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89話 支部メンバー大活躍!
しおりを挟む憲兵長がアクーダに報告をする少し前に遡る。
アクーダ・イッカンの城は騒然としていた。
突如として反乱を起こし、押し寄せてくる軍勢は冒険者でも他国の軍隊でもない。
魔王ヨーケス・ブーゲンビリア率いる魔王軍爆走愚連隊に追従するのは、サンドリッチの街に住む平民たちで構成された【魔王軍爆走愚連隊サンドリッチ支部】。
大人も子どももおじーちゃんもおばーちゃんも参加している一般市民の反乱軍だ。
しかも全員が見慣れぬ白くて丈の長い衣服を身に纏っているので、アクーダの配下たちは目を丸くしていた。
『ま、まさかどこかの国の聖騎士団か!?』
『い、いや! 天使の軍団じゃないか!?』
『バカ、よく見ろ! ありゃあサンドリッチの住民どもだ!』
当然ながら城の兵士たちは住民が反乱を起こすなどとまったく想定などしていなかった。
圧政を敷き、恐怖と暴力で支配したサンドリッチの街はアクーダとその配下からしたら、楽園だったのだ。
ドラゴンによる被害も、言ってしまえば領主側には住民を抑えつけるのに都合が良かった。
ドラゴンが街に入って来れないように結界を貼るなどの備えを万全にしたことで、『まだ街の中の方が安全』と思わせていたのだが、まさか街の住民たちが……。
それも大多数の人数で反乱が起きるなど予想外であり、城内の兵士たちは大混乱だった。
☆★
私が率いる魔王軍爆走愚連隊と、追従する魔王軍爆走愚連隊サンドリッチ支部(一般市民)の反乱軍はアクーダ・イッカンの城へと攻め入った。
自由と平和を奪い返す戦いの火蓋はすでに切って落とされた。
元高ランク冒険者や屈強な兵士たちのいるアクーダの配下たちにサンドリッチの民はなす術もないと思うなかれ──!
リタの発声を皮切りに、皆から怒りの声が飛び始めると一斉にアクーダの城へとなだれ込む。
「おとーさんとおかーさんを返せぇっ」
「俺たちの食糧を返せぇえ!」
「あたしたちから何もかもを奪っておいて! もう絶対に許さないんだからぁーーッ!」
「死んだばーさんの仇ぃいッ!」
「じーさん! ワシゃまだ死んどらんわい!」
そんなこんなで、反乱を鎮圧するべく集まったアクーダの配下たちの攻撃はまるで歯がたたない。
理由は簡単、その秘密はこの特攻服にある。
【スキル無効】【攻撃魔法無効】【物理攻撃耐性】【状態異常回避】……などなどのバフがかかっている。
見た目は異質で極めてダサいが、その効果は折り紙つきだ。
さらに彼らが手に持っている武器、オタマやら鍋やらフライパン、ホウキなどには全て、私が【防御貫通】の効果を魔法で付与している。
武器の見た目は最弱だが、その攻撃力たるや兵士たちが裸足で逃げ出すほど。最強の一般市民の誕生だ。
反乱開始から僅か三十分もしないうちにこちらが優勢だ。敵はみるみるうちに困惑の中、崩壊していた。
大人も子どもも、老人すらが屈強な戦士と化し、アクーダの兵士たちをなぎ倒していく。
弱者が強者をねじ伏せ無双していく様は圧巻の光景だ。
「な、なんでただの街人がこんなに強いんだ!? おかしいだろッ」
「た、助けてくれぇ!」
「一時退却! 退け、退けぇッ」
たかが平民だと侮っていたアクーダの配下たちがことごとく追い散らされていた。
「なんだ、人間もなかなかやるじゃないか」
「そりゃあそうですよ! 魔王様の強化魔法に、セッシャ特製の特攻服……そこらのザコに打ち破られるなどありませんよ!」
本来なら軍を動かすには訓練が必要だが、もはやそんなもの必要ないほどの無双っぷり。
ノゾッキーがふんすと鼻を鳴らして得意げに言うと、私はすぐにツッコミを入れる。
「そうか? お前はドラゴンに負けてたけどな……まぁいい。で、結局のとこ何人くらい武力蜂起したんだ」
「身重や赤子のいる女性以外です。街の住人半数以上が参戦してます」
参戦した人間たちを指揮するのはもちろん、四天王のビエルとロリエラだ。
私ほど人間の心を掴む能力には劣るが、二人の持つその容姿と性格に人間たちも惹きつけられるものがあるのだろう。
既に『ビエル様』『ロリエラ様』と呼ばれている。
「しかし、少しやり過ぎな気もするんだがな。あーあー、イキ巻いていた兵士たちが泣いちゃってるよ。私は弱い者イジメが嫌いなんだがな」
「まぁそうですが、魔王軍爆走愚連隊の支部メンバーとしてナメられたらシメーですから」
「あ、そう……つーかお前、そのヤンキー言葉どうにかならないのか? 下品なんだけど」
「魔王様、気合い入ってるって言ってくださいよぉ!」
と、そんな掛け合いを私たちがする中で『俺は元A級冒険者だぞ!』とほざいていた兵士がおばちゃん戦士にフライパンでボコスコにされ涙を流している。
左を見れば爺さまと子どもの連携攻撃から泡吹いてる兵士もいるくらいだ。
「ワシのこの手が燃え上がる! 灼熱! ジジイフィンガー!」
「お子さま神拳おーぎ! ひゃくれつ昇竜カンチョー!」
「ぐぁああああッ! ……ごふぅ……」
実に下品な技を繰り出し、兵士の尻や股間を血眼になって攻撃する様は魔王たる私も少しだけゾッとした。
ともあれ、腹いっぱいになって勇気を出した一般市民たちがあっという間に敵を蹴散らしていく。
魔王軍爆走愚連隊の面々もノリノリで攻勢を仕掛けている。
それぞれが己の人生を、魂を、全てを懸けて──本気で勇気を振り絞ったサンドリッチの民。
それに対するは、全ての弱者が自らに従うと信じて疑わない、どこまでも傲慢な兵士や元冒険者。
信念も高貴さのカケラも持たない輩たちが、勇気を出した者たちに負けるのは道理だ。
敵兵士たちは逃げるか降伏するかの壊滅状態。
アクーダのお抱えの高ランク冒険者の用心棒や指揮官、果ては騎士まで一般市民に叩きのめされている。
「ダメだ、俺は逃げるぜ! 命あってのモノだからな! 領主のことはお前らに任せるぜ!」
「ふざけんな! オイラも一抜けだあ!」
「B級冒険者のワイ、ただ今を持って反乱軍に助太刀をする! 悪徳領主許すまじッ」
敵の中には手のひら返しで裏切る者も出る始末。
まとまりなど皆無だ。
おそらく報酬を釣り上げて召し抱えた者たちなのだろう。
私と違い、忠誠心を持たぬ部下で揃えた戦力などもはや敵ではなかったのだ。
「うぉぉぉおおああああ! 悪徳領主アクーダ・イッカンはどこじゃああああ!」
「その前に不当に働かせられてる者を、わたしたちの家族を助けましょう!」
「「「オォオッ!」」」
城の中にある部屋全ての扉を力任せに強引にぶち壊していく。
こいつらほんとに人間なのかな?
まるで狂戦士……バーサーカーなんだが。
ま、これはこれでいい。盛り上がっているこの状況の中で私がすべきことは、悪徳領主アクーダ・イッカンをぎゃふんと言わせ、とっちめることなのだから。
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