魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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88話 魔王軍爆走愚連隊サンドリッチ支部爆誕

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 サンドリッチの民にドラゴンカレーを振る舞うこと数刻後。私はレストランに訪れた者たちを街の大広場へ集めた。

『無料でカレーをご馳走するが、あとで私の話を聞いてもらう』

 という前置きチラシに載せていたこともそうだが、街の者たちは私たちに興味が湧いたようで、数多の人間たちが大広場に押し寄せていた。

 なぜそんなことをって?

 それは、このか弱き者たちに勇気を奮い立たせるためだ。

 というのもだ。
 私としては、あくまでユーナの心を考えることが大前提だが、民の心を掴むことはユーナを私に振り向かせるための近道。

 ユーナが訪れるまでに平和で笑顔の溢れる街にしておけば、彼女の私に対するイメージアップは間違いない。

 それに、私がアクーダをただ懲らしめたらユーナに『あんたはただ侵略しよるだけやろ?』と言われかねん。

 こいつら人間たちに私の恋愛成就に一役買ってもらわねばカレーを振る舞った意味がないのだ。

 私のすぐ後ろにはノゾッキー、ビエルとロリエラが特攻服を羽織り人間たちを見下ろすように見ている。

「それではこれより俺たちの主、ヨーケス・ブーゲンビリア英雄王閣下からサンドリッチの民に発表がある。耳ある者は聞き、目ある者はしかと見よ!」

 ビエルの紹介で人間たちの視線が一斉に私に向けられた。私のすぐ目の前に、レストラン第一号の客になったリタの姿もある。

「それではヨーケス閣下お願いいたします」

「ウム。……まずはお前たちに、真実を告げねばと思う。私はウソが嫌いだからな……聞け、人間たちよ。私は英雄王でもなければ、レストランのシェフでもない。なんなら人間ではない、もちろん私の部下もだ」

 私の言葉を聞くとよほど驚いたのか、人間たちは目を丸くしてどよめいていた。

「人間じゃない? どこからどう見ても人間の姿をしているが……?」

「モンスター……じゃないわよね……?」

「うむ、どう見ても涼しげな色男じゃがの」

「ではあんたは何者なんだ!?」

 ある男が問いかけるのを聞いて、私は民衆のざわつきを静止するように手を前に出した。そのまま指をパチリと鳴らすと『変装』『擬態』の魔法が解け──!

 私を含め、魔王軍の者たちが魔族の姿を現した。

「私たちは魔族だ、それもお前たちの敵対する魔王軍である。そして私は魔王軍の頂点にして魔王! 第1651代目魔王にして、我が名はヨーケス・ブーゲンビリアだ!」

 すると、私たちの真実の姿を見るなり騒ぎ立て始める。驚きの眼差しを向ける者、恐怖で震え出す者やあるいは逃げだそうとする者すらいる。

 すると、やがて激昂が上がった。

「ま、魔王軍が何をしに来たんだ! 俺たちの街を滅ぼしに来たのか!」

「わたしたちを食事で釣って奴隷にでもする気!?」

「まさかさっき食べたカレーには毒が入って!?」

 好き放題に騒ぎ立てる人間たちに、

「少し黙れ人間ども! 貴様ら、魔王様に腹いっぱいメシを食わせてもらってなんだその態度は! 人間ってのは礼儀も知らん種族なのか! ガタガタ吐かさず黙って話を聞け!」

「「「ぬぐ……っ……!」」」

 睨みつけながらビエルが鋭い声を張り上げ、民衆たちを黙らせる。

「安心しろよ、セッシャたちはお前たちを滅ぼしに来たんじゃない。なぁ小娘、お前はわかるよな?」

 ノゾッキーがリタに向かって告げると、彼女は私たちをまっすぐ見据えながら、コクリとうなずいた。

「そもそもあたちたちが、ほんとにあんたたちをほろぼすつもりなら、こんなめんどーなことはしまちぇんよ? というか、まおーちゃまのはなちを静かに聞けないものは立ち去りなちゃい!」

 四天王たちが口々に声を上げて人間たちの命の保証をすると、混乱は抑えられ沈静化していく。

 人間たちが気を落ち着かせるのを確認すると、私は続きを語った。

 人間たちを脅かすクロワツ山のワイバーンは既に私が討伐したこと。この街を出て自由に生きたいならそうすればいいと。

 そして、それでもこの街に残りたいなら私に協力し、悪徳領主に一矢報いてみせよと。

 ほんとは私がユーナのことを考えてのことなわけだが、それは話がややこしくなりそうなので伏せておいた。

 私は畳み掛けるように人間たちに告げる。

「私がお前たちを救うことが何かおかしいか? 魔王が人間を救ってはならない定義を答えられる者がいたら申し出るがいい」

「「「…………」」」

 私の言葉に、人間たちは反論できずに押し黙る。私は続け、人間たちを見渡した。

「聞け! お前たちは悪徳領主の家畜なのか! 恥ずかしくないのか!? 犬になりさがっている自分たちのことが! 人間としての誇りはないのかッ!?」

「そんなわけあるか! 俺たちは自由に生きたいんだ!」

「そうよ、私たちはアクーダの家畜じゃない!」

 私はさらに畳み掛け、煽りに煽りまくる。こうすると大抵相手は怒り、話に乗るというものだ。

 悪徳領主へ向けた罵倒が飛び交い、もうすごいことになっている。
 
「ひもじい思いを子どもたちにさせたいのか!? 何日も何日も豆だけのスープを食べさせたいのか!?」

「「「そんなことありませんッッ」」」

「ならば拳を握り、理不尽に目を開いて立ち向かえ! 這いつくばって死ぬ人生に終わりを告げろ! 奪われたら奪い返してみせろ!」

「「「ウォオオオオオオオッッ」」」

 そう言うと、人間たちは白熱し感情を沸き立たせ大声を上げた。人々の瞳に力強く勇気の光が灯り、奮い立っていく──!

 すると、ノゾッキーが自信ありげに言った。

「オッケェエエイ! そんじゃあお前たちにセッシャ特製の特攻服を授ける! これを着たら勇気りんりん、向かうとこ敵なしだ!」

 魔王軍爆走愚連隊が山ほど積まれた特攻服を運んでくると、次々に人間たちに渡していく。

 その背中にはこう刺繍されていた。

『魔王軍爆走愚連隊サンドリッチ支部』

 ──俺が(私が)やらなきゃ誰がやる!
 悪党退治に奮い立ち、掴み取りますその自由
 我ら魔王軍爆走愚連隊──


 次々にホワイトカラーの特攻服を人間たちが躊躇なく羽織っていく中で、私は人間たちに呼びかけた。

「さぁ、行くぞ! 掴み取れ自由を!」
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