだ。
──その者、異国の白き衣を羽織りて悪しき竜を打ち倒すべし。失われし命の絆を結び、清浄なる世界へと誘わん。やがて4人の勇者と──
その先は予言の書が破れてわからないらしい。とはいえ、前半部分は私を指し示しているのではないかと。
まぁ私としては人間たちの予言にはまったく興味がないのだが。
だって予言など占いみたいなもので当たるも当たらぬも八卦というものだろう?
とはいえ好都合な勘違いをしてくれる。これを利用しない手はない……と、私が思ったその途端。
特攻服をひるがえしたノゾッキーとボッケルが私の前に立ち。
「えぇい、キサマら世間知らずも甚だしい! この方こそ、セッシャたちの主であり英雄! チビッ子風味に言うとヒーロー! 人呼んで英雄王である!」
「頭が高いっスよ! 控えい控えぇい!」
門番たちの視線を集め、自信満々に宣言する。
「えっ……? 英雄王……?」
「き、聞いたことないけどなんか凄そうな……!?」
「し、し、失礼しました──ッッ!」
事の重大さ? に気付いた門番たちが土下座する勢いで地面に膝をつき、深々と頭を下げた。
そんな私は胸の中にノゾッキーとボッケル対してツッコミを入れたい感情をぐっと抑えていた。
ワイバーンを倒した後の三文芝居みたいなものを即興で演技する二人。それを目にして、門番たちは疑いもなく勘違いのまま平伏しているから……。
やがて門番たちは私に向けて言う。
「どうぞお通りくださいませ、英雄王閣下! 我らが街に光を!」
直立不動で敬礼する門番を横に、私たちは悠々とサンドリッチの門を通り抜け、街の中へと足を進めるのだった。
……英雄王ってなんだ。私はそんなわけのわからない王ではない、魔王軍の頂点にして魔王なんだが……!
【大感謝!】
たくさんの小説がある中この作品を読んで下さいまして、ありがとうございます。
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