魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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85話 サンドリッチの民

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 リタにカレーを食べさせた私は次に、サンドリッチの街の民に予定通りドラゴンカレーを振る舞うことにする。

 悪徳領主の成敗も大事だが、まずはこの私が人心を掌握することが肝心だ。

 出来上がった宣伝用チラシを魔王軍爆走愚連隊とリタが街の者たちに配り始めてからしばらくして──

 ドラゴンカレーを振る舞うべく、レストラン『ma・王様のレストラン』の外には椅子やテーブルがずらりと並んでいた。

 もちろん店先だけでは街の者たちに振る舞うことは不可能。ゆえに街の広場や公園など人を多く集められる場所に出張カレー店を配置する。

 そして、夕方に差し掛かる。

 レストランの前には所せましと腹を減らした人間たちが集まっている。
 大人も子供も老人も関係なく、配布されたチラシにより『ma・王様のレストランオープン記念として特別にカレーが街の者みんなに振る舞われる』と宣伝していたからだ。

 店内キッチンと店前に用意したオープンキッチンでは魔王軍爆走愚連隊の調理メンバーが忙しなくカレーの準備をしている。

 すでにいくつも鍋に火をかけていて、コトコトと煮込まれるドラゴンカレーのルーがほわほわと湯気を立てていた。
 
 そして私は外の鍋にあるカレールーをかき回す担当だ。
 ノゾッキーはテーブルに真っ白なテーブルクロスを掛けている。すると、集まった人だかりからザワザワと声がし始めていた。

「チラシの内容だとこの新しくできたレストランのカレーが無料で食べられるって話だったけど……ドラゴンの肉を使ってるのか……」

「というか、みんなどうして同じ服と髪型なのかしら?」

「そういえば鍋をかき回してるあの男、リタのパンを忌々しい兵士から取り返していたな」

「なんでもどこかの国の王様らしいんじゃがのう。門番たちが言うにはワシらを救いに来てくださったのじゃとか……」

「へぇ。どこの国の王様か知らないけど、しかし変わった服を着てるよなあ。特にあの刺繍、派手だけどなんかダサくないか?」

「特攻服っていうらしいぞ。東方の島国の不良たちが好んで着る戦闘服らしい」

「んじゃ何か!? 俺たちは不良の作るメシを食いに来たってのか!? このレストラン大丈夫なのかよ!」

 くっ……! この私を不良扱いするとは! 人間とはまったくもって無礼なヤツもいるものだ。

 しかし、勝手な野次を飛ばす声にたまらなくなったのは私ではなくノゾッキーだった。

「おうおうおうおう! てめぇら好き勝手言うけどなあ! この服はビッと気合いの入った者だけが着ることを許される戦闘服なんだ! あんま舐めたこと吐かしやがるとこのセッシャが──」

 ノゾッキーは特攻服の袖をたくし上げ、拳を振り上げ声を荒げて言う。その言葉を遮るように、私はノゾッキーの肩にポン、と手を置いた。

「好きなように言わせておけ」

「し、しかし魔王様……ッ!」

「忘れるな。こいつらに恐怖を与えるために私たちは来たのではない。いちいち腹を立てるな」

「押忍……」

 しかし、しばらくしても人間たちは遠巻きに見ているだけで、誰一人テーブルに着かない。

 訝しげな表情を浮かべながらヒソヒソと話したり、文句を言ったりしているだけだ。

 私はルーの入った大鍋を見つめながら思う。

 サンドリッチの住民の行く末を憂い、ユーナがこの街へ向かっている。
 そのユーナが街に来た時、私のドラゴンカレー大作戦によって皆が笑顔になったなら彼女もきっと喜んでくれるはずだ。

 なんなら『ヨーケスあんたほんまいいヤツやね! ユーナ大好き! 付き合って!』と、私へ愛の告白が向けられるかもしれない。
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